なぜ医者になりたいのか?
医学部在学中、私も同じような問いを投げかけられた。医者になって三十年余り経った今、私の答えは、その頃とは変わった。
息子が高校三年生の時のことだ。大学入学共通テストが終わって、各学校の医学部の二次試験である面接の準備をしていた。四月中ずっと面接の練習をしていた彼が、私に幾つかの問いを投げかけた。それらは、医者を生業としている私にとって、改めて考えさせられるものだった。
質問一、「お父さんは、どうして医者になりたいと思ったの?」。
これは、面接で聞かれるかもしれない。私はしばらく考えてから答えた。しかし、それは三十年余り前の私の答えとは、大きく異なるものだった。
「患者に向き合った時、そこに見えるのは病だけではなく、一人の『人間』なんだよ」と私は答えた。その人は病気が治り、元気になって喜び、そして、彼の家族は中くらいか大きな喜びに浸るのである。家族以外にも、彼の二等親、三等親、友人や親戚、皆が嬉しくなると私は信じている。
一人の人間を助けているとしか見えないかもしれないが、実はその人を助けるだけでなく、同時にその人の家族をも助けることになり、ひいては彼の友人にまで影響が及ぶのである。その類の喜びと感染力は、直ちに感じ取ることができる。慈済ボランティアが人助けをすることと同じなのである。
質問二、「お父さんは、どうして宜蘭に家があるのに、嘉義を職場にしたの?その後また、北部に行って勉強したのに、また、花蓮慈済大学で教鞭を取るようになったのはなぜ?忙しく走り回って、時には日帰りすることもあるのは、何のためなの?」
私は息子にこう答えた。
「医者は一生の中で、数百人、数千人しか助けられないかもしれないが、私はもっと多くの人を助けたいと考えたからだよ。母校の大学院で勉強してから、慈済大学で教鞭を取れば、何百、何千人ではなく、何万、何十万人、ひいては次の世代、そのまた次の代までも助けられるかもしれないと思ったからだ」。
そして、私たち慈済ボランティアも同じように、今助けているのは目の前の人だが、このような良い心がけと良い考えが次の世代にも影響を与え、彼らも君と一緒に善行をして、次のまた次まで影響していくかもしれないのだ。このように功徳を積むことができたら、どんなに素晴らしいだろう。だから、ここ数年こんなにも苦労してきたのだ。
息子は聴き終わるとこう言った。
「お父さん、本当に大変だね。体に気をつけてね!」。
子供から関心を寄せられ、健康まで気遣ってくれた。今年は大腸の内視鏡検査を受け、二つのポリープが見つかったが、早目に処置したので、病変の可能性は避けられた。この警告は、自分の健康に対してだけでなく、患者への衛生教育にも役立っている。
私たち耳鼻咽喉科医は五官を見るが、口から入る食べ物は食道、胃、小腸、大腸を経過して肛門から排出される。大腸と耳鼻咽喉科は関係があるだろうか?勿論ある。病は口から入るのだから。台湾癌基金会の調査によると、今の若者は、大腸の健康に対して認知が非常に低い上に、飲食と生活習慣が乱れている人が多い。大腸癌の罹患率はここ数年急速に上昇しているが、このことが原因の一つとなっている。
実は、危險因子は遺伝の外に、主に飲食の内容にある。どのように予防すればよいか?それには菜食することである。豊富な食物纖維が含まれているので、排便を助けるからだ。もし代謝性の疾患である場合は、しっかりコントロールする必要がある。生活のリズムに注意して睡眠の質を改善し、排便が習慣になっているかを見極める必要がある。体調が悪い時は、すぐ医者に見てもらい、腸の健康を維持しよう。
(二〇二三年五月十八日ボランティア朝会の話から抜粋)
(慈済月刊六八一期より)