風の如く動く スポーツ文化が確実に根を下ろす

新北市新荘運動公園では、お年寄りも子供もジョギングして体を鍛えている。運動する風潮が盛んになっても、定期的に運動する人はまだ多くない。台湾は五年後には超高齢化社会に突入するが、長期介護の資源に関して討論されるべきである。しかし、その根本は如何に国民の健康を促進するかであり、中でも運動を始めることがキーポイントである。

新北市泰山区の丘の上にある目立たない一角の簡単なセメント舗装で雨避けの屋根がある場所には、無料で使える様々なフィットネス機器が置かれてあり、午後になると人でいっぱいになる。よく見ると、一般的なジムで見かけるような若者ではなく、中高年の人たちである。しかし、皆、屈強な体を持っていて、鉄棒にぶら下がったり、ウエイト・リフティングをしたりしており、元気な若者でもできるとは限らない動作をやってのけている。見た感じは多種多様だが、年齢は運動の妨げにはならない。

同じように還暦や古希の年を迎えても、人によってはしっかりした足取りで歩け、フィットネスクラブに通ったり、運動量の多いテニスをしたりする人もいる一方、ヨボヨボしてまともに歩けない人もいる。年を取るにつれ、人それぞれが持つ健康の度合いに顕著な差が出てくる。教育部体育署(教育省スポーツ局)が編集した『体力トレーニング宝典』によると「体力がある人は生理的年齢が実年齢よりも若く、体の衰えに伴う病気を減らすことができる」とある。

では、どんな運動をすればいいのか?二〇〇九年、アメリカのスポーツ医学協会の発表によれば、高齢者は体が許す限り、成人並に、一週間に少なくとも百五十分間中程度の運動をすることを薦めている。以前の「高齢者はゆっくり動き、体を動かせばそれで良い」という観念と全く異なっている。また、心肺機能を鍛える有酸素運動の他に、サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)にならないよう筋力を鍛え、柔軟性を高めることが必要だという。

六十歳以上のシルバー世代で、定期的に運動している人が六割に達しているとは言うものの、年を取ってから運動する習慣を身につけようとしても、体の機能が既に急激に衰えている人は少なくない。では、どうすれば一定強度の有効的な運動ができるというのだろうか。二〇二五年には超高齢化社会がやって来て、医療支出が大幅に膨らむ。人々に若いうちからもっと運動させ、より健康な社会を築くことは台湾にとって重要な課題である。

新北市泰山区山頂公園には各方面から寄贈されたフィットネス機器が置かれてあり、多くの人が訪れている。白髪まじりの人でも長い間運動を続けているので、屈強な体を持っている。

運動ブームの背後に隠れた心配

健康のために運動すること、そして如何に効果的に運動するかという観念が普及するにつれ、社会的にも運動に親しみ易くなった。サイクリング、ジョギング、フィットネスなどが流行っているだけでなく、スポーツ関連産業の総生産額は二〇一七年には四千七百億元(約一兆五百億円)に達し、年率6・19%の成長を遂げている。生産高、売上高、メーカーの数、雇用人数など全てが増加している。「一つ前の世代は全般的に運動するという概念がなく、公園を歩くだけで運動になると思っていました。年を取ってから医者に言われて初めて運動し始めるのです。それに比べ、今の若い世代は一般的に運動とフィットネスの概念を受け入れています」。地域型フィットネスクラブ、ドクタースン・スタジオを三店舗経営している胡崇偉(フー・チョンウエイ)さんは、台湾のスポーツ文化は益々盛んになると考えている。

中高収入のサラリーマンを対象にした早期のフィットネスクラブは、賑やかな繁華街にあって会費も高額だったが、ここ数年は街のあちこちに、小規模で地域型の店舗が多く見られるようになった。手頃な費用で利用できることから、庶民は魅力を感じ、フィットネスを始めている。彰化市も率先してシルバー世代向けの「不老ジム」を推進し始めた。

