腸の状態を良くするには、菜食が助けてくれる

野菜や穀物中の食物繊維は腸内微生物の重要な食べ物、善玉菌を増やすと腸が健康になる。

娘の睿佳(ルィジア)と歩いていると、偶然に小児科のお医者さんに出会った。お医者さんは嬉しそうに「しばらく見ないうちに大きくなりましたね!」と言った。

私は「三年もの間、私たちが病院に行かなかったのは、睿佳がとても元気で何事もなかったからで、とても感謝しています」と答えた。するとお医者さんは突然かがんで、睿佳に「お母さんに感謝するのですよ、あなたに一番良いものを全部くれたのだから」と言葉をかけた。それからお互いに近況を話し合って別れ、睿佳とバスに乗った。

睿佳は霧に包まれたように、「ママはは私に何をくれたの?」と尋ねたので、私は「お医者さんが言っていたのは、ママがどうしても母乳であなたを育てると決めたことでしょうね」と答えた。当時私はいろいろ尋ねて母乳を奨励する小児科医を探していた。そのうちに睿佳を定期検査に連れていったことが縁となり、この優しくて優雅で品のあるお医者さんに会うことができたのだ。

当時、お医者さんが教えてくれた、母乳に含まれている微生物の事を睿佳に話した。人間の体内にいる微生物には細菌やウイルス、黴菌も含まれていて、その数は百兆以上にも上り、大部分が私たちの腸内に住んでいる。すると睿佳は、細菌はどうやって私たちの体内に入ってくるの?普段飲んでいるヨーグルトの細菌は、なぜ胃酸に殺されないの?と面白い質問をしてきた。

私はプロバイオティクスに関する衛生教育をしたことがあるが、今までこんな質問をした大人に出会ったことはない。一般の人が比較的関心を寄せているのは、プロバイオティクスはどのくらい食べればいいのか、食前または食後が良いのか、食べると太るのか、などであった。私は娘に基本的な知識をゆっくり話して聞かせることにした。 

腸内細菌は母体の贈り物

昔の知識では、細菌は病気の原因なので、抗生物などの薬を飲んでそれを殺していた。しかし、現在の私たちは、細菌とはその実、体の一部分なのだということを知っている。

子育てで、「子供は一人一人違う」という話は親にとってなじみ深く、人それぞれの微生物叢もまた唯一無二なのである。

数年前、ロブ・ナイト(Rob Knight)教授が非営利組織TED大会のスピーチで、「微生物はどのようにして私たちを作っているのか」(How our microbes make us who we are)というのがあった。その中で、私が最も深く印象に残っているのは、人体は約十兆のヒト細胞から成り立っているが、宿っている微生物細胞の数は、私たちが想像しているよりもはるかに多く、百兆もある、という話だった。微生物細胞が人体細胞の十倍だというのなら、一体誰が「主」で誰が「しもべ」なのだろうかと考えずにはいられなかった。 
   
ロブ・ナイト教授もまた、こう言っている。体の部位により微生物は異なり、人の口と腸内の微生物を比べても大きく異なっていて、その違いは、珊瑚礁と草原以上に大きな違いである。この演説はとても生き生きとしていた。教授は後にブレンダン・ビューラー(Brendan Buhler)と科学普及のために『微生物による巨大インパクト』という本を共著し、そこから私は多くの知識を得た。

これら微生物は、どのようにして私たちの体内に入り込んで私たちと共存しているのだろうか。

私たちの腸内微生物叢は、最初は母体からもたらされる。自然分娩或いは帝王切開という形が新生児の腸内に異なった種類の微生物をもたらす。帝王切開で生まれた子の腸内細菌構成種が母親の皮膚の常在菌叢に似ている一方、自然分娩で生まれた子には母親の産道にある乳酸菌などがもたらされていることがわかっている。次いで母乳を通してその中にある特殊な微生物が腸内に住み着いて成長する。

腸内菌で人間に有益なものとしてよく知られているのが、ラクトバチルス菌やビフィズス菌だが、人体がこれら微生物に生存環境を与え、これらも人体の健康を維持してくれているのである。また、これら人体に有益な腸内菌は害菌を取り除き、害菌の生存空間を無くすことで、腸内微生物の均衡の取れた健康的な生存環境を維持しているのである。

腸内に定着している原生微生物とは異なり、プロバイオティクス製品、発酵乳、ヨーグルト、納豆、漬物などの発酵食品を介して体内に入る微生物は、ただの通行人に過ぎず、定着することはできない。なぜなら腸内原生微生物の生態は、容易に取って代わることができないからである。

とはいえ腸内微生物は決まっていて不変、というわけではなく、年齢、環境、飲食内容、抗生物質の服用、ストレス、運動習慣、睡眠などの要素によって変わる。一旦この状態が破壊されて均衡を失うと、人体は自ずと病の危機に晒される。

菌を食べるよりも育てよう

腸内微生物は幾つかのビタミン、例えばビタミンKを造っている。澱粉や食物繊維などの複合炭水化合物は消化しにくいため、大腸内の微生物が分解を助け、食物繊維もまた腸内菌の最良の食物となっている。

「人間の消化器系には、果物や野菜、または全粒穀物など食物繊維を分解する酵素がないの。これら食物繊維が大腸に届くと腸内微生物は両手を広げて歓迎するのよ」。ここまで聞いていた睿佳は、私に面白い質問をした。「もし私たちが野菜や果物を食べなかったら、腸内細菌は何を食べるの?」私は身の毛もよだつような事実を教えた、「あなたを『食べる』のよ」。

私はペンと紙を出して、腸を描いて説明した。「大腸の一番外側は粘膜層で、粘液は腸の上皮細胞から分泌されるけど、外からの病原菌の進入を防ぐ作用があるの。もし食事の中の食物繊維が極端に少ないと、腸内微生物はお腹いっぱいにならないから粘膜に向かい、粘液をどんどん食べてしまうのよ。粘液を造る速度が消耗する速度よりも遅ければ、粘液は自然に少なくなってしまうの。粘液層は腸の防御最前線で、それが弱くなると病原菌が群れをなして上皮細胞に侵入するから、免疫系統が炎症という形で警鐘を鳴らすのよ」。

異なる微生物はそれぞれ異なる食物繊維を食べる。私たちはビフィズス菌健康食品などで善玉菌を摂取するだけでなく、色々な植物性の食べ物を摂ることで、腸内の健康を保つようにする必要がある。

母親は生命の始まりの瞬間から私たちに最高の贈り物をしている。毎日充分な野菜と果物など繊維のある食べ物を摂取すれば、腸内の生態環境に豊かで均衡の取れた微生物群を保つことができる。腸内の助っ人と仲良く共存し、健康を維持していこう。


(慈済月刊六五三期より)

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