
レピロニアの茎の内径は0・6から0・8センチほどで、簡単な加工を施して乾燥させるだけで天然ストローになり、環境の負荷を下げることができ、ワンダーグリーナーを環境系スタートアップ企業に成らしめた。
第五回受賞団体
ワンダーグリーナー
2020年創設。環境に優しい農耕法と生産で水草のストローを販売。
世界での販売数5千万本。1本あたりのCO2排出量が約マイナス0・6グラム(吸収量の方が多い)
「
現在、世界では年間二兆本以上のストローが使われており、プラスチックに換算すると百六十万トン余りになります。そこで、私たちはこう提案しました。植物をそのままストローにすれば、使い終わったら一般ゴミや生ゴミとして捨てることができ、焼却しても有害物質は発生しません」。
第五回慈済青年公益実践プロジェクトの助成金を獲得した「ワンダーグリーナー」という会社の責任者である陳柏燊(チェン・ボースン)さんは、政府環保署がストローの使用規制を発表する前から、既に、ベトナムで代替ストローとなる「レピロニア」という水草を見つけていた。目下、ベトナムで植え付けを行い、加工して、世界へ向けて販売している他、将来的に台湾レピロニア畑を復活させて、「台湾製」水草ストローを量産する準備もしている。プラスチック製ストローと紙ストローは、双方ともカーボンを排出する。比較してみると、水草ストローは一本当たりCO2排出量が約「マイナス」0・6グラムで、「気候行動」により適している。
「当時の私はスタートアップ企業界の人間ではなく、ただのレストランオーナーで、五、六軒のレストランとカフェを経営していました。テレビのニュースで、ベトナムの人がレピロニアでストローを作っているのを見ました。そこで、水生植物に詳しいパートナーと一緒に、記事を持って現地へ探しに行きました」。
陳さんは二〇一八年にベトナムへ視察に行った。水草ストローはどこにでもあるだろうと思っていたが、予想外に二百軒以上の飲食店を訪ねた後、やっと一軒で使われているのを発見し、最後にメコン川沿いにレピロニア畑と加工工房を見つけた。製造工程は極めて簡単で、農村の女性たちが刈り取ったレピロニアをユーザーの要求する長さにカットし、簡単な工具で中を空洞にして洗浄すれば、梱包して出荷できるのである。
「持ち帰って台湾で使用することにし、干して出荷してくれるよう頼みました。そして、それは本当に使えることが分かったのです」。陳さんが試したところ、水草ストローは耐水性があり、土の中でも水中でも生分解されるので、プラチクック製ストローがもたらす害を避けられることが分かった。しかし、当時一本四元(約十五円)という見積もりは、一本一元の紙ストローより遥かに高く、十本一元のプラスチック製ストローとは比べ物にならなかった。
市場で普及させるには、生産工程を機械化する必要があった。そこで陳さんは、ベトナムに加工工場を建て、作付面積を拡大することにした。二〇二〇年には、気が合うパートナーと「ワンダーグリーナー」を設立し、一般飲食業と社会企業を兼ねた「スラッシュ族」という人生を切り開いた。
ワンダーグリーナーの開発により、水草ストローのコストは一本0・6元(約三円)にまで下がった。レピロニアの栽培は農薬を使ってはいけない。タニシや虫や魚がいて、それを食べる鳥や哺乳類を引き付けるという完全で豊かな生態系を成しているからだ。経済的価値が高いレピロニアは、農村経済を助けるようになった。
地球規模の持続可能な発展という意識が高まるにつれて、商機も広がっていった。現在、水草ストローは台湾高速鉄道や香港のコーヒーチェーン店で使用され、安定してリピートしてくれる店舖は、八百軒を超えた。
ワンダーグリーナーの経営陣は、若くて活気はあるが、一方で経験不足でもある。資金力や社員教育の面を強化する必要があると思っている。陳さんは正直に、「当初、二〇二一年度の慈済青年公益実践プロジェクトコンペに申し込んだのは、会社の運営資金を得るためでした」と語った。
「その頃、私たちは台湾で売り出したばかりで、知名度に欠けていました。慈済は、私たちの考え方を受け入れてくれるだろうと思いました」。やってみれば励みになるという気持ちで申し込み、その結果、予想を上回る支援を得ることができた。資金援助だけでなく、もっと重要だったのは、著名人の指導と社会的リソースとの繋がりを得たことだった。
「専門家の先生が、マーケティングにおいていくつかの方向を示し、どのルートから始めたらよいかを指導してくれました」。陳さんは、青年公益実践プロジェクトの助成金と専門家のサポートが大いに役に立ったと言った。主催団体が助成金を支給する前に、受賞チームに対して、資金の運用計画書とフォローアップレポートを提出することや、レシートとの照らし合わせなどを要求したことは、青年起業家にとって、とても良い訓練になると思った。
「それでも、すべての助成金は、発展途上でちょっとリラックスできて、暫くの間、資金繰りで悩まずに済むぐらいです」。起業家としての陳さんは、「最終的には自分でなんとかして正しい販売ルートを見つけ出す必要があります。如何にして成功するかは、やはり絶え間ない努力にかかっています!」と後進たちに注意を促した。
(慈済月刊七〇〇期より)
