異世代コラボで改造─若返ったリサイクルステーション

台湾全土で九万人を超える環境保全ボランティア。その半数以上が六十五歳以上だ。

毎日、暮らしから生まれる資源ごみの中で奮闘している
彼らシルバー世代の、環境保護活動の効果を最大化すべく、リサイクルステーションを美しく快適な作業場に変身させよう、と乗り出した若者たちがいる。

板橋忠孝リサイクルステーションでは、回収車から資源ごみが下ろされると、ボランティアたちが第一段階の分別に取りかかった。

軽トラックにぎっしり積まれているのは、紙製弁当箱にプラスチックボトル、本や新聞、雑誌などで、すべて私たちの暮らしの中で使われた物だ。次々とエコセンターに運び込まれるこれらの資源ごみは、細かく分別され、洗浄、分解、乾燥、袋詰めされた後、リサイクルの工程を経て、再び社会で使用可能な製品に生まれ変わる。

このようなリサイクルステーションは地域の路地裏や道路脇、慈済園区内などに点在し、各自治体の少なくない資源ごみを受け入れている。たとえば、新北市板橋区の忠孝回収所は住宅地にあり、近くに伝統市場もあるため、回収物には果実袋や様々なビニール袋が多く含まれている。ここは二階建ての古いアパートを利用した比較的小規模なものだが、それでも毎日平均三十~四十人のボランティアが活動しているし、資源回収車は週に四日、地区を回って少なくとも四~六回は運び入れる。

忠孝リサイクルステーション責任者の蘇玲鈺(スー・リンユー)さんは、同所は小規模だが信じられないほどの機能を果たしていると話す。達人的なボランティアは、紙の種類やビニール袋の微妙な違いまで見分けるという。例えば、プラスチックの素材でもポリプロピレン(以下PP)とポリエチレン(以下PE)の違いを、触ったり揉んだりした感触や、叩いた音で判別している。正確な分別はリサイクル品の歩留まり向上につながる。

板橋忠孝リサイクルステーション。ボランティアが作業台を囲んでごみを分別している。この作業台は、回収したスチールラックを溶接して木の板を載せたものだ。ボランティアの平均身長に合わせて手作りされたこの作業台は、まさに「もったいない精神」の表れである。

彼ら達人たちの一日はこのように始まる。午前八時ごろ回収所の扉が開くと、勝手知ったる人たちが次々と中に入って、各自の持ち場に座って忙しく仕事を始める。疲れたら立ち上がって体を動かしたり、水分補給をして、再び仕事に没頭する。正午になってようやく仕事をやめ、昼食をとる。

ボランティアは笑って言う。「毎日ここに通うのは、会社に出勤するようなものですね。決まった時間に来て、一緒に働く『同僚』もいます。本当に楽しいですよ。こんな年寄りでもまだお役に立てるなんてね!」

リサイクルセンターを支えるのは、他でもない彼らシルバー世代のボランティアなのだ。慈済基金会宗教処環境保護推進チームの統計によれば、台湾全土の慈済リサイクルセンターで働くボランティアのうち、六十五歳以上の高齢者は五割に達する。

ここでは、最年少のボランティアが六十五歳で、最年長はなんと九十歳だ。蘇さんによれば、多くのボランティアは、子どもが独立してしまって、一人暮らしで普段は話し相手もいないのだという。ここに来れば、人と話したり体を動かす機会も増えるし、「何より社会に貢献できることを喜んでいるのです!」

木柵環境保全教育センター。分別し袋詰めされた資源ごみがきれいに積まれている。2段になった鉄柵の棚は回収されたベッドフレームやスチールラックなどで作られている。設計者たちはより頑丈な囲いに作り替える予定だ。(写真提供・Slash studio)

不満はない でも大変

ここには、至る所でボランティアのもったいない精神が溢れている。分別作業を行う作業台は回収された鋼材やスチールラックに木や鉄の板を組み合わせてできている。蘇さんは、「あちこち手直しして使っているので、使いやすいですよ」と話す。プラスチックの椅子も回収品だ。洗えばまだ十分使える。いい背当てクッションが回収できたら、それを取り付ければより快適になる。

