慈悲を力に変えよう

編集者の言葉

春節前の二月六日、衛生福利部(以下衛福部)は医学センター評価結果を公表し、台北慈済病院が準医学センターから正式に医学センターに昇格した。台北慈済病院の趙有誠(ジャオ・ヨウチョン)院長は、病院が一丸となって、より充実した医療を提供して患者さんに向き合い、恵まれない人々や独居高齢者などのケアに取り組んでいくことを嘱望した。

慈済は台湾全土で八病院を運営しているが、都市部か地方かを問わず、また医療事業による損益にもとらわれず、非営利の財団法人医療機構として、證厳法師が一九八○年代に病院を創設した時の初心を受け継ぎ、病気で苦しんでいる人たちに対する抜苦与楽を目的とする宗旨を貫き通している。

春節の間、花蓮の静思精舎は新年の雰囲気に満ち、国内外からのボランティアが、法師や精舎の常住師父たちと共に新年を祝うために滞在した。また、除夕(春節の前日)の前の晩から旧正月九日までは、世界各地のボランティアとも毎日オンラインで新年の挨拶を交わした。生中継で、カンボジアからはゴミ山の村民や子どもたちの変化、アフリカ・モザンビークの大愛村からは村民の感謝の言葉、ジンバブエからは井戸掘りが公衆衛生に与えた影響など、さまざまな慈善活動の映像が寄せられ、実りある成果を上げたボランティアたちは、晴れやかな表情を見せていた。

パキスタン人ボランティアのアモス・ダニエルさんは、三十五カ国から逃れて来た難民を支援した慈済タイ支部の施療センターに対し、感謝の意を表した。文化の違いと医療資源が限られている状況の中では、差し迫った医療を受けられないことはよくあるが、あらゆる困難を乗り越えて困っている人々の苦しみを和らげてくれる慈済ボランティアに、感謝の気持ちが芽生えたのだ。患者一人ひとりの笑顔、支援を受けた全ての家庭が抱いた感動、そして医療従事者のたゆまぬ努力、それら全てによって慈悲の心は人を変える力へと変わっていったのである。「愛が集まれば、たとえ小さな善行でも、誰かの人生に大きな影響を与えることができることを、施療を受けた人々が証明しています」。

今月号の特別報道では、「慈悲 VS.テクノロジー」をテーマに、今回で七回目となる「全国慈悲のテクノロジー・イノベーションコンテスト」に焦点を当てている。それは、環境保護を念頭に置き、創意、工夫を凝らしたデザインを慈善支援や長期医療介護に活用することを、若い学生に奨励するものである。

長年にわたり、慈済は様々な分野の専門家と協力して、テクノロジーを医療と慈善、更には宗教の弘法に応用してきた。法師は「必ずしも奥深くて複雑な科学の研究開発ばかりが必要ではないのです。ごくありふれたものですが、人々にとって非常に役立つものもあります。このような研究開発こそが真の学問です」と強調した。

科学が進歩をもたらし、AI(人工知能)の発展が人々の生活を変えつつあるが、人文的な思いやりと統合されてこそ、テクノロジーは価値があるのだ。慈悲が力に変わる時、それらも環境に優しく、人々に利益をもたらす持続可能な解決策になるだろう。

(慈済月刊六八八期より)

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