記憶維持クラスは週に一回の小規模な集まりだ。故郷を離れている外国人介護者にはリラックスした時間を与え、しばし休息の空間を提供する。
そして、たとえその記憶が短い間のものであっても、高齢者には一緒に楽しく過ごしたことが思い出になる。

クリスマスイブの日のクラスでは、ボランティアと参加者たちがクリスマス帽子をかぶり、赤いスカーフを巻いて記念写真を撮った。
二◯二四年、クリスマスイブの午前九時、高齢者は毎週火曜日に開かれる記憶維持クラスに出席するため、家族や外国籍介護者に付き添われ、次々と慈済中山八徳集会所を二階へと上がった。
スクリーンの前には四列の長テーブルが並べられ、お年寄りたちが前に、付き添いの人たちはその後ろに座ることになっている。入場する前に全員がクリスマス帽子を受け取り、「幸せな顔」というクラスの歌を歌った後、活動が正式に始まった。
ボランティアが文房具一式を持ってきた。すでに大まかに切り揃えた色紙とハサミ、糊、マーカーペンなどが入っている。今日の手芸のテーマは「踊るサンタクロース」で、参加者たちは四人一組になって、色紙を組み立てた。ピンク色は顔で、赤色は帽子、白色はサンタ帽子のつばになる。
参加者は、多少の差はあっても、皆、認知症状があり、認知機能もさまざまである。指示をはっきりと理解して、速やかに作業を完了できる人もいれば、誘導が必要な人や、ただ傍観することしかできない人もいる。ボランティアたちは細かい部分に気を配り、みんなができるだけ参加している感じを持てるように、そして、活動を十分に楽しめるように工夫している。
参加者の多くは台北市中山区に住んでいて、高齢によって認知機能が低下した慈済ボランティアや地域住民、医師から紹介された高齢者たちであるが、授業が始まる前に、専門家による初歩的な評価を受ける。「縁がある人やこの地域の人たちなら、受け入れます」と記憶維持クラスを担当するボランティアの江旻真(ジャン・ミンヅン)さんが率直に言った。
医療スタッフが常駐
専門家による相談
中山八徳記憶維持クラスは、二◯二二年十一月に立ち上げられた。江さんと夫の黄国倫(フワォン・グォルン)さんは、大愛劇場の『こんにちは、私は誰ですか』という番組を見て深く感銘を受け、クラスを開設した。夫婦はわざわざ大林慈済病院に足を運び、ドラマの主人公で、認知症センター主任の曹汶龍(ツァオ・ウェンロン)医師にアドバイスを求めた。そして、北部にいる彼の学生の一人で神経内科の林冠宏(リン・グワァンホン)医師とケースマネージャーの簡均穎(ジェン・ジュンイン)さんのサポートを得た。
この二年間、彼らはボランティアとして、申し込み者に初歩的な記憶力の評価を行い、記憶維持クラスに参加する必要があるかどうかを判断したり、専門医療機関へ紹介状を書いたりしてきた。林医師は、月に一回から二回、事前に予約した家族と面会し、認知症患者の介護に関する質問に答えている。ケースマネージャーの簡さんは、毎週のクラスに常駐し、参加者の状況に注意を払っている。彼らは皆、「薬物療法だけでなく、社会的な面から高齢者を助ける」という曹医師の理念に賛同している。
記憶維持クラスでは、特に認知症患者の家庭の大変さが感じられ、介護者側の苦労の一端を垣間見ることができる。
認知症患者の症状は様々で、関連の介護経験がない外国人労働者にとっては大きな挑戦だ。
おばあさんの付き添いでクラスに来たインドネシア人介護者の花麗(フワリー)さんは、今年三十七歳で、三人の子供を育てている。彼女は台湾で既に十年も働いていて、流暢な中国語が話せる。今回は彼女にとっても初めての認知症高齢者の介護である。この十カ月の間、おばあさんはよく彼女が誰なのかを忘れ、恐怖や怒りの感情を表すこともあったそうだ。
このおばあさんの介護は、前回の介護経験より難しい、と花麗さんは感じているが、記憶維持クラスやデイケアセンターに来たことで、ここにはおばあさんにできることがあるので、混乱した行動も減ったため、彼女は少し安心した。
グループで手作り
暫しの相互交流
「私はやるなら正しくやって、間違えたくないのです」。最初に曹医師に会った時、江さんはこう言った。彼女と黄さんの積極的な姿勢に曹医師は感動し、過去にクラスを開設した時の秘訣を喜んで提供した。また、他の記憶維持クラスの責任者に紹介して、経験を共有してもらった。具体的なことを理解すると、江さんは自信が湧いてきて、自分にもできると感じた。そして、林医師を招いて、この地区の他のボランティアに三回、認知症ケアについて学ぶ養成講座を受け持ってもらった。