やる気にあふれたボランティアであるとはいえ、年が年だ。若い頃のようにテキパキとは動けない。しかも、限られたスペースにできあいの机と椅子で我慢していることも多い。コルセットを着け、小さな腰掛けに身をかがめて何時間も作業を続けているのだ。時には力を込めて立ち上がる必要があり、そのとたんに腰と背中の凝りを感じる。それでも、彼らは愚痴一つ言ったことはない。なぜそれほど頑張れるのか。その目標が壁にはっきり書かれている。「地球の資源を大切に」、「次世代に最高の財産――美しい山河を」、「清浄は源から」。

リサイクルステーションはボランティアたちにとって、もう一つの家のようなものである。長年使用していると、外装が壊れたり錆びたりし、電気回路系統も整備が必要になって来る。水や電気に精通したボランティアが電気系統の危険なところを改善したり、建物の外壁を修復したりするが、作業スペースの動線や補助ツールを使って改善することも非常に大きな課題である。

台湾全土のリサイクルステーションでは、実際に効率と安全性を向上する道具が次々に発明されている。

例えば、北区の蔡直(ツァイ・ズー)さん、中区の柯金築(コー・ジンヅゥー)さん、高雄の陳龍雄(チェン・ロンシォン)さんなどは、実際に分別作業を手伝う中で、ボランティアがペットボトルのリングや蓋を取る際にハサミで怪我するのを見て、期せずして同時に補助器具を設計した。

蔡直さんは更に「昇降袋干し機」を開発した。電動式になっており、ビニール袋を一枚ずつ何層にも吊し、ボタンを押せば自動で上下する。「電動ドラム式干し機」はビニール袋を自然乾燥させると同時に、ビニール袋が風であちこちに飛ばされるのを防ぐ。

これらの機器の発明によって作業上の問題はずいぶん解決された。エコセンターには一定の作業秩序があるが、お年寄りの体の負担を軽減するには、なお改善の余地があった。

設計師の魏汎秦さん(中)が木製作業台をボランティアに試してもらった。それは折りたたみテーブルのように広げて、既存の分別カゴの上に置ける。更にはさみ等の工具が入る穴もある。両側の小さな木の板には、電子部品など、これから分解する資源ごみを置くことができる。

そこで慈済では二○二○年末に「5% Design Actionソーシャルデザインプラットフォーム」と協力して、「立ち上がれ!資源回収所イノベーションデザインアクション」共創ワークショップを開催し、設計者とエコセンターのボランティアが一緒に「どうすればエコセンターはもっとよくなるか」について話し合った。そして、まず台北市の木柵環境教育センター、新北市の板橋忠孝エコセンター、三重環境教育センターで試験的に改善に取り組むことにした。

各設計チームは企画やアイディアを出して、二○二一年八月の「立ち上がれ!エコセンター2・0デザインスタートアップミーティング」の後、各リサイクルセンターを訪れて、参与による観察やフィールドワーク、インタビュー等を開始した。彼らは長い時間をかけて交流と理解を深め、ボランティアたちのニーズをもとにデザインの草案や試作品を作成した。そして、ボランティアの意見をもとに、さらにデザインを改良していった。このような手順を重ね、意見のすり合わせを繰り返すことで、ボランティアにとって真に使いやすいデザインを完成させていったのである。

曽群貿さんは実際に分別作業に加わってボランティアの視点を理解し、作業手順を熟知していった。多くの小さな改善が二世代間のぶつかり合いの中で生まれた。(写真提供・曽群貿)

介護いらず 一生現役で

政府は長期介護2・0政策を積極的に推進し、デイケアセンターや地域健康促進センターを各地に設置している一方、資源回収所で生きがいを見出している高齢者たちがいる。多くのボランティアは、「私たちは介護いらず!お迎えが来るまで、世のため地球のために頑張ります!」と胸を張る。

台湾全土に七千余りあるリサイクルステーションは、スペース、規模、機能、賃貸方式といった条件が異なり、広さも数坪から百坪まで様々である。慈済園区内に設置された広々したセンターもあれば、道端の軒下のスペースやプレハブ、コンテナハウス、高架下で運営しているセンターもある。時間や空間の「縁」によって、各地のセンターはそれぞれ違う様相を持っている。しかし、それらは全て、地域の資源回収のよき隣人であり、同時に高齢者の「介護予防センター」でもある。

環境保全ボランティアは地球を守っている。慈済も彼らの健康を守りたいと考えている。若くて有望な設計者たちを招いて、リサイクルステーションをより親しみやすい環境教育の拠点に変え、引き続き「社会の役に立ちたい」というボランティアたちの願いをかなえたいものだ。

(慈済月刊六七〇期より)

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