経典を活用する

最高の伝法とは、道理を日常生活に取り入れ、仏法を活かして人々に感じてもらうことです。

経典を大切にし、この世に広める

三十日、国立図書館の『コーラン』修復チームが来訪しました。胡光中(フー・グアンジョン)師兄(スーシオン)は五百年の歴史を持つ『コーラン』の手書きの写本を謹呈し、この修復作業は、予定としてまだ一年半かかると説明しました。

上人は、胡師兄からその『コーラン』を贈られた時、それはとても貴重で、歴史的に価値があり、自然と心から尊重する気持ちになったそうです。五百年という歳月を経て、表紙もページも脆くなって破れていましたが、国立図書館の専門家に修復の協力を依頼しました。「私は心からそれを愛おしみ、大切にしたい気持ちでいっぱいした。その経典は修復する価値があると思った故に、『入院治療』させたのです」。

上人は、国立図書館の修復チームが歴史的に意義のある貴重な経典を保存するために、依頼を引き受けてくれたことに感謝しました。どの正信の宗教もこの世の真実を広め伝えており、経典を適切に保存し、伝えていくことで初めて、道理をこの世に伝承していくことができるのです。人間がどれだけ長寿になっても、いつかはこの世を去りますが、この経典のように五百年も伝えられ、破損しても修復することができるのです。経典があれば、宗教の慧命を残すことができます。そして、慈済が仏教経典を守る最良の方法は、それを活用することです。実際の行動でもって人々に仏法の道理を理解してもらうのが、最良の修復方法です。

上人はこう言いました、「それぞれの宗教の精神理念はその教典の中にあり、人が心して学習し、伝承していかなければなりません。最も良い伝法は道理を日常生活に取り入れることで法が活性化され、それを人々に感じてもらうのです。慈済人が社会の中で仏法を実践し、人々を思いやっていることにとても感謝しています。その愛は一人から大勢の人に伝えられ、絶えず広まり、仏法を絶やすことなく永らえています」。

時は刻々と流れ去る故、日々精進する

昨年十一月三十日の午後、北部の十一回目の委員認証式と歳末祝福会が行われ、土城地区の和気チームによる林戸丸(リン・フーワン)師兄の人生ストーリーが語られました。師兄は一九八六年に慈済に参加し、直ぐにリサイクルセンターで奉仕し始めました。奥さんの陳姿妙(チェン・ヅーミャオ)師姐(スージエ)もそれに賛同して参加するようになりましたが、彼女は養成講座に参加していた年に病気で亡くなりました。そして、戸丸師兄は二〇一二年に交通事故で頭部に大怪我をし、大半の記憶をなくしてしまいました。その後三年間休養してから、再びリサイクルセンターに戻り、法縁者たちのケアの下に少しずつ回復してきました。

昨年で七十三歳の戸丸師兄は多くのことを忘れてしまいましたが、リサイクル活動することで大地を守ることは記憶に深く刻まれており、毎日、雨にも風にも負けず、早朝の五時過ぎにバスに乗り、三峡リサイクルセンターに来て活動しています。彼はバスに乗ると、慈済志業について話し、愛を募っています。長い間を経て彼と知り合うようになった、ある善意の人は深く感動し、彼に会うたびに十元を渡し、センターの竹筒貯金箱に入れてくれるよう頼みました。

「彼は台上でそれを話し、私は席で聞いていました。側にいた慈誠(認証を受けた男性ボランティア)が私に、戸丸師兄は一日も休まず、精進している、と補足しました。私はそれを聞いて非常に安堵しました。彼が私に出会い、慈済に参加してから既に三十数年になります。彼は歳をとり、私も老いました。体の機能も含めて全てを時間に持っていかれ、一分一秒と時間は流れて行きます。一日過ぎれば、生命は一日短くなります。ですから毎日を大切にすると共に、有効に使わなければなりません」。

上人は皆に縁を大切にするよう言いました。師弟間の縁だけでなく、慈済の法縁者との間も良縁なのです。多くの菩薩と一堂に集まり、皆、無私の奉仕をして見返りを求めず、そして、真心から感謝すべき菩薩が発揮しているのが清浄無私の誠意のある愛だからです。「皆さんの前後左右に座っているのは全て生き菩薩です。法縁者同士、互いを大切にし、尊重して敬愛し合わなければいけません」。


(慈済月刊六五〇期より)

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