無常の中のとこしえ

編集者の言葉

慈済五十七周年記念行事の前日、静思精舎の応接室は「帰って来てよかった」、「久しぶりですね」という喜びの声に溢れていた。二十九の国と地域の慈済人がオンラインで座談会に参加したが、画面にはシニアボランティアたちの顔や髪に歳月が刻まれていたのが映っていた。人心、人情、人事は時空の移り変わりの中で無常を感じるとはいえ、いつまでも変わらないのは、自分の人生を豊かにしてくれている慈済に感謝する声だった。

慶祝の中にも感傷がある。一週間前、台北のシニアボランティアの林勝勝(リン・スンスン)師姐(スージェ)が亡くなった。彼女に導かれて慈済に入った数人のシニアボランティアは、彼女の代わりに静思精舎に帰って、法師の下で祝賀会に参加すると同時に、心から彼女の模範的な姿を偲んだ。

「勝勝師姐は法縁者を愛おしみ、いつも法師の法を皆と分かち合って、私たちを励ましてくれました。彼女のお陰で、私たちの人生は価値があるように思えます。彼女を誇りに思っており、期待を裏切らないよう努力します」。

「彼女は私に、『腐敗すると虫が湧くように、志が後退すれば業に纏わりつかれる』と言いました。 いずれにしても志は守らなければなりません。人を導く人は、必ず誤解される時がありますが、その苦しみをぐっと我慢し、楽になろうとして、それを表に出してはいけません。挫折しても気にせず、それを乗り越え、相手と縁を結ぶべきで、業を伴ってはいけません。もし縁も業も共にすれば、また一つ縺れが増えることになります」。

「濃厚な師弟の情や法縁者との縁は、誰もが誠意でもって心を一つにすることで出来上がったもので、それこそ師父が最も望んでいるものです」、また法師は、「一人では何事も成し遂げるのは難しく、皆が両手を差し伸べてこそ力が出るのです」と念を押した。「三十数年前に環境保全を呼びかけましたが、あなたが捨てれば、私が拾うというようなことではなく、環境保全をする人生を歩み、人生の環境保全をすべきです。普遍的に人心を浄化してこそ汚染を減らすことができ、災難を無くしたいのなら、人間(じんかん)でもっと福を作るのです」。

慈済が五十八年目に向かって歩みだした五月、月刊誌のカメラマンが精舍での荘厳な「朝山」参拝活動を撮影した。また、三十数人の北部のボランティアは、「中正紀念堂仏誕節灌仏及び親孝行感謝祝福会」の写真の中から秀作を選び出し、それらの一瞬を永遠のものにした。今月号の特別報道の中には、林勝勝師姐を偲んだ記事と日常生活でよく見かける「フラットシートプラスチック」についての追跡調査の記事が載っている。

このタイプのプラスチックはよく、卵や海苔など破損しやすい食物や食品を入れる容器として使用されている。素材の特性により、リサイクルして再生することが難しいため、リサイクル業者は処理を嫌い、多くのコミュニティやマンションでは受け入れ拒否まで表明している。慈済のリサイクルボランティアは、七種類のフラットシートプラスチックを仕分けているが、実は行き場がないのだ。記者は、この種のプラスチックが本当に必要悪なのかどうかを読者にもっと知ってもらいたいと思い、リサイクルボランティア、公共部門、民間環境保全団体及び量り売り商店の経営者にインタビューした。

川や海にはマイクロプラスチックが溢れ、魚や鳥の胃袋の中はプラスチックごみがいっぱい詰まり、環境危機は目の前に差し迫っている。人々の生活は、もはや「利便性」だけに頼ってはならないのだ。

(慈済月刊六七九期より)

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