食習慣における智慧

編集者の言葉

台湾全土で新型コロナウィルスの感染が拡大し、警戒レベル3になっていた期間、中央感染症指揮センターの統計によると、国内のコロナウイルスによる死亡率は世界平均よりも高く、六十歳以上が多数を占め、その多くは慢性疾患の病歴があった。

一般的に、栄養バランスを欠いた飲食が要因となり、壮年期から中年期にかけて、慢性疾患の発症が助長されることが分かっている。

グローバル化の時代に食物は商品化され、スムーズな取引、コストの削減、利益の追求が商業活動の最大の目的になっている。大規模生産は環境に大きな負荷をかけ、食品のファーストフード化や不適切な加工で食の安全に関する問題をもたらしている。栄養バランスが崩れるだけでなく、健康に害をもたらすことさえある。

このような食の危機に対して、今、トレンドワードに「健康な食生活」が上がっており、食品の原産地、内容の種類、調理方法に関して幅広く討論され、出版物やインターネットで話題になっている。

「菜食」は以前からしばしば疑問視されていたが、近年、現代医学が「植物性飲食」を支持するようになった。花蓮慈済病院心臓内科の張懷仁(チャン・ホワイレン)医師によると、虚血性心疾患や脳卒中などの病気の発症年齢は若年化しているそうだ。それらは赤身肉や卵、ミルクの過剰摂取によるもので、代謝の過程で生成される酸化物が血栓を作り易くし、心血管疾患による死亡率を高めている。

食物の選択に関して伝統医学は、食物を知ることに加え、自分の体質も知る必要があると指摘している。漢方医の楊世敏(ヤン・シーミン)医師は、『致中和』という本にこう書いている。同じように食習慣を調整するのだが、欧米の「生食主義」は、細胞の老化を防ぐために、生の野菜と果物を大量に摂取することを提唱している。しかし、日本の「温食主義」は基礎体温を上げて免疫力を高めるため、食品を加熱することを提唱している。

この両者は相対立しているように見えるが、実のところそうではない。欧米の食文化は肉食を主体にしているため、生野菜や果物で体温のバランスをとることができる。それに対して、日本の食事は、冷たいままで加熱する必要のない食べ物を使用するので、「温食主義」で体が冷える体質を補う調理方法だと言える。体は食習慣に伴って徐々にその体質が変わっていく。食べ物を口にした後で体が反応するように、バランスの取れた食材を使った料理こそが、食事で引き起こされる病を避けることができるのである。

今期の主題報道では、高雄の慈済ボランティアが、食材全てが植物ベースの食事に基づく「健康チャレンジ21」活動に呼応して、慈済人医会専門医療チームのチェックの下に、チャレンジする前後の健康診断による数値を比較し、参加者が食事によって健康状態がどのように変化したかを感じてもらうことを報じている。医師と栄養士が食事の組み合わせに関する情報を提供すると共に、参加者の質問に答え、正しい概念の確立を手助けするのが狙いである。

食事は口の欲を満たすだけでない。更に重要なのは、智慧のある選択をして応用することで、食物の栄養が正しく体と心に行きわたり、ウイルスに対する防護力を向上させる点にある。


(慈済月刊六五九期より)

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