台湾での研究で検証された 菜食の生命に対する有益性

慈済に参加する前から、患者の健康のために、私自身、長年菜食をしていた。今の願いは、菜食促進と科学的研究を続けることである。健康促進の理念を広め、利他し、共善すると共に、自分のためにもなるようにしていきたい。

私の医師としての人生はアメリカに始まったが、心臓の血管が詰まった冠状動脈性心疾患患者の多くは、その病気が繰り返し再発することに気づいた。文献を調べた結果、「菜食」こそが解決の道であることが分かった。患者に食習慣を変えるよう説得するために、私自身が先頭に立って菜食を始めた。その過程で、体への負担が軽減されていくのを感じると共に、毎日の忙しい医療任務にも影響しないことが分かった。そうやって、今に至るまで菜食を続けて、四十年以上になる。

当時、菜食に関する文献は、主にセブンスデー・アドベンチスト教会の健康研究機構によるものだった。アメリカ・カリフォルニア州のロマ・リンダ市では、七十五パーセントの住民が菜食主義者で、スーパーやコンビニで売られていたハンバーグとホットドッグは全て植物由来のものだった。地元住民は、自分たちの食習慣で大衆に影響を与え、菜食に優しい都市を作り上げたのである。そして、世界最大のベジタリアン研究データベースもそこにある。

一九九五年、私は證厳法師に感化されて、台湾に戻って花蓮慈済病院の副院長になった。臨床の仕事がどんなに忙しくても、菜食に関する研究を止めることはなかった。二〇〇〇年、大林慈済病院開業時の院長に就任し、チームを統率して菜食に関した研究を続けた他、菜食者と肉食者の疾病関連性を比較し、台湾における菜食の研究実証結果を蓄積するために、慈済のベジタリアン世代データベースを立ち上げた。

世界保健機関は、「健康」という概念を新たにこう定義している。「単に個々人の疾病や虚弱体質を改善するだけでなく、身体的、精神的、社会的適応が完全な状態になって、社会でその人の良能が発揮できていることを指す」。『黄帝内経』に、「三流の医師は病を治療し、二流の医師は起きつつある病を治療し、一流の医師は未病の病を治療する」と書かれている。その中の「一流の医師は未病の病を治療する」とは、プラス思考の予防医学であり、即ち「健康促進」のことである。私たちは数年の科学的な研究により、菜食が正に健康促進における良い方法であることを検証した。

ここ数年、コロナ禍によって世界のリズムは乱れたが、菜食者の重症化率が低いことが研究で確認されており、台北慈済病院のチームによる実証論文も発表されている。

慈済医療法人人文放送室の皆さんには、時間と労力を費やして本書の編集に協力してくださり、心から感謝を申し上げる。難しい研究論文の成果をより多くの人に理解してもらうと同時に、現段階での慈済の菜食研究成果も紹介されている。

肉食するには大量の動物を飼育する必要があるため、畜産業チェーン全体によるサイクルで地球温暖化と極端な気候を加速させ、地球の生物の多様性が破壊されて、生物の種が日々消えていくのである。もし菜食者が一人でも増えて肉を食べなくなれば、一種類でも多く生物を救うチャンスが生まれる。菜食と生物保護は密接な関連があり、忍びなく思う慈悲心が、私たちに菜食を勧めるよう、さらなる努力を続けさせている。

私は慈済に参加する前から、患者の健康のために、長年、自ら菜食をしていた。慈済に参加してからは、證厳法師に追随して、医療における職責をしっかり果たして来た。これからも菜食の勧めと科学的研究を続けたいと心から願っている。花蓮や台東地方の住民の医療福祉を改善し、健康促進の理念を推し進め、医療情報を最適化することで、利他し、共善すると共に、自分のためにもなるようにして行きたい。

健康促進はその実、非常に簡単なことである。正しい食事、良い生活習慣、適度な運動、そして十分な余暇と睡眠を摂ればいいのだ。世界中の医師が科学的研究に投入して、菜食が健康に有益であることを検証している論文は、数えきれないほど多い。私たちは今後も科学的な根拠を蓄積し、努力して菜食を推進して行くつもりである。(引用:『科学的に検証された最も健康によい菜食の仕方』の序文より)

( 慈済月刊六九六期より)

科学的に検証された
最も健康によい菜食の仕方
科学的に検証された 最も健康によい菜食の仕方

十大慢性疾患の予防
栄養指導と応用レシピ

  • 慈済医療法人と出版社・原水文化、静思人文による合同出版。

  • 心臓内科専門医の林俊龍医師による主筆で、花蓮、大林、台北、台中の各慈済病院の医師と栄養士及び台湾菜食栄養学会が協力して約二十もの科学研究論文を発表している。菜食は十大慢性疾患の予防と改善に効果があることが検証されている。

  • 各論文には医師の解説があり、難しい研究成果を短くて分かり易い図解と文章で表している。

  • 花蓮慈済病院の栄養科チームが考案した、四十種類の美味しい菜食レシピは、簡単に調理でき、日常の栄養ニーズを満たし、病気の予防にもなる。

  • 東洋医学と西洋医学の臨床医を招いて菜食に関する会得から、菜食が健康に有益であることが分かる。

    キーワード :