回収業者の工場には、プラトレー製品がブロック状にプレスされ、置かれてあった。
プラトレーが日常生活の中に溢れている。
卵パック、飲料カップ、カットフルーツの容器、医療品カプセルの包装等だ。しかし、素材は様々で分別が難しく、リサイクル業者は買取り意欲が低い。
その殆どは廃棄されるか焼却されており、地球環境にとっては耐え難い負担となっている。
多くの研究報告や環境教育上の警告によると、プラスチックは地球の隅々にまで溢れ、北極や南極の雪や淡水河の水など、至る所でマイクロプラスチックが見つかっている。海洋動物が、海に漂流しているプラスチックゴミを誤って食べて傷ついたり、死亡したりしているニュースはすでに珍しくなく、国境を越えた危機となっている。
台湾では、二十数年前からすでに「脱プラスチック政策」を推進してきた。レジ袋の使用を制限し、近年は更にプラトレーへの規制を強めている。二〇二二年末、環境保護署は「事業者が物やその包装容器及び回収、処理する責任を負う業者の範囲」規定を改定すると発表した。今年五月にプラスチック製の各種トレーやブリスターパックを回収項目に含めることを公布し、環境保護署が関連メーカー、輸入業者及び回収業者を指導して、来年五月から全面的に回収することになった。
分けずに廃棄すると、
回収率が低くなる
環境保護署の新規制によれば、プラトレーやブリスターパックは、すでに飲み物のカップの蓋、ミニトマトの容器、使い捨て食器類などと共に回収すべきプラスチック製平型容器に含まれており、「平型包装資材」と総称される。
中でもプラトレーは食品に直接触れる部分に使われ、食品の口当たりや柔らかさを衝撃や圧迫から防ぐために使用されている。例えば婚礼用お菓子のギフトボックスに使われる丸いPET製トレーやエッグロール用の長方形のPP製容器などがある。
ブリスターパックは、小型の電子製品、玩具、金属製品、衛生用品などの包装資材としてよく使われている。例えば、メモリーカード、USB、マウスなどの包装に使われている透明なプラスチックケースによる包装は、ある程度の強度でもって製品を保護しているだけでなく、内容を識別するのにも便利である。市販の歯ブラシなどの衛生用品も同様のパッケージで、衛生面の安全も確保している。
プラスチック製平型容器やプラトレー、ブリスターパックなどの専門用語は、一見して理解しにくいが、早い時期からすでに日常生活の中で広く使われており、しかもその数量は膨大である。
「台湾では、プラスチック製平型容器は年間約二万千トン使用され、そのうちプラトレーとブリスターパックは年間で約三万四千トン使用されています。つまりプラスチック製平型包装資材の量は、両者合わせると約五万五千トンになり、回収プラ容器全体の四分の一を占めています」と環境保護署回収基金管理会の連氏が言った。以前はプラトレーとブリスターパックは回収項目に入っておらず、メーカーや輸入業者は政府に回収処置費用を収める必要がなかった。また、回収業者も再生業者も補助手当を受けられなかったため、この種のプラスチックを回収する意欲を持った業者は非常に少なかった。
しかし、大衆にはこの三種類の区別がつかないため、後続の仕分け作業が難度を増していた。一部の業者は回収する意欲がないので、ゴミ収集車に放り込んで焼却炉で燃やすようにと、はっきりと大衆に伝えた。分別の混乱問題は、大衆、回収業者、ゴミ収集チームの全てに混乱をもたらしたため、プラスチック製平型容器の回収効果も低下した。
「プラスチック製の平型容器とトレー、そしてブリスターパックは、年間約五万五千トン使われており、台湾の資源回収業者にとっては膨大な量ですが、多くの業者はすでに取り組む準備を整えています」と連氏が言った。新しい基準が施行された時、多くの業者が参入すると見込まれており、解決できなかった難題も大幅に緩和されるだろう。大衆は一般ゴミ、生ごみ、資源回収物に分けるだけで済むようになるのだ。
大衆の利便性を配慮して、政府の殆どの政策は、人々が実行する時の手順を簡素化しようとしているが、全てのマンションやビルに回収物の置き場があるわけではなく、誰もが細かく回収できる資源を分別できるわけでもない。
「良い引き取り価格にするために、回収業者は分別を細かく設定するでしょう。市民には当然、予め洗浄して生ごみが混入していないようにしておいて欲しいです。そうすれば、回収効率が上がります」と連氏は説明を補った。
プラトレーは受け入れ難いが、
我慢して回収する
