ここ数年、青児さんは偏境の学校をいくつも訪ね歩き、彼女がたどった険しい山道の距離は、台湾で及ぶ人はいない。
台湾全土にある偏境の学校でも、静思読書書軒には数多くの心打たれる温かい物語が満ちており、読書書軒以外にも、善意の人たちの軌跡に触れることができた。その一点一滴を書にしたため、この世の慈悲と善意を世に知らしめた。
青児さんと知り合って十数年になるが、誰も及ばない優しさと思いやりを備えた人だという印象を受けた。
ここ数年、台北に立ち寄るたびに私たちは顔を合わせている。まだ覚えているが、数年前に台北市「東区」にあるジンスーブックカフェで彼女に会った時、彼女は私に、今台湾の偏境にある学校に静思読書書軒を作る計画を進めているが、初めはとても大変だったと話してくれた。それは多くの学校が宗教色に染まることを懸念して断られたからだ。そこで、彼女は誠意を尽くして学校側に、静思読書書軒を作るのは、偏境にいる学生がもっと読書することで、真善美のある人文的な考え方を身につけ、生命の持つエネルギーを啓発して、理想の人生を追求するというプラス思考を持つことに期待しているからだ、と説明した。
彼女の誠実さと優しさに心を打たれたのだろう。その責任を担ってもいいという校長先生に面会することができ、そうやって、第一号の静思読書書軒が開設された。青児さんは百のへき地学校に読書する空間を設けたいと考えたが、それには社会の愛のある人たちの後ろ盾が必要だった。当時の私には想像もできないほどの大規模なプロジェクトと理想だった。それは、百校に開設する膨大な費用と、将来、毎年新書を贈呈するという大仕事が伴うからだった。どれほど多くの善良な人材と時間が必要になるのだろうか。台湾には、そんなに多く偏境の学校があるのだろうか。
私の思いとは逆に、青児さんのチームは、それらの課題を一つずつ克服していったのだ。そして、百軒目がオープンした時、彼女はこう話してくれた。今では自主的に彼女を訪ね、静思読書書軒を自分の勤務する学校に開設したいという希望が寄せられているそうだ。そして、国内外の善意の人たちが、自主的に彼女に連絡を取り、故郷のために進んで一軒や二軒、三軒の費用を負担したいと言ってきている。
青児さんは、優しさと思いやりであらゆる困難を乗り越え、疑惑を唱える人を説得してきたのだ。次々と難関を突破しても、青児さんとチームは止まることなく、台湾の各県や市や郷にある偏境の学校を奔走している。今年、再び会った時、静思読書書軒は三百軒を超えました、という報告を受けた。
最近の数年間、青児さんは偏境の学校をいくつも訪ね歩き、彼女がたどった険しい山道の距離に、台湾で及ぶ人はいない。各地の偏境の学校の中にある静思読書書軒は、多くの心打たれる温かい物語に満ちていて、それ以外にも、善意の人たちによる愛の奇跡がいっぱいあった。
青児さんは、これらの細々した話を集めて本にした。世間の思いやりと優しさに溢れた、多くの感動を呼ぶ話が、こんなにもたくさんあるのだ。青児さんのこの新しい本を読むと、私たちの心に愛が満ちてくる。思いやりと優しさというものは、私たちに、人間(じんかん)の愛は至る所に在るのだと教えてくれている。
( 慈済月刊七〇〇期より)
愛で夢を紡ぐ
静思読書書軒の美と善
⌑ 作者:蔡青児
⌑ 定価:420元
⌑ 出版社:静思人文、発光体文化
※台湾各地の静思書軒店舗及びオンラインショップでお求めください

二〇二一年、ジンスーブックカフェ運営部長の蔡青児さんは、初の著書『読書で希望を咲かせよう〜静思読書書軒の歩み』を出版した。当時は百五十軒だった静思読書書軒は、今年、三百軒を超えるまでに成長した。そこは、読書空間であるだけでなく、希望の種を蒔く心の田園となり、愛の中で知慧の種を育んでいるのだ。
それぞれの書軒の開業までには、心打つ話があり、偏境の子供から都市の学校までを繋げて、一枚の愛の地図を成しているのである。