新北市微風運河の河川敷には、ジムでよく見られるフィットネス機器が設置されている。休日になると、多くの人がここでストレッチや鉄棒をしている。台湾では運動する風潮が盛んになっており、運動する場所が増えている。

二〇〇二年に国内で初めて建てられた国民運動センターは、国民に愛用され、政府の重要な行政功績となり、今では全国に四十六カ所を数える。費用が手頃でありながら、プール、ジム、球技場、エアロビクス教室など様々な設備を備え、運動しようとする多くの人にとって、ベスト・チョイスになっている。その上、新築マンションにジムやプールなどの運動スペースが出現していることからも分かるように、国民が運動を重視しつつあることを反映している。

しかし、データーを見れば、台湾は運動を好む国からはまだ程遠い。二〇一四年、当時の国民健康署(健康局)が発表した資料によると、台湾とOECDに加盟している二十九の国と比較すると、台湾女性の運動不足は73%に達していて一番であり、男性は64・4%で第二位だ。経済的に発展している地域の中でも台湾は最も運動しない国だと言える。

有効な定期的運動とは、週に三回以上、そして一定の強度に達した運動のことを指す。しかし、台湾では定期的運動をする人は人口の33%にしか過ぎない。三十五歳から四十四歳までは更に割合が低く、約20%でしかない。

アメリカ運動医学協会によると、定期的運動は生理的機能に広く良い影響をもたらす。それは慢性病のリスク・ファクターを減らすだけでなく、より良い心理面の健康や社会生活と関係してくる。

人口の高齢化がもたらす膨大な医療費に対応するため、定期的運動は一層重要性を増している。国情統計通報(国情統計報告書)によると、二〇一八年の健康保険の支給額は、二〇一三年に較べて25・8%と大幅に増加した。六十五歳以上の高齢者人口は総人口の14・2%を占めているのに対して、医療費は約38・2%を占めている。先進諸国は国民が自発的に運動することを最高の予防医学と位置付けており、定期的に運動する人口を増やすことを急務としている。如何にすればもっと多くの台湾人が運動するようになるか?まず運動しない理由を分析しなければならない。

不定期から定期的運動へ

体育署が二〇一九年発表した「運動の現状調査」の報告では、「時間がない(41.6%)」、「仕事で疲れる(21.2%)」「運動するのが億劫(19.5%)」「健康上の理由で運動できない(10.7%)」の四つが主な原因となっていた。

台北市立大学運動教育研究所の薛名淳(シュエ・ミンチュン)助教授は、今進めている研究で初歩的な発見をした。台湾のサラリーマンは、九時間という長時間座ったままであり、中・高度の運動も不足していることが死亡リスクを大幅に増やしているというのだ。多忙は健康キラーと言える。もし、運動する為に時間をとるという精神的負担を減らせるなら、それは良い方法に違いない。企業が「体を動かす」ジムを設置したり、運動教室に通う授業料を補助したりすることは、従業員に運動させるきっかけとなる。

人々が運動を重視するようになってから、ドクタースン・スタジオのようなコンパクトなフィットネスクラブが近所の住民を引き付けている(左圖)。東呉大学は、人々に測定機器で柔軟性やBMIを測定することで、自分の体力を理解してもらっている(右圖)。

薛さんの観察によると、従業員の為に運動施設を作る企業は益々増えている。体育署が「運動企業」に認定した葡萄王生技(グレープ・キング・バイオ)は従業員の為に筋トレやエアロボクシングなどのインストラクターを雇っており、平均八人から九人の社員の中に一人がレッスンに参加している。その上、同社は毎年従業員に健康診断や腹部エコー検査の補助金を出している。従業員の健康指数の異常を把握したことから、ダイエット・コンテストを実施し、彼らにもっと運動して食生活を変えることを奨励した。同社はこう説明する。「弊社の45%の従業員にBMI指数の異常が見つかり、半分以上の人が脂肪肝になっていましたが、数年続けて開催してきた運動講座やダイエット・コンテストのお陰で、改善の効果が顕著に現れました。そして、従業員が運動する頻度も六割増えました」。

