善行を習慣づける

「知」と「識」に加えて「行」が必要で、絶えずより強く善の意識を持ち、善の道を行くことを習慣づけることが大切です。

無常を認識し、真理を追求する

一月四日、アメリカの慈済人と対話した時、上人は、コロナ禍で慈済の慈善活動が前代未聞の困難に直面しており、人と人の間の情も試練を受けている、と嘆きました。しかし、各国の慈済人が勇敢に責務を担い、「覚有情」の菩薩の大愛で以って、この世の苦難を取り除くために奔走し、奉仕してくれていることに感謝しました。

仏典には、濁世末法の時、この世に大小の三災が起きると書かれており、その小三災とは刀兵災、疫病災、飢饉災を意味しています。疫病が蔓延している間、食糧危機が発生し、小三災の一つである「飢饉」が起きます。また、資源不足による奪い合いで戦争が勃発します。上人によれば、三災が小三災であっても、人類に重大な生存リスクをもたらすため、誰もが警戒心を持ち、誠意で以って自らを戒めるべきです。

「人として生まれて来たからには、人生を全うしなければなりません。生きて行くには平穏を求めます。平穏を求めるなら、目覚めるべきであり、財や名利、地位に溺れてはいけません。人生は無常な故、道理を弁え、この世の真理を追求し、清らかな本性に立ち返って永劫の慧命を永らえるべきです」。

上人はこう言いました、「衆生は、生と死を分ける形で六道を輪廻しており、絶えず生、老、病、死の中を巡っています。次の生に持って行けるのは『業』だけです。衆生は皆、自分で長い間に造って来た因縁の業を携えて六道を巡るのです。善業を造ったのであれば、霊は善に向かい、心田に善の種が深く植え付けられ、来世では善の道を歩み、引き続き善の種を蒔いて、福田を耕すのです。もし、茫然として悟りが開けず、道理が理解できなければ、心田には雑草が生え放題になり、たとえ心に元々悟りを開く善の種があっても、芽を出して成長するのは難しいでしょう」。

それで私はいつも、「知」と「識」に加えて「行」がなければならない、と教えているのです。道理を理解して、善の意識を持ち、体で実践して、絶えず善の意識をより強く持って内に修行するのです。それは丁度、儒家が説いた「明明徳」に言われているように、道徳の源ははっきりしており、それは即ち仏が教えている清らかな本性なのです。

「孔子は人の道理、即ち礼儀正しく、道徳を守るよう教えています。しかし、仏はそれを深く分析して、過去、現在、未来という三世には因果の概念が伴うことを教えてくれました。聖人の智慧は天文、地理、人間、心理に通じています」。上人は皆に、心して道理を体得すると共に実践するよう教えています。

慈済とチベット仏教の団体「八蚌智慧林」が協力して、1月にブッダが悟りを開いたブッダガヤで2000世帯に対して配付活動を行った。殆どの家庭は人生で、これほど大量の物資を受け取ったことがない。(写真の提供・慈済花蓮本部)

無私の大愛・協力に距離はない

一月五日、宗教処の主任たちと国連特設チームのスタッフがインドでの配付活動に関して報告しました。二〇二〇年、十六の省で十四万世帯余りの延べ七十万人を支援しました。慈善協力のパートナーは、普明(プーミン)師兄(スーシオン)が紹介したABM仏教団体とチベット仏教寺院及びカミロ修道会などです。

上人がこう開示しました、「インドでの慈善支援は私の心願の一つです。というのも、インドは仏教の発祥地であるため、慈済に縁ができて、仏の故郷を支援できることに期待を寄せているからです。普明と彼の母親は台湾に来て帰依しており、慈済人として本部は常に連絡を取り合って彼らの行動を支持することで、彼らに帰属意識を持たせ、慈済人が持つべき志業に対する使命感を持ってもらっています」。

台湾とインドは距離的に遠いとは言えませんが、インドには慈済の拠点はなく、人や事、物の縁が成就していないために、遠く感じられるのです。上人は、その距離感を縮め、人・物・事が緊密になる縁ができることを期待しています。現地のことを現地の慈済人にやってもらえれば、より確かで完全なものになるのです。

宗教同士、距離を置かないようにするだけでなく、力を合わせて大衆を支援しなければなりません。慈済がインドで行った慈善活動のように、仏教団体と手を携えるだけでなく、カトリック教の団体とも緊密に協力し合い、互いの力を借りて行えば、最も支援を必要としている貧しい人たちを救うことができるのです。「皆が同じ使命を持ち、無私の大愛と力、物資を結集して共に事を成就させているため、お互いに感謝し合うべきです。大愛を広めれば、結集する大愛は途切れのないものになります。即ち、長く続く愛は過去から現在、未来へと間断のないものです」。

インドのカースト制度は無くすのが難しく、多くの貧困者は生活環境を改善することが難しいのです。智慧のある超然とした宗教団体や人道組織が、既成概念を打ち破って平等に大愛を施す必要があります。上人は、縁を大切にしながら、それぞれの団体とより緊密に協力し、一緒に苦難を救う力を発揮するよう促しています。


(慈済月刊六五二期より)

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