縁とは不思議なもの

正しい方向に精進して励み、
一念の善を軽視しなければ、種は芽を出します。

五十銭から続いた六十年

上人は、慈善基金会の役員会で、皆が途切れることなく慈済を護持して、大切にし、共に心して志業を根付かせて来てくれたことに感謝しました。「慈済は台湾を起点に、一粒の種から芽を出し、天の時と地の利の良縁に恵まれて、小さな拠点から今では地球の至る所に展開するまでになりました。そして、人間(じんかん)菩薩の歩みと共に、菩薩法が仏陀の故郷へと里帰りをしました。これら全ては不思議な縁と言わざるをえません」。

「近頃、いつも不思議に思うのですが、仏陀と私たちは二千五百年以上も隔たっているのに、当時の人間が今の私たちとこのような因縁で結ばれ、仏陀の出生地と成長して説法した地で恩返しをしているのです。去年の慈済の創設記念日には、慈済人が霊鷲山の説法台からオンラインで本部と繋がったことで、私は感動と感謝の気持ちでいっぱいになりました。仏陀はそこで『法華経』を説き、慈済も『法華経』の精神を携え、一路現在まで六十年近く歩んで来ました。五十銭という僅かな募金は今日まで続いているのです」。

「当時の一念の善を軽く考えず、正しい方向で、『誠・正・信・実』を守って来たゆえにできたことなのです。私たちは皆、とても誠意のある心と同じ信仰を持っています。宗教が異なっても、正しい方向と正心と誠意を以て、仏陀の正等正覚に向かって精進し続けています。私たちが仏法に学ぶ時、清浄な赤子のような心で、真心から『法華経』を学ぶことによって『道』が見えるのです。一度も逸れたことはありません。そして、慈済人が菩薩道に励み、地域社会で行って来た全ては社会を利しており、実に素晴らしいものです」。

上人は、エコ福祉用具の回収と提供を例に挙げました。「師兄たちは、心して重たい電動ベッドなどの福祉用具を担いでいます。人々の家から回収して決まった場所に運んだ後、細心の注意を払って修理し、きれいにして、丁寧に保管し、それらを必要としている家庭がある時に再びそれらを運び出します。山奥であれ、田舎であれ、苦労を厭いません。また、安美プロジェクトでは、独居高齢者や老夫婦の家で安全を守る手すりやバリアフリー設備を取り付けることで、彼らの日常生活がより安全なものになっています。これらは全て慈済人の彼らに対する真心からの愛なのです」。

「私は慈済人にとても感謝しています。彼らは異なる生活背景や社会的地位にありますが、企業家から露天商に至るまで、心を一つに、地位の区別なく、皆で力を合わせて担ぎ、汚れた用具は一緒に洗い、お互いに尊重し合って、平等に付き合っています。仏教は衆生の平等観念を教えていますが、慈済人はそれを実践しているのです」。

上人は、現在の気候変動や人心の不和、天災や人災の多さについて語りました。慈済人がいる所なら、災害や事故が発生した時、お互いに連絡を取り合い、安全を確認すると直ちに動員して、災害調査や支援活動を行います。特に現代はネットワークによる通信が発達していて、慈済の連絡網で迅速に情報を伝達し、どの地域で人々が支援を必要としているかが分かり、それによって皆が明確な方向に行動できているのです。「これほど迅速に人員を動員して、支援活動ができるのも、大衆による護持のおかげであり、タイムリーに奉仕できるのです。慈済の効率はこうして生まれたものです」。

高齢者ケアについて、上人は、各地の静思堂が大きな役割を果たしていると述べました。多くの静思堂や連絡所にはケア拠点が設けられており、高齢者向けの講座で、毎日楽しく学びに来てもらっています。中には、お子さんやお孫さんを連れて来て、一緒に講座に参加してもらうことで心や脳、体を活性化させ、午後にまた家に連れて帰るというケースもあります。

「私は各地の静思堂を訪れた時、高齢者ケアチームが高齢者を連れて講座に参加しているのを目にしました。今回台中でも、高齢者が手工芸をしているのを見ました。清水区の高齢者は、藺草で編み笠や座布団などを作っていました。皆一緒に作業して、毎日楽しく過ごしていました。彼らは老いても楽しく暮らすことができるのです」。上人は、慈済が社会のニーズに応え、様々な方面で本当に素晴らしい仕事をしているので、それぞれの寄付者に機会があればもっと地域を訪れて理解してください、とお願いしました。

(慈済月刊六九九期より)

慈済エコ福祉用具プラットフォームは順次、台湾全土に立ち上げられた。新北市蘆洲区の慈済ボランティアは力を合わせて電動ベッドをアパートの住人に届けた。(撮影・張順生)

2025年1月、アメリカ・ロサンゼルスで今世紀最も規模の大きな山火事が発生した。ボランティアを動員して緊急支援を行い、アマンデ消防署に救助人員が使うゴーグルを寄贈した。(撮影・駱淑麗)

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