アメリカ・配付と寒波の競争

稀に見る冬の竜巻が八つの州を直撃した。

十数万戸が厳冬の中で停電し、街路はまるで戦地のようになった。

住民は、壊れた家に戻ると、クリスマスイブ前に予想外のプレゼントを受け取った。

ケンタッキー州ボーリンググリーン市にある住宅街は、僅か数時間のうちに竜巻によって家屋が半分にちぎられ、残骸が散乱していた。

三十以上の猛烈な冬の竜巻が、二〇二一年十二月十日から十一日にかけて、アメリカ中部と南部を次々に直撃し、その悪天候がもたらした災害により街は壊滅的な打撃を受けた。その内の一つは三百二十キロメートル以上を走り、ケンタッキー州の人口が密集した都市を横切った。多くの住民は、竜巻の警報サイレンが鳴るのを聞いても避難が間に合わず、子供を抱きしめてうずくまるしかなかったことを思い起こした。メイフィールド市に住んでいるデイステイン・ホマスさんは、「クレージー」という言葉で、被災後の様子を形容した。「住民の中には家を無くし、仕事場も無くし、命まで落とした人もいます。私の住んでいる所にこのようなことが起こるとは、今まで思ってもみませんでした」。

アメリカ中西部では、竜巻といえば四月から五月にかけて発生することが多く、十二月にこのように凶暴な竜巻が発生するなど滅多にないことである。被害の大きかった地区では建物が倒壊し、火災が発生して多くの人が亡くなった。慈済は連邦緊急事態管理庁(FEMA)及び赤十字社と協力して、三つの州で配付支援活動を展開し、全壊した四百五十五世帯と深刻な被害にみまわれた世帯に、一世帯当たりの緊急支援として千ドル分のプリペイドカードと支援物資の入ったバッグを贈った。気丈に災害に立ち向かうメイフィールド市のキャシー・オーナン市長は、初めて会った慈済ボランティアの前でポロポロと涙をこぼした。「ここ数日のインタビューや会議では感情が昂らないようにして、毎日泣いてはいけないと自分に言い聞かせていました。皆さんの団体が市民に物資を届けてくれると聞いて、特にお見舞金まであるとは信じられませんでしたが、今私は本当に感無量です」と語った。

気温が摂氏零度を下回り、慈済の配付は時間との競争になった。ミシガン州、インディアナ州、オハイオ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州、イリノイ州のボランティアは協力しあって任務を成し遂げた。最後の配付活動も十二月二十四日に円満に終了し、各州から来たボランティアはホテルでクリスマスイブを過ごし、家族との団欒の時間を犠牲にしてまで、被災者に温かい祝福を届けたのである。

亡き人を共に偲ぶ

稀に見る冬の竜巻が八つの州を直撃し、シカゴの慈済ボランティアチームは早急に甚大な被害を被った地区に駆けつけて被害状況を調査し、クリスマス前に支援ができるよう急いだ。甚大な被害を受けたケンタッキー州のメイフィールド市では、建物の瓦礫の前で幸いにも生き残った人たちが亡くなった肉親に花束と写真を捧げていた。慈済ボランティアも犠牲者の冥福を敬虔に祈った。(撮影・李侑達)

発生後は気温が急激に下がり、何もかも失った被災者たちは同時に停電という苦境に陥ったので、慈済ボランティアは赤十字社と協力して、六回の配付活動を行った。メイフィールド市の配付会場では、住民が竜巻来襲の恐怖と無力感を思い出していた。

ボランティアは被災者が遭遇した恐怖に耳を傾け、心の痛みを慰めた。涙を拭くと住民は、愛と善の循環でより多くの人を助けられるよう、愛の募金を竹筒貯金箱に入れた。

慈済から千ドルの現金カードと支援物資の入ったバッグを受け取り、多少とも被災後の生活は落ち着いた。

(慈済月刊六六三期より)

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