水は大いなる生命の源

編集者の言葉

台湾に住む人々にとって、蛇口をひねりさえすれば清浄な水が「自然に」出てくるのは、当たり前のことである。水道料金はというと、十元(約五十円)硬貨一枚で千リットル(重さにすると一トン)の水道水を購入することができる。このようなお手頃の平均価格で使っているのだが、人々は「ありがたさ」を感じているだろうか。

意外にも、世界の二十二億人もの人たちは、衛生的な飲料用水にアクセスすることができないでいる。中でも、アフリカ諸国が最も深刻な状況にある。ユネスコは「二〇二四年国連世界水開発報告書」の中で、水資源の不足が深刻な地域では紛争が激化しており、長期的に平和を維持したいと願うならば、資源をめぐる競争や紛争の拡大を避けるために、各国が協力を強化する必要があると警告を発した。

證厳法師は長年にわたって、水を黄金のように大切にしなさい、と言ってきた。「水は大いなる生命の源」であり、水がなければ生き物は生きていけないのだ。世界は今、異常気象によって頻繁に起きる干ばつと洪水という脅威にさらされている。慈済が国際災害支援を行う際も、現地の水不足問題への対応方法を熟考している。

今期の「慈済とSDGsシリーズ」では、SDGs6「安全な水とトイレを世界中に」に焦点を当てている。執筆者の葉子豪(イェ・ヅーハオ)氏は、慈済の人道支援活動における水資源問題へのアプローチとその効果を分析し、SDGs6のターゲットである「二〇三〇年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水への普遍的かつ平等なアクセスを達成する」と「二〇三〇年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成する」について、慈済がどのように努力しているかを説明している。

また、ジンバブエから最新のレポートを持ち帰った大愛テレビ局のシニアプロデューサー許斐莉(シュ・フェイリ)氏に感謝したい。そのレポートから、女性と子供たちが毎日多くの時間を割き、歩いて水汲みをしていることや、その過程でさまざまな危険に直面する可能性があることについて、理解を深めることができた。

同じく、大愛テレビ局の放送記者が持ち帰った慈済の善い話の中には、ドミニカ共和国で学校を支援建設したという感動的な成果や、過去三十年間に亘って貧しい人や病人に施療を提供してきたフィリピンのボランティアの慈悲心と気力の記録などがある。これら第一線での見聞は、時が経ってもその史実の善美を伝えている。

今号では、慈済ソーシャルワーカーの話も紹介した。一般的に彼らの仕事があまり理解されていない中で、慈済の六十年近くにわたる慈善志業において、彼らはその発展に欠かせない存在である。今、台湾で毎月定期的にケアを受けている恵まれない家庭は少なくとも二万世帯余りだが、ケアケースとして立案するかどうかや、その補助方法などについては、長年地域に深く関わってきた訪問ケアボランティアと資格のある慈済ソーシャルワーカーたちとが話し合いを重ね、判定して合意に達した上で実施されているのだ。

この部分の執筆者、周伝斌(ヅォウ・ツゥァンビン)氏は、数カ月間の取材を通じて多数の慈済ソーシャルワーカーたちについて理解を深め、ベテランボランティアにも単独インタビューし、その仕事ぶりと双方の交流体験をプロファイリングしている。志業や職業に打ち込む彼らだが、更にもう一つ、「この社会をより良くしたい」という純粋な思いを持っていると感じたそうだ。これこそ、他者を助ける者の初心である。

(慈済月刊六九五期より)

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