蛍火の如く協力し善事を行う

編集者の言葉

十月中旬、高雄市塩埕区のマンション「城中城」で大火が発生した。一つの建物での火事の犠牲者としては、この二十五年間で最も数が多く、また、二〇一四年に高雄市ガス爆発事故の犠牲者数を上回った。慈済ボランティアはいつものように真っ先に現場に駆けつけ、救助人員に飲み物や食事を提供し、マンションの外に立ち尽くす犠牲者家族に付き添い、遺体の確認に協力した。

報道によると、「城中城」は店舗と住居の複合型マンションで、一九八〇年代では繁栄のランドマークであったが、その後、市の商業地域が移り、空室が多くなった。家賃が安かったことから、仕事で他の地方からやってきた若者や高齢者、独居者など、社会的弱者が暮らすようになった。その中でも子供が長期的に家を出て仕事をしている、「一人暮らしに似た」お年寄りが多く、彼らは政府の福祉が受けられるとは限らない上に、近所同士の繋がりも少ないため、民間の社会福祉団体の協力に頼る外に方法がない。

住民の中にはかつて慈済のケア世帯だった人もいる。火災発生後、ボランティアとソーシャルワーカーは積極的に付近の住民の必要に合わせて世話した。慈済ボランティアは、災害における後方支援以外に、自治体との間で順次、「共に善行するための覚書」を取り交わしてきたことから、普段からコミュニテイをケア拠点にして、慈善活動を掘り下げて行ってきた。

ここで注目すべきなのは、地域で発生する事故にしろ、深刻化する自然災害にしろ、元に戻すまでに消耗する資源が極めて大きいことである。災害リスクの低減を考えることを基本に、近年、慈済基金会は、政府が推進する「災害に強い(回復力のある)コミュニティ」と「防災士訓練」計画に呼応して、コミュニティの防災自助能力育成を支援している。

回復力(resilience)の概念は、「変化に適応する能力」を意味し、突然の天災や衰えていく社会経済に向き合いながら、人々が衝撃を受けた後に正常に回復することも含まれている。地域住民が互いに助け合うコンセンサスを持ち、環境に対する危機意識が高いほど、より強い「回復力」を育むことができる。

政府は二○○九年の台風八号(モーラコット)を経験した後、より地域のコミュニテイやNPOとの協力体制に重点を置くようになった。NPOも機動性の高さや使命感という特質があるため、すばやく地方のニーズに対応し、地域の自主防災に付き添うことが可能であり、既に災害支援ガバナンスの要となる役割を担っていると言える。

「人間(じんかん)は苦難に満ちていますが、どこかに災難があれば、菩薩の出現を必要としています」。證厳法師は大勢の慈済ボランティアに、自から大衆を得度して彼岸に導く人間(じんかん)菩薩になることを誓うよう、励ました。たとえ一人の力が微小であっても、光を放つ蛍のように住みかを照らし、多難な世を慰撫することができるのだ。
(慈済月刊六六一期より)

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