定期的な運動習慣を身につけるためには、自分に合う、実践しやすい運動方法を見つけることがポイントである。王儀旭(ワン・イーシュー)コーチの健康管理講座では、受講生に正しい「食習慣」と「運動方法」を教えることから始まり、十代の青少年から八十、九十代のお年寄りまで、三千八百人がダイエットに成功している。医者や看護師にも、数十キロの減量に成功した人が多くいる。

四十五歳の受講生である方思涵(ファン・スーハン)さんによると、彼女は子供の頃からぽっちゃり型の体型で、ずっと運動するのが苦手だったので、それまでのダイエットでは食事制限や薬に頼り、運動によるものはしていなかった。しかし講座に参加してから、「運動を甘く見てはいけないことを学びました。体を動かすには筋肉が必要で、筋力がなければ疲れやすくなります。運動すれば、眠れるようになり、気分も晴れるようになります。多くの運動は日常生活で簡単にできます」と、方さんは、全く運動しない生活からできるだけ時間を作って運動するまでになった心境の変化を話してくれた。

この講座を講義している王コーチは、現在大学で体育の授業を受け持っているが、かつてはスポーツ選手だった。彼は五十代の時に高血圧、高血糖、高脂血症に直面し、「運動すれば健康になるのではないのか?」と長い間よく運動してきた自分の生活に疑問を持った。そして、おろそかにしていた食習慣を調整し、運動方法を変えてみることにした。「自分の体を理解しようと思いました。どの筋肉が今の自分にとって一番重要で、同時に心肺機能も維持できるのか、と考えました。以前の私は長距離のジョギングが好きでしたが、今、運動は体と心のバランスが取れれば十分で、運動量はそれほど多くなくても良いことを知りました」。

慈済基金会のスタッフが作ったヨガ・クラブは既に10数年続いている。社員の退勤後の運動をサポートしている。

人それぞれが必要とする運動は異なる。それを理解した彼は学生に、運動の本質を認識し、日常生活の中で実践するよう教えている。例えば、歩く時バレリーナのように背筋を伸ばせば、脚だけでなく、コアとなる筋肉を鍛えることもできる。単純に足を高く上げれば、バランス感覚、筋力、協調性、柔軟性を鍛えることができる。真っ直ぐ座ることさえも一つの運動であり、立ち上がったり座ったりする時には大腿四頭筋と三角筋を鍛えることができる。彼は講義する日の早朝、七百段余りの階段を登る。「十数分間の運動にすぎませんが、体の多くの筋肉群や心肺機能が同時に鍛えられます」。とは言え、個人の体力はやはり考慮すべきであり、体力のあまりない人は、歩く速度と同じぐらいの「超スロー・ジョギング」を選べばよく、ウォーキングより効果があるのだそうだ。

「これらの運動は簡単で、どう動けばいいかは体が教えてくれますが、やりたいと思うか、また長く続けて習慣化するかは本人次第です」と王さんが最も重要な点を指摘した。根深い運動文化を育てるには学校や家庭から着手できるのである。

終りたくない体育の授業

体育の授業は多くの人にとって、運動教育との出会いの場であり、その後の人生における運動に対する認識と感覚を築く場でもある。「しかし、体育の授業というと、あなたは何を思い出しますか」と台北市立大学運動教育研究所の周建智(ジョウ・ジエンジー)所長が問いかけた。多分万年ドッヂボールやバスケットボール、それとも日蔭で涼んでお喋りしたこと等だろう。とにかく学生の興味を引き付けるような授業ではなかったようだ。

