今生の霊山法会を逃さない

経蔵劇の裏方チームは、台湾全土の各コミュニティから集まった活動チームの代表者で構成されており、勉強会を行い、振り付けとその動画を作成し、全体稽古を指導した。言葉にならないほどの忙しさではあったが、前世で約束を交わして現世で巡り合ったことを信じ、この殊勝な因縁を大切にした。

いつも一緒に脚本や照明などの細部にわたって話し合っていた監督チームの呂慈悦(右)と劉若瑀(中)、唐美雲(左)。最終チェックの前夜は精舎とオンラインで繋がり、證厳法師に通し稽古の状況を報告した。

経蔵劇『静思法髄妙法蓮華』は、七月末に花蓮静思堂で行われ、證厳法師が直々に稽古の成果を確認し指導した。企画チームの呂慈譲(リュ・ヅーラン)さんによると、「上人はこう言われました。『法華経』は殊勝であり、経典を代表する最も需要な教えなので、定命(じょうみょう)を迎えるまで、『法華経』の精髄を経蔵劇で表現できることを願っているのです」。

ブッタが《法華経》を講釈した時、様々な妨げに遭った。そして、慈済もまた経蔵劇『静思法髄妙法蓮華』を広く上演する中で様々な困難に出会ったが、不撓不屈の精神でやり遂げた。

プロの劇団以外に、台湾全土の各コミュニティから代表が集まって企画チームを組織し、二〇二一年年末から共同学習を始めた。総監督の呂慈悦(リュ・ツーユェ)の引率のもと、一緒に経蔵手話の振り付けを考えると共に、それを指導する動画の作成を行って台湾全土、更には海外の人をも経蔵劇ボランティアに導き、霊山法会に参加した。

また、呂さんは、この二年間南北を何度も行き来し、台湾全土のシードボランティアに付き添った。コロナウイルス感染拡大という脅威の中で、抗原検査などはもはや日常茶飯事だったが、経蔵劇を完成させるためなら、背後にある様々な試練など彼女にとっては取るに足らないことであり、一人でも多くの人が参加してくれることだけを思っていたそうだ。経蔵劇では、仏道修行者の威厳正しい姿が自ずと顕現され、仏法の神韻を表現することになる。全ての縁が揃って、この千載一会の経蔵劇を成就させることができるのである。

スクリーンの映像とボランティアの動作が合わさって、歴史ある感動の場面が再現された。整然とした荘厳なパフォーマンスは、たゆまぬ稽古の集大成である。

振り付けの動作は、修正が繰り返された。花蓮静思堂に到着すると劇団の演出に合わせる必要があり、通し稽古の時でさえも、動作の角度などが繰り返し修正された。仏道修行者の威厳正しい姿と仏法の神韻を表したいがためだった。

企画チームは、呂さんにのしかかったプレッシャーを感じ、全員が一丸となって何度も修正に応じた。経蔵劇の企画チームメンバーである葉美恵(イェ・メイフェイ)さんによると、参加者一人一人の心を落ち着かせる必要があったので、たとえ誰かが「また変えるのか」と言った時でも、自発的に、劇をより観客の心に響かせ、感動させたいという修正理由を説明したのだそうだ。

同じく企画チームのメンバーである林淑恵(リン・スゥフェイ)さんは、葉さんの最高の相棒だそうだ。彼女たちは、劇では音頭取りの役割を担っていた。長時間跪いて頂礼などを繰り返したので、膝と脚にあざができてしまった。林さんによると、二〇一一年の演目《法は水の如し》では初めてシードボランティアとして花蓮に帰ったが、何度もリハーサルがあったので足が浮腫んで痛みを感じたそうだ。そして、休憩していた時、やや疲れていたこともあって怠け心が起きてしまった。その時、ある師兄に不意にこう言われたそうだ。

「あなたは縁もゆかりもなくここに来たとでも思っているのですか。どうしてこの五百人の中にあなたがいるのでしょう。過去生であなたは、五百人の弟子の中の一人だったのかもしれないのですよ。この殊勝な因縁を大切にすべきです!」。

7月末、公演が全て終了すると、法師はボランティアと劇団の舞台芸術スタッフたちを祝福した。全員が満面の笑みで「合心」(ハート)のポーズを披露した。皆で心を一つに合わせたので、仕上がりは完璧だった。

林さんはその場で懺悔し、涙を流しながらリハーサルに戻った。彼女は、そのような因縁は重んじるべきで、怠け心や辞めてしまいたい気持ちがあってはならないと感じた。そのような堅い意志があったからこそ、彼女はチームと共に今日まで続けられたのだ。「毎年の経蔵劇に参加し続けることができました。目覚めて悟り、法を心に携え、社会の中で実践することができたのです」。

葉さんによると、今回花蓮に来たシードボランティアは多いが、企画チームの定員は僅か三十名なのだそうだ。

「参加できるのは、千載一遇の事なのです。二千五百年前、私たちは一緒にこれをやり遂げる約束をしたはずです。劇によって経典の精髄を伝え、その後に広く菩薩を募るのです」。


(慈済月刊六七〇期より)

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