慈済のリサイクルボランティアは、たとえ回収できない品目が混入していても、「ゴミを金に変える」一念で、全力を尽くして、回収したものを細かく分別している。
しかし、殆どの慈済環境保全教育センターやリサイクルステーションは、プラトレーを受け取らない。「氾濫していて多すぎるのです。この新荘区中港環境保全教育センターでは、受け取らないと表明していますが、それでも混入されているものが多いです」。ベテランボランティアの許長林(シュー・チャンリン)さんの推定では、ボランティアは一日に少なくとも大きな袋で2、3個分、時には5、6個分のプラトレーを分別している。一袋の重さはわずか4、5キロだが、プレスする前は大人の背の半分ほどの高さになり、その数は膨大で、種類も多岐にわたり、非常に手間がかかるのだ。
苗栗県竹南鎮国泰環境保全教育センターでは、異なる年齢層のボランティアが協力し合って、プラトレーを細かく分別している。
プラトレーやブリスターパックは、まだ政府の補助金の対象になっていないため、誰も手を出そうとしないが、ボランティアは依然、丁寧に分別している。「業者が回収できる部分については、出来る限り協力しています。現在協力している業者は、主にPPプラスチックを受け取っています。集まる数量も多く、分別し易いため、PPだけ別に分別しているのです」と許長林さんが言った。そこで回収しているプラトレーの中には、PETとPPの占める割合が最も多く、PP製のものは電子レンジ用の食器で、果物や食品の容器の多くはPET製である。
プラトレーの種類は非常に多く、ボランティアたちは初め、リサイクル表示の番号で仕分けしたり、解体したりした後に、切り口の色や形で分別していた。慣れて来ると手で触るだけで、大体判別できるようになった。
「このカップのように、ブランドを見て、材質を触れば、七号のPLA製であることが分かります。以前の卵パックはPLA製が多かったのですが、今はPET製もあります」。許長林さんは有名なコーヒーショップのテイクアウト用のプラスチック容器を手にして説明した。現在、新荘区中港環境保全教育センターのボランティアたちは、ビニール袋やラップフィルムの回収に対してかなり熟練しており、自分の経験を他の人に教えるほどになっているが、絶え間なく送られて来るプラスチック廃棄物に対して、最善を尽くすしかないのだ。
「多くのプラトレーにはシールが貼られていますが、切り取る時間がありません」。許長林さんは、量が多すぎるため、あるだけの人手で尽力するしかない、と率直に言った。
環境保護署が来年五月に、プラトレーとブリスターパックを回収項目に入れると聞いて、慈済基金会の環境保全推進チームの張涵鈞主任は楽観的な見方をしたが、「業者に回収意欲があって、ボランティアの人力を確保してこそ、やっていけるのです」とも強調した。
スーパーでは、生鮮青果物の鮮度を保ち、ラベルを貼りやすくするために、プラスチック包装が一般的になっているが、大量の廃棄物を発生させている。そこで近年では環境保護団体が店に対して、個別包装無しの量り売りでの提供を積極的に要請している。
プラスチックの制限と削減で
地球を救おう
イギリスの科学者パークス(Parkes)が、一八五〇年に第一号セイルロイド(celluloid)を合成して以来、人類のプラスチック使用は百七十年を超えた。最初の硬質セイルロイド、ベークライト(bakelite)から、一九六〇年代からは使い捨てのビニール袋やプラトレーが大量に使用されるようになった。人々のプラスチックの乱用は、パンドラの箱を開けたように、コントロールが効かなくなっている。
二十一世紀に入って、関連の科学研究が次々と発表され、人々はやっと、地球全体が「プラスチック化された」状況が予想以上なのに気がついた。アメリカの学術機構の研究によると、二〇一七年の世界のプラスチック廃棄物の総量が八十三億トンに達した。今の世界の人口を八十億人で計算すると、平均して一人当たり一トン以上になるのだ。
膨大な量のプラスチックゴミに対して、現在、各国の政府、企業、NGOないし個人が対応している行動は微々たるものでしかない。しかし、持続可能にする人類と地球のためには、脱プラや減プラへの推進に着実な努力をしなければならない。
焼却炉に入れられようとしている各種プラスチックをどのように回収して、使用可能な資材に再生できるか。プラスチック製品の製造と使用を源から減らすにはどうすればよいのか。これは現在、重視すべき環境課題であり、慈済ボランティアをはじめ、多くの有識者も参入しているが、より多くの関心を持った有識者の参加を期待している。
(慈済月刊六七九期より)