それは以前の体育の授業が、少数のスポーツ選手を育てるためにあったようなもので、多くの学生に運動する習慣を身につけさせるのが目的ではなかったからかもしれない。その為、運動の苦手な人は体育の授業を嫌い、社会に入ってからは徹底的に運動から遠ざかってしまった。ましてや、体育の時間を他の授業に回されたりして、体育の授業は長い間重要視されなかった。「体育の授業はスポーツ選手を育てるためのものではありません。三十人の生徒の内、上手くできるのは五人だけでしょう。しかし、体育の授業の本来あるべき姿は、より多くの生徒を参加させることによって運動する習慣を養うことにあるのです。少なくとも、拒否反応を起こさなければ、大人になってから、自分で運動する機会を見つけるようになります」と周所長が言った。

アイデアを加えた体育の授業は従来のものと異なる。中壢中学校の体育の時間は、グループごとにジョギングマシンで走ることや平衡感覚を養う運動をするので、学生はタイムトライアルレースのようにこの授業をとても楽しんでいる(左写真)。和平実験小学校では、毎朝体育の授業を行う。一日が運動から始まる(右写真)。

台北市立和平実験小学校では、朝八時からホイッスルが鳴ると、四年生の生徒が一斉に運動場で走り出す。時には転ぶ生徒もいるが、往々にして子供は立ち上がり、埃をはたくとまた走り出す。それは生徒の体力訓練の授業というよりも、子供の最も自然な遊び方だと言える。しかし、遊びに見えるが、巧みにアレンジされており、グループ分けも、あらかじめ分けるより抽選で分けた方が、楽しみが増すのだそうだ。また個人よりもグループパフォーマンスを重視して、あらゆる子供が十分に運動できるようにしている。

一般の学校が体育の授業を週二時間にして、早朝の自習時間を試験や読書という静の時間に当てているのとは違い、和平実験小学校は週に五日も体育の時間があるだけでなく、それを朝一番の授業にしている。「心身の健康が強化できるほか、良い状態でその後の学習に入ることができるのです。保護者は皆、私たちの理念に賛同してくれています。子供たちも、心身ともに元気になれるだけでなく、皆、運動することが大好きなのです」と和平小学校の黄宇誠(ホワン・ユーチョン)先生が言った。

「三人一組になってランニングマシンで三キロ走ったり、二人で百五十から二百回縄跳びをしたり、プランクした二人が向かい合って百回手を叩きあったり、バランスボールの上に六十秒間乗ったりします」。これは桃園県中壢市立中学校の体育教師である陳珮驊(チェン・ペイホア)先生が、二年生の為に作った運動メニューで、四十五分間の授業の間にこなすようになっている。生徒たちは男女を問わず取り組み、疲れたとこぼす人は一人もなく、タイムトライアルレースのようにその運動に集中している。中にはチャイムが鳴っても終わろうとしない生徒もいる。

この授業は体作りを目的とした今までの体育とは違う。自己チャレンジとチームワークの要素を加え、生徒たちは楽しみながら無意識の内に一定の運動量をこなしているのだ。「普段これだけの量を運動させるのは大変なことで、退屈です。しかし、方法を変えて導けば違ってきます」と陳先生が言った。

「今日の授業内容は次回に繰り返しません。この三年間、私の授業内容は全て違うものです」と陳先生が言った。彼女は周先生が提唱したアイデア性を持った体育授業に啓発され、心を込めて楽しい授業内容を組み立て、生徒たちに楽しく運動させている。例えば普通のバレボールの代わりに大き目の柔らかいビーチ・バレボールを使い、生徒たちのバレーボールに対する恐怖感を減らすと共に、ボールを叩き易くすることで、ゲームを楽しんでもらっている。

アイデアの背後には、生徒たちが楽しく運動する能力を身につけ、生涯健康に過ごしてもらいたいという期待がある。だからこそ、他人からは平凡に見える「小さな事」でも陳先生は誇りをもって取り上げるのだ。「多くの女子中学生は体育の授業を嫌いますが、私が教えた女子生徒は、放課後にボールを持って陣取りますし、授業中に片隅に座って運動しない人は一人もいません。それが私の誇りです」。

