編集者の言葉
今、世界は気候変動と資源の枯渇という危機に直面しており、どうやって持続可能な発展を続けるかが切迫した課題となっている。近年、慈済基金会は「サステナビリティデザイン&アクション・サミット」というディスカッションイベントに参加している。今年のテーマは「リサイクルステーションの改造計画」である。各分野に跨る若手設計士を募集し、若者が引き継ぐことに期待している。
三十年余りにわたって、慈済の環境保全志業の発展は常に大衆に強く支えられてきた。発心して投入しているボランティアの多くは個人個人の能力と活用できる環境条件に応じて各自が活動しており、明確な推進モデルはない。たとえて言うなら「行動しながら隊列を編成する」ように、様々な規模のリサイクルステーションが統合されてきた。
今日に至っても、台湾全土や離島に分布しているコミュニティのリサイクル拠点やリサイクルステーションのいくつかは、困難な運営が続いている。例えば、高架の下にある場所では、雨天時に橋の隙間から落ちてくる雨を避ける必要がある。また、橋の下は水も電気も通っていないので、節水のことも考えて、ボランティアは橋の上を流れてくる雨水をタンクに貯めている。資源ごみの分類に関しては、ボランティアが工夫を凝らして道具を設計するなどして繁雑な問題を克服している。
リサイクルボランティアは大半が六十五歳以上の年長者だが、環境保全をして社会の一員になるという意識があり、老いるという価値を見出している。このように年長者が毎日家から拠点に通い、他人と接触し、社会というネットワークにつながる様子は、目に見えない介護を受けているとも言える。経済的な観点から見ると、リサイクルは、消費を中心とする直線型経済において、物資が環境に負荷を与えるのを防ぐ最後の砦である。回収した資源ごみの分別が細かく、清潔であるほど、リサイクルされる可能性が高くなるのである。
年長者ボランティアの大半は働くことが身についているため、「環境保全で地球を救う」という使命を持って資源ごみの分別をしているので、ネット世代の若者が環境保全問題を認識して投入するのとは異なっており、両者は互いに平行線をたどっているようだ。
今月号の特別報道には、若い設計士が使用者のニーズを理解する過程で年長者に人々を感動させる面がある一方で、年長者ボランティアのエンパワーメントを支援すると言う話題が紹介されている。台北市と新北市にある三カ所のリサイクルステーションでの設計とアレンジが、より大きな効果を発揮して若い世代を惹きつけてくれることを願っている。
世代継承はそれだけに留まらない。今年の七月末、花蓮の静思堂で手話を交えた経蔵劇『静思法髄妙蓮華』の通しリハーサルが證厳法師が見ている前で行われ、お墨付きをもらった。年末には海外の慈済人も参加して、初めて高雄アリーナで公演される予定である。テクノロジーを使って、共に霊山法会に参加しているような演出が成される。コロナ禍の下、脚本は何度も修正され、出演者の半数以上が四十五歳以下の若いボランティアである。今月号の表紙の物語でそれを垣間見ることができる。
慈済宗門は《法華経》の精神に則って設立された。仏の道を学ぶには、仏の慈悲心と願力を受け継いで、人間(じんかん)の苦難に真に奉仕することである。経蔵劇を通じて、法華の精神である真理と実践が代々深化し続けることを願っている。
(慈済月刊六七〇期より)