また、曹医師は、週一回の開催を提案した。この二年間の経験から、江さんも同感だった。「週に一回であれば、お年寄りたちはそれを楽しみにするようになり、ボランティアもそれほど疲れません」。彼女は手芸を主な活動として選び、「お年寄りは手を動かして、頭を使い、人と交流する」ことを期待した。「曹パパが教えてくれた最高の考え方です」。
中山八徳記憶維持クラスのボランティアチームは、二~三カ月に一回、家庭訪問を行っている。曹医師、林医師、簡マネージャーが同行して、高齢者の住環境を詳しく観察し、家族との関係や生活習慣、病気への対応能力を理解し、家族に介護上のアドバイスをしている。
中山八徳記憶維持クラスのチームは、クラスや家庭訪問以外に、もう一つサービスを提供している。黄さんは以前ゲームコミュニティを運営していたので、「認知症患者と共に歩む公益無料プラットフォーム」という通信アプリグループを立ち上げ、家族が介護の感想を共有したり、互いに支え合ったりできるようにしたのだ。二千人を超えるグループになり、介護技術に関する質問や長期介護による感情的な困難を訴える人が最も多かった。こんなに多くの人が話し合い、交流しているのを見て、自分だけがプレッシャーに直面しているわけではないことが分かったと言う参加者もいた。
黄さんはまた、会社の同僚と「認知症患者と共に歩む会」というYouTubeチャンネルを運営し、不定期にオンラインセミナーを開催している。将来は短編動画を制作し、認知症ケアに関するよくある質問と回答を大衆に提供したいと考えている。
クラスや家庭訪問、コミュニティ運営、いずれにしても共通の目的は、介護者への配慮であり、短い休息時間を提供して同じ境遇にある人々が交流できるプラットフォームを提供することである。これにより、介護者が二十四時間、介護の重荷を一人で背負い、孤独と負担という無限の深淵に陥ることが避けられるのだ。
2024年の記憶維持クラスの最後の日、江さん(右1)とボランティアたちは、参加者たちと一緒に「花火を描いて」新年を迎えた。

長期介護拠点はコミュニティ内にある
慈済長期介護推進センター・北部C拠点推進チームのリーダーである陳惠仙(チェン・フウェイシエン)さんの説明によると、基隆から新竹まで、北部には三十三カ所の慈済長期介護拠点があり、そのうち十七のC拠点と大同連絡所および萬華連絡所の二つの認知症ケア拠点には、政府から補助金が出ており、規定に従って週に少なくとも二回、開設する時間帯を設けることになっている。また、慈済には八徳記憶維持クラスを除き、他に十四の長期介護拠点があるが、政府の補助金は受けておらず、週に一回の時間帯で開設している。
慈済が静思堂、連絡所、集会所、またはリサイクルステーションで長期介護拠点を運営していることは、単にコミュニティに直接還元しているだけでなく、地域の人々が慈済について知る一つの手段でもある、と陳さんは考えている。彼らが集まりに一歩足を踏み入れた時から善意の交流が生まれるのだ。
最初に八徳記憶維持クラスが開催された時、参加者は十人だったが、今では三十三人ほどにまで増えた。「お年寄りたちはここがとても気に入っていて、毎週楽しみにしているのです。台風の日には、『来ないように』と特別に注意を促します」と簡マネージャーが笑いながら言った。
十二月二十四日はもうすぐコースが終わる頃だったので、高齢者たちとボランティアチームは記念写真を撮った。花麗さんとインドネシア出身者数人は、金色のクリスマスツリーの前でおしゃべりしたり、写真を撮ったりした。このような小さな集まりは、故郷を離れている彼女たちにリラックスした時間を提供し、介護者という立場に息抜きの時間を与える。さらに、高齢者たちにも人と楽しく過ごす時間と記憶を少しでも多く与えることができる。たとえ、その記憶が短いものであっても。
(慈済月刊六九九期より)
記憶維持クラスのプロフィール
- 大林慈済病院の認知症センターは2012年に設立され、曹汶龍医師が主任として台湾全土で12の記憶維持クラス、10の認知症ケア拠点、そして4つの介護者支援家族互助の家を設置するための指導を行った。
- 2015年から認知症センターで年度音楽会を開催し、各地の記憶維持クラスを招待して一緒に楽しんだ。
- 台北市中山八徳記憶維持クラスは2022年に開講し、リサイクルセンターを主体とした初めての都市型の記憶維持クラスである。
