常に準備を怠らない慈善援助─世界のコロナ禍がリバウンド

二カ月余りコロナ禍警戒レベル3が続いたが、台湾はようやく市中感染のリスクがやや下がりを見せてきた。ところが、変異株は既に海外で全世界を席巻している。ワクチンの保護力には限りがあり、医療体制が崩壊に瀕する状況が各国で現われている。感染拡大を抑え込むのは難しく、慈済は支援活動に気を緩めていない。

新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)が全世界に蔓延し、去年七月だけで八百万人が新規感染した。それが「制御不能」というなら、今年の七月は「失速」である。新規感染者数は千五百万人の大台を突破し、死者二十六万人を超えた。八月に入り、タイ、マレーシア、日本、韓国で一日の新規感染者数が史上最高を記録した。

今回の失速の要因は、強い伝染力を持ち、ウイルス量が多いデルタ変異株の出現である。新型コロナウイルスが全世界に広がったこの一年半の間に、いくつかのワクチンが世に出て接種され、ようやくコロナ禍が落ち着いてところへ、変異株が出現して、コロナ禍が再び厳しさを増した。特に、デルタ株が迅速に百以上の国に蔓延して主流になってしまったのだ。世界保健機関(WHO)は、コロナ禍が「非常に危険な時期」に突入していることを全世界に警告した。

たとえ、二回ワクチンを接種し、十四日間以上経っている人でも、デルタ株には感染する。重症にはならないが、ウイルスの保有量はワクチン接種をしていない感染者と同じように多く、感染力を持っている。それだけでなく、若者の感染状況が年長者より勝っているが、往々にしてこの人たちは無症状で、活動が旺盛なため、あちこちに出かけて、知らない間にウイルスを拡散してしまうのだ。

マレーシアのクアラルンプール静思堂で新型コロナウイルスワクチンの接種を終えた女性。慈済は初めて、この国の新型コロナウイルスワクチンセンタープロジェクト(PICK)に参加したNGOである。皆でワクチン接種率を上げよう。(撮影・文偉光)

アジアがこの一波の感染ホットゾーンになっており、インドネシアでは全国に蔓延し、フィリピンのマニラはロックダウンをして医療システムの作動を確保している。マレーシアは五月に爆発的な第三波のコロナ禍が訪れ、東南アジアで一人当たりの平均感染率が最も高い国の一つになった。ロックダウンを実施した後も、毎日一万人以上が新規感染し、重症患者病床の使用率が飽和状態に近づいている。

どの国も同じで、感染者数が急増することで病床と呼吸器、酸素が不足し、医療体制が逼迫して、崩壊の危機に瀕するようになる。入院できない患者は病院の外や家で苦しみながら、貴重な空きベッドや一口吸うのも贅沢品となった酸素を待ち続けるしかないのだ。

気を緩めない防疫 途切れることのないケア

台湾本土のコロナ禍は七月になって明るい兆しが見えてきた。幾つかの市中感染経路が断たれ、七月二十七日に台湾全土の警戒レベルを3から2に下げたが、部分的に厳格な措置を保留した。外出時にはマスクを着用し続け、ソーシャルディスタンスを保つなど、防疫に気を緩めていない。

域内感染が爆発的に起きて以来、慈済基金会の防疫貧困支援は、大きく分けて四つの方向に向けて進められた。医療防疫物資の寄贈、病による貧困支援、ワクチン接種会場の支援、子供の安心修学計画などである。コロナ禍の緩和につれ、医療の受け入れ態勢も徐々に整い、防疫物資の寄贈が一段落した後、コロナ禍による貧困世帯への支援と安心修学計画に向けて取り込む方向に転換した。

夏休みに入り、慈済と台湾全土十五の県と市が連携した、「弱者家庭の児童への夏季栄養支援プロジェクト」は、警戒レベル3を守って、安心生活ボックスの梱包作業を台湾全土の慈済職員たちが中心となって行ったが、一部の県や市のトップクラスの人も協力してくれた。そして、健康野菜果物ボックスは地方政府が地域の小農家や農協などと共同で行い、一部の県や市はそれぞれの事情に合わせて本体の代わりに引換券を配り、慈善好意にもっと弾力を持たせるなど配慮した。支援を受けた家庭もその思いやりを感じ取った。

この他、学童ケアの「登校はしないが、学び続ける」中で、慈済は「学生サポーターのオンライン学習伴走」プロジェクトを打ち出した。アルバイトしながら学業を続ける方法で生活に困っている大学生をケアする一方、子供たちが学習を疎かにしないよう、オンライン学習に付き添うことで都会と田舎のデジタル教育の格差を縮めている。また、慈済は華碩(ASUS)文教基金会と連携して五千台のノートパソコンを順次各自治体に寄贈し、偏境に住む弱者家庭の子供たちもデジタルツールを使ってリモート学習についていけるようにしている。

ネパールは4月からデルタ株が広がり、医療体系でコロナ禍を防ぐことができなくなってロックダウンしたが、貧困世帯の生活は苦しくなった。慈済はネパールを防疫援助の重点国の1つに入れ、大量の医療設備や防疫物資を寄贈すると共に、現地の慈善組織「ネパールの足跡(Track Nepal))」や「天華仏学会(Byoma Kusuma Buddhadharma Sangha)」と連携して、ロックダウンが解除された6月と7月に、首都カトマンズ及び辺境の山間部で5千世帯に食糧パックを配付した。

海外支援では、インドと周辺七カ国の支援プロジェクトが最終段階に入り、酸素濃縮機、呼吸器、酸素タンク、救急車など、主要な医療設備が逐次到着している。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ミャンマーなどコロナ禍が厳しい国では、慈済ボランティアが各政府の防疫規制を守りながら、医療物資の寄贈や生活困窮配付などの活動を展開している。中でもマレーシアとインドネシアでは医療機器を医療機関に寄贈することを優先し、その次に弱者層へ食糧による生活困窮支援を行うことで、命を救うことに尽力している。

(慈済月刊六五八期より)

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