法華経の世界へ 世に伝える慈済の経蔵劇

爐香讃(台湾での香讃の呼び名)の荘厳な響きに合わせ、慈済の経蔵劇の出演者たちがゆっくりと舞台へ進み、演目『静思法髄妙法蓮華』が始まった。

経蔵劇『静思法髄妙法蓮華』は、年末に催される。七月下旬に花蓮静思堂で練習成果の最終チェックが行われ、その後、ボランティアはコミュニティに戻って住民の参加を広く募った。

品書会(勉強会)と慈済手話劇に参加すると、二千五百年余り前のブッタの軌跡を辿り、慈済が五十六年間、どのようにして仏法を人間(じんかん)に根付かせて来たかを理解することができる。自分が法華の道を歩んでいるのだとわかるのだ。

ブッタの一生を再現

二千五百年余り前、ブッタはカピラヴァストゥという都を治める釈迦族の王子としてルンビニで生まれた。その頃の名前はシッダールタと言う。経蔵劇『静思法髄妙法蓮華』の最初のプログラムは、「ブッタの一生」である。アシダ仙人は、この王子が王位を継承すれば、必ずや賢明な転輪聖王となり、もし修行の道に進めば、必ずや悟りを開き、成仏するであろうと予言した。仙人は、自分が老いていて、その説法をする様子を見届けられないことを惜しんで涙した。(写真左)

スッドダーナ王(浄飯王)は、王子が出家の念を起こさないようにと宮殿で贅沢の限りを尽くさせた。しかし、王子は遊学のために城を出た時、老、病、死、そして別離の苦しみを目の当たりにすると、憐れみの気持ちを起こして衆生の輪廻のために修行の道を歩み始め、解脱への道を探究することを心に決めた。

芸術で経典を解釈する

プロの芸術団体である優人神鼓(U-Theatre)は、唐美雲歌仔劇団(Tang Mei Yun Taiwanese Opera Company)と台湾京崑劇団とで舞台道具を共用するなど、協力し合いながら経典の意味を伝えている。「ブッダの一生」というプログラムは、ブッダが五百人の比丘と共に王宮に招かれた時、デーヴァダッタが象使いに言い付けて、象を酔わせてブッダを殺害することを企てた話である。酔った象はブッダの慈悲深くて尊い姿を目にした時、瞬時に酔いが覚め、頂礼(ちょうらい)した。(写真左)

七世もの間、貧困だったスダッタ夫婦は、香木と三膳の白米を交換し、自らの飢餓を顧みず、続けてシャーリプトラ尊者と摩訶迦葉尊者 (大迦葉)及びブッダを供養した。清浄な布施心をもって、宿世(すくせ)の運命を変えた。

経典の実践でレールを敷く

一九六六年、仏教克難慈済功徳会が設立され、五十銭の力が台湾から世界へと広がり、五十六年間、慈善のグローバル化を推し進め、慈済ボランティアは苦難を救う因縁を逃さず、至る所に善の種を撒くと共に、支援を受けた者の自助と人助けを促して来た。

二〇〇九年、台風八号(モーラコット)は、台湾南部に大きな被害をもたらした。慈済は、緊急支援すると同時に恒久住宅の建設に取りかかった。

南アフリカダーバンのエイズ患者ケアで、慈済ボランティアは大愛農園を運営して、エイズ孤児を世話している。(写真右)

一幕一幕が実話と資料に基づいており、《無量義経・功徳品》の偈頌(げじゅ)では「枯涸した心を法で潤し、衆生の病は法の教えで癒し、慈悲で衆生を恵み、真実の道を歩んで法雲地に達する」を表した。

心に光を灯して本性を示す

花蓮静思堂の床に様々な角度と色とりどりの線による目印が付けられているのは、経蔵劇でボランティアが演出通りに演技できるようにするためである。台湾全土から集まった百五十人のシードとなるボランティア (最初に勉強したボランティア)が、手と体を使った演技をし、舞台にいるプロの芸術家たちと呼応し、慈済が実行して来た法華経の精髄を具現化する。その後、シードボランティアは所属する地元に戻り、コミュニティで経蔵劇に参加する人々を指導するのである。

カーテンコールのプログラムは、「小惑星・慈済」。ボランティアが手に持った道具からは、様々な淡い光が温かさを放った。全員が「心灯」と呼ばれる灯りを持ちあげ、星の光が暗がりを照らすように人間(じんかん)を守り続けます、と證厳法師に発願した。(写真下)

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