劇的な気候変動下での行蘊

編集者の言葉

二月下旬、温帯から亜熱帯に位置するアメリカテキサス州で大雪が降った。各種異なったエネルギーによる発電所が、それによる凍結で大停電を起こした。今回の大雪は稀に見るものだが、北極圏の温暖化によって、寒気が南に向かって流れたことが原因である。急激な低温となったテキサス以外にも、ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど多くの地域が寒波に襲われ、急激な気候変動に再び警鐘を鳴らすこととなった。

自然災害発生頻度が増加しているにもかかわらず、人類はほとんど成す術が無い。過去二十数年間、世界各國は温室効果ガスの排出が環境悪化を引き起こしていることは認めてきたが、経済発展などの理由で、二酸化炭素排出削減の様々な協議は、共に協力することを確認しただけにとどまっている。

例えば、アメリカは大量の二酸化炭素を排出しているが、一九九七年に国連が採択した京都議定書を拒否し、大気中の温室効果ガスの量を適切なレベルに抑制することを確約しようとしなかった。一方、発展途上国は、経済を犠牲にして二酸化炭素排出削減に賛成すれば貧困から抜け出せない、という矛盾に陥った。

二○○五年に京都議定書が発効に至ったことで、アメリカ西海岸の都市シアトルは率先して削減目標を達成させ、数百の都市に共同で都市の力でもって京都議定書の目標達成を呼びかけた。その行動で、大国は領土が広く、政策を行き渡らせることが難しいという弊害を乗り越えることができた。

国連がめざす「二○三○持続可能な開発目標(SDGs)」は、環境、経済、社会の各分野で一歩踏み込んだ持続可能な開発の核となる目標を掲げている。これによりSDGsを実現する単位はもはや国レベルが対象であるだけでなく、世界中の多くの都市が次々に合意することとなった。一部の企業も、資源再利用の循環経済モデルで呼応している。

たとえば、毎年世界の木材の約一%を消費する有名なスウェーデンの家庭用品会社は、かつての「家具の買い替えは服の買い替えのように」という「ファストファッション」のスローガンを使用しないことにし、 昨年から台湾でも家具のレンタルサービスを開始した。

限りある資源の中で、生産活動が最終的に環境の破壊や汚染をもたらしている。日常の衣食住と物流は私たちの生きる地球に影響を与えている。元々人間と土地の間には記憶や感情などを含む深いつながりがある。

今期のカバーストーリーでは、フォトジャーナリストが自分にとって馴染み深い台南市の安南リサイクルステーションから出発し、リサイクルボランティアのライフストーリーを記録するほか、彼らが暮らす土地の日常も撮影している。

このリサイクルステーションで、彼はおばあちゃんと一緒に来ていた幼稚園児の兄妹を見かけた。時に回収物の分別を手伝ったり、遊んだりして、気ままにステーションの中を動き回っている二人とは知り合いではなかったが、そのシーンは自分もかつて子供の頃にここへ来て手伝ったことがあるという温かい記憶を呼び起こした。その光景は、成人して映像によるリサイクルボランティアの記録をしている彼にしてみれば、自身の心願の伏線だと言えるのかもしれない。

ボランティアは「福を惜しみ、物を大切にする」気持ちから環境保全を行っている。この思いには、前人への感謝の気持ちと次世代への配慮、そして土地を守るという確固たる使命感が含まれている。心念や作為は微々たるものに見えるかもしれないが、それらは仏法で謂われる「行蘊(ぎょううん・意志や心の作用)」に属し、僅かながらも積み重なって、世界の永続発展の共同目標に呼応している。


(慈済月刊六五三期より)

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