人類共通の目覚め

(絵・林淑女)

世の人は共通して目覚めるべきです。疫病が出てきた原因を考え、人として本来の善良な愛を呼び覚ましてこそ、自らを救う事ができるのです。

私たちが共に生活している大空の下では、同じ時刻に異なる国々で、どれだけ多くの人々が災害に遭って苦しみ、どれだけ多くの菩薩が苦難の中に分け入って奉仕し、困難から解き放とうとしているか。ですから私たちは常に感謝の気持ちを持って、平安に感謝すると同時に、この世に幸せをもたらしている人たちにも感謝しなければなりません。

毎日安穏に精進して法を聴くことができるのは、とても幸せなことです。幸福の中に浸っている人は、この世の無常を忘れず、過ぎ去る分秒を大切にして、自分の人生を重く見て、他人を助ける人になることです。私たちは幸せなことに慈済大道を歩んでいます。それぞれの国には各々異なる暮らし方はありますが、世界の慈済人は同じ理念の下に、発心立願して愛を奉仕しています。孤独と病苦にある人たちを慰撫して尚一層、愛の心を啓発しています。

今回の新型コロナウイルス感染症は商工業に影響を与え、困窮者はさらに生活に窮し、失業者は増え、各国の慈済ボランティアは困っている人たちに関心を寄せ、防疫物資を贈っています。インドネシアのボランティアは、すでに四十三万世帯に食糧を支援しており、今年の二月末までに、現地の実業家たちは慈済と共同で愛のエネルギーを結集し、百万世帯あまりを支援しました。

裕福な人は新春の祝い事を慈善活動に変え、生活に困窮する人への奉仕に変えたのは、なんと智慧のある行動でしょう。自ら実践して体得し、華々しい世界を出て薄汚い暗いところに向かい、天国の楽しさも地獄の苦しみも理解した上で、更に大きなエネルギーを発揮しているのです。その人たちは富者の中の富者であり、福と慧の双方を修めています。

アフリカの現地ボランティアは法を聞いて精進しています。彼らは中国語や台湾語が分らず、何回かの通訳を介する必要があるのですが、私の心を良く理解し、慈済人なら慈済の志業を行うこと、即ち慈悲済世をするのだと分かっているのです。彼らの生活は実に苦難に満ちていますが、心はとても豊かで、たとえ家には僅かな食糧しか残っていなくても、それらを全部人助けに使うことができるのです。克己して貧しい人を助け、自分の困難を乗り越えて自分よりも困難にある人を助けているのです。

貧しい人の人生を根本から変えるための手伝いは、必ずしも裕福な人にだけできるのではなく、誰でもできるのです。善行や奉仕を習慣づければ、自然に身を以て実践するようになります。皆が方向を同じくして同時に行動に移せば、如何に大変な奉仕であっても、楽しく感じられるものです。なぜならその善行に自分も力を出しているからです。善行は自分たちだけの力ではできず、私、あなた、彼の人の力があるから、達成できるのです。

人心を善に向かわせる啓発は、愛の教育によります。様々な方法を用いて善行へと導いていきます。長期にわたって経済的支援を続け、お年寄りに拠り所を与え、孤児たちを養育し、互いに世話し合えば、社会は自然と穏やかになり、繁栄し、発達していきます。人々が両手を差し伸べて福を造り、善の気風を形成すれば、「幸運」がもたらされ、尽きない愛と力によって、幸福も無量となるでしょう。

現代は科学技術が発達し、私たちの視野を広げていますが、世の中の至る所に危機が潜んでいることを知り、警戒しなければなりません。毎日のように地球の気候不順による災害を耳にしますが、原因を追求すれば、人為的な森林や熱帯雨林の伐採によるもので、動物の生息地域や生態に悪影響を与えており、山を掘って資源を採取したりすることに原因があります。また、森林を開墾して牧場にして家畜を飼育することも、全ては人の口の欲のためなのです。

人類の欲念が森林を呑み込み、地脈を破壊しています。土壌保持が困難なため、大雨が降ると山が崩れて川が氾濫し、大地に洪水をもたらします。山々が涙を流すと、この世に悲しいことが起こります。世界七十八億の人口に対してその十数倍の家畜を飼育して食料とするため、大量の水資源と飼料を消耗し、家畜の呼吸と排泄物によって大量の温室効果ガスが産出されています。家畜は成長するのに何カ月もかかりますが、屠殺して調理し、食卓にのせて享受するのは三十分余りに過ぎません。

「養家活口(家族を養う)」と言われますが、懸命に働くのは家族にひもじい思いをさせないためです。その実、五穀だけでも栄養は充分であり、それ以上、味覚や口の欲を追求する必要はありません。節度のない欲による殺生は、良知を惑わせます。菜食は一に生物を護り、二に食糧の節約にもなります。世界八億以上の人が飢餓に陥っている中で、もしも皆が食事を簡単にして「腹八分目、二分を人助けに」すれば、七十億の人が八億の人を助けるのに充分だと言えます。

大地が健康であってこそ、人類は平安でいられます。肉食の人が少なくなれば家畜の飼育数も少なくなり、地球の気候が正常に回復して人々の健康が保証されるのです。

天地の気候は急を告げ、災害はますます頻繁に発生し、被害もひどくなっています。「私が無事ならそれでいい」。自分には関係ないと思ってはなりません。今回のコロナウイルス感染症は、人類に警鐘を鳴らしており、教育なのです。世の人々が一緒に目覚め、如何なる因縁によって災難が引き起こされたかを思考し、人性の善良な愛を失われないようにするのが、自分を救う道なのです。皆さんの精進を願っております。


(慈済月刊六五三期より)

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