しかし、進学第一主義の現在、運動は勉強の妨げになると考える保護者も依然として存在し、子供がトラックを走る回数を減らして欲しいと陳先生に頼んだ保護者もいた。保護者の運動に対する見方がそのまま子供に反映するので、学校だけでなく、家庭でも子供に運動に対する正しい知識を与えることが必要になる。

家庭発の運動教育

プロのカメラマンである金成財(ジン・チョンツァイ)さんと親子ブログを開いている米オヤジさんは、二人とも運動愛好家で、子供と一緒に運動している。そこから多くのことに気がついたそうだ。

台湾ではサッカーは人気のないスポーツだが、サッカー好きの金さんは二人の子供を連れてサッカーへの道を歩み出した。彼は正規のゴールゲートさえない台北市立大安小学校でサッカー部を創設し、全国で三位に入った。長男が中学校に上がった時、彼はサッカーリーグを作り、息子にも忙しい勉強生活の中でサッカーをさせた。四歳半から始まった息子のサッカー人生は今も続いている。

「子供たちにとって、週二時間の運動はストレスの解消になりますし、学習にも役立っています。勉強への集中力が高まり、短時間にその日やるべき勉強を終えます。今年彼らは皆、台北の一流高校に合格しました。それで他の保護者たちも運動と勉強の並行が可能であることを信じてくれました」。金成財さんはまた満足そうに「子供たちが運動の習慣を続け、たとえ競技はしなくなっても、サッカーの支持者になってくれることを期待しています」と言った。保護者たちもチームを結成して練習に付き添うようになった。

13歳の金東志さん(中央)は4歳半から父親の金成財さんに連れられて、サッカー場を走り回っていた(写真左)。米オヤジは子供にスケートボードなど多種にわたるスポーツに挑戦させることで、親子の間に話題が増えた(写真右)。(写真左:撮影・金成財)

「私は彼らが欧米の子供たちのように、スポーツからチャレンジ精神と忍耐力を学んで欲しいのです。先ず彼らをその道に導いてから、続けるかどうかは自己判断に委ねます」とダンスインストラクター出身の「米オヤジ」が言った。五歳になった息子の「米粒(ミリ)」は一歳過ぎから水に親しみ、三歳過ぎからスキーを始めた。今年はサーフィンとスケートボードを始め、僅か数カ月で、よくできるようになった。二歳ちょっとの妹、「米菲(ミッフィー)」も自然と影響を受けて、まだしっかり歩けなくても、スケートボードを乗りこなしている。「子供たちと一緒にスキーとスケートボードのビデオを見ながら、覚えさせています。私の付き添いによって、運動は娯楽であって勉強ではなくなり、親子の間には多くの共通の話題が増えました」と米オヤジが言った。

アジアの家庭は静の活動が多く、親は、子供が陽に当たり、雨に濡れ、転んで「痛い思い」をさせることを望まず、ましてや一緒に運動することはない。「子供が活発に動く時期に、座らせてばかりいれば、その後は運動を嫌うようになります」。子供が生まれつき動きたがるのを制限するのではなく、むしろ動くことを奨励することによって、自分に適した運動習慣を身につけさせれば、おのずと年を取ってからも運動を続けるようになる。

周先生は研究から気がついたことがある。運動は体を鍛えるだけでなく、認知機能と実行能力を高め、学習成果の向上に効果があるのだ。成功大学体育健康及びレジャー研究所の助教授である王駿濠(ワン・ジュンハオ)先生は、「お金を稼げば買い物ができるようになるのと同じで、子供に運動の過程を楽しませ、その良さを知ってもらうことができれば、おのずと運動をするようになります」と言った。運動が認知機能を高めるのは年齢に関係なく、特に認知と身体的なチャレンジ性の高い運動ほど効果が現れる、と王先生は補足する。しかし、効果を持続させるには、運動の内容を継続的に調整しなければならない。

フランス発祥の、両足を揃えて金属製のボールを投げるペタンクは入門し易く、運動障害の少ない球技として中高齢者に人気がある(写真左)。台中市東勢区石角庄の高齢者は、積極的に町内の運動レッスンに参加し、深くうずくまるための筋力運動を行なっていた(写真右)。

