編集者の言葉
一月中旬、桃園国際空港の近くにある衛生福利部(厚生労働省に相当)立桃園病院で、新型コロナウイルスのクラスターが発生した。市中に緊張が走ったが、幸いにも二月上旬には警戒体制が解かれた。緊急対策実施期間中、多くの人が医療スタッフを応援し、持ち場を守る勇者たちを支持したことで、彼らが孤独を感じることなく、最前線を守るためのより大きな力を得ることができた。
これは貴い善の循環であるが、世間ではよく見かけることである。例えば、今月号の主題報道の「エコ福祉用具プラットフォーム」に、社会的・人的資源を活用して、福祉用具を必要とする人たちの願いを叶える手伝いをしていることが書かれてある。慈済ボランティアは、長期的に慈善ケアを行っているが、福祉用具の使用期間が数日から数週間という短期間の場合もあれば、数年から終身使うという長期ケースもある上、福祉用具はその種類と価格が様々であり、家計の負担となるケースも少なくないことに気づいた。
そこで、ボランティアは工夫を凝らし、リサイクルステーションで回収した福祉用具を修理したり手入れしてから、それらを必要としている人たちに贈ることを思いついた。そして、無料で自宅まで送り届け、使用後は再び回収することまでしている。一つのチームで始まったこの取り組みは、十数年を経て台湾全土に広がり、現在すでに十三の拠点で展開されている。今年一月までに、延べ一万一千八百点を超える福祉用具が提供された。
高齢化社会における介護需要の下で、福祉用具はますます重要になっている。台湾は福祉用具の研究開発と製造に十分な能力を持っており、車椅子などの移動用具の輸出額が、二〇一四年には世界第二位にランクされた。政府は多くの資源を投入してきたが、補助金はこれまでずっと地方自治体が給付してきたことから、都市部と農村部の経済格差により補助金の分配が不均等になることは避けられない。補助金は評価に合わせる必要があり、また使用に関する情報を提供することで、必要な人が適切な福祉用具を購入することができるようになる。
過去には、福祉用具と言えば、人々は疾病を連想することが多く、中古またはリサイクルされた福祉用具は殆ど受け入れられなかった。台湾でも、手入れや消毒、修理の費用がかかるため、賃貸サービスを提供している業者はごく僅かだった。従って、評価、情報、リサイクルの仕組みが整備されていなかった間は廃棄される福祉用具も多くあった。
近年来、大衆はリサイクルされて再利用する福祉用具を徐々に受け入れ始めている。しかも自治体の管轄下にある福祉用具センターが、積極的に中古福祉用具を提供するパイプ役を務めているが、未だ補助対象から外れた貧困者がおり、そのほとんどが民間の慈善組織の支援に頼っている。
同じく「高齢化社会」に突入したイスラエルの非営利組織ヤドサラが、一九七六年に始めた運営方式は参考に値する。福祉用具を無料で貸し出し、アドバイスサービスを提供すると共に、退院間近の患者の一時的なニーズに対して、「housepital」(家庭での病院のようなケア)も始めた。それは、入院する必要がないと判断された患者に福祉用具一式を提供し、自宅まで届けて静養をサポートするものである。それにより、院内感染のリスクを抑え、医療支出も節約できるのである。
イスラエルでは平均して二つに一つの家庭が恩恵を受けており、多くの人が感謝すると同時にボランティアとして投入している。「慈済エコ福祉用具プラットフォーム」を立ち上げた慈済ボランティアは、それらを必要としている人々の笑顔に迎えられ、持続して投入する使命感を見出している。新年が始まり、この豊かな善の循環が絶えないことを祈るばかりである。
(慈済月刊六五二期より)