健康は国の基本、年を取っても動き続ける

「イビヤヤ、イビイビヤー……速く!もっと速く!」「いいですね!もうちょっと頑張って!」王コーチの活気溢れる指導の下に、銀髪のお年寄りたちはウォーミングアップから始め、上半身がリズムに乗る運動から、下半身の膝抱え及び全身の力を使って深くしゃがむ運動まで、皆、格別に集中してこなしていた。九十六歳のお婆ちゃんや車椅子に座った人も参加していた。その授業は僅か一時間半だが、高齢者に安全且つ存分に運動してもらうことができる。王コーチは彼らに、脚力を保つため毎日五千歩を歩くよう促している。そうすれば、車椅子を使うことも寝たきりになることもなく、これが健康を保つ秘訣だと言い聞かせている。「彼らが最期まで健康でいられることを願っています」と後援者の呉鎮坤(ウー・ジェンクン)夫婦が言った。

ここ台中市東勢区石角庄では、中秋節の連休にも関わらず、朝の八時過ぎから四、五十人の平均年齢が七、八十歳の高齢者が集まり、コミュニティケアセンターは一杯になっていた。「最初は、頭数を揃える為に来ましたが、やがて毎週楽しみにするようになり、集まる人が増え続けています。体も運動のお陰で楽になるからです」と高齢の徐念慈(シュー・ニエンツー)さんは嬉しそうに、運動して感じたことを話してくれた。

成功大学と米パデュー大学の共同研究によると、大脳は、運動をした後にその顕著な活性化が、脳波検査に現れるという。(写真左・米パデュー大学、高士峻助教授提供)

元交通部部長(交通省省長)で七十二歳の蔡堆(ツァイ・ドウイ)さんは、定期的に運動する最良の代弁者である。彼は毎朝のジョギングを二十数年間続けている。この五、六年はそれまで四十数分間だった運動時間を一時間にした。年を取るにつれて距離が長くなったのだ。その関係で一日中気分が爽やかでいられるだけでなく、風邪を引くこともないし体力は実年齢よりも二十歳以上若い。

「私は以前、特に運動が好きな人間ではありませんでしたが、ジョギングする習慣を身につけてから、一日でも走らないと、体が硬くなって、生活に何かが欠けているように感じるのです」と蔡さんは言う。彼は天気が悪くても、毎日運動場に行き、それは部長在任中の多忙な時期でも途絶えることはなかった。「もし予定が詰まっていて、早朝の時間に走れない時は、午後に換えました。また、大雨で走れない時は、階段を登り下りして別の運動をしました。私にとって、運動は食事と同じように必要なもので、運動は時間の無駄だとは全く思いません」。初めは健康のために定期的運動を始めた蔡堆さんが言った。健康な体が今でも彼に充実した生活を与えている。

72歳の元交通部部長の蔡堆さんは、多忙の中でも毎日できる限りマラソンを続けてもう20数年間になる。定期的な運動が健康と生活に良好な影響を与えることを、身を以て実証している。(撮影・安培淂)

世界中の人類の平均寿命が伸びている中、アメリカ、フランス、オランダなどのように定年を遅らせることを検討している国もある。台湾は五年後に超高齢社会に突入すると共に、少子化問題の直撃も受けることになる。一定の労働力を確保しつつ、自立した生活が送れない高齢者が不健康なまま過ごす老後年数と長期介護や健康保険の負担を減らすには、より多くの健康で長生きする人、即ちもっと多くの「自覚して運動する」人が必要なのである。

些細なことから改め始め、運動環境をよりよく改善し、手堅く確実に運動する人を育てあげることが必要である。運動を食事や睡眠と同じように必要な習慣にして、社会をもっと健康的にすることは、一個人の問題ではなく、強く健康な国造りの基本なのである。


(経典雑誌二六八期より)

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