使い捨てプラスチックの命を救う─プラスチック製品の使用量トップは食品用容器・包装

世界のプラスチック製品は、その40% 以上が容器・包装に使用されており、食品用の占める割合が最も高い。

台湾の小売業界は、毎年少なくとも三十六億個のプラスチック廃棄物を生み出している。

源から消費を経て回収されるまで、全ての段階で少しでも変化させることができれば、プラスチック汚染を減らすことができ、地球の存続に役立つ。

「両端の人はもう少し中央に寄ってください!」 カメラマンの指示に従い、大人から子供まで数十人が、集めた海洋ゴミの前で、休日に行ったビーチ清掃活動の最高の思い出を残した。

企業は従業員とその家族に対し、休日にはビーチや山の清掃、或いは慈済のリサイクルステーションで資源回収などの活動へ参加するよう奨励することで、その社会的責任を果たす基本的な取り組みの一つを実践している。しかし、世界では、日増しにESG(環境、社会、ガバナンス)に基づく持続可能な発展の実践が重視される風潮の中で、企業の環境保護における取り組みには、その実践をはるかに超えた期待がかけられている。特に源からのプラスチック削減を果たすためには、生産、販売、流通の各段階におけるプラスチック製容器・包装の使用削減に努める必要がある。

「私たちはプラスチックの使用をできる限り削減するよう、業者を指導しています。例えば、マウスの包装にはブリスターパックを使用せず、代わりに再生紙で作られた折りたたみ式の箱を使用することで使用量を減らすのです。新しい材料を100%使用する場合に比べ、80%まで削減するのが目標です」、と環境保護署リサイクル基金管理協会主任の連奕偉(リエン・イーウェイ)氏が、例を挙げた。

プラトレーやブリスターパックが回収品目に含まれるならば、生産者は処理費を払わなければならない。プラスチック容器包装が厚くなり、使用量が多ければ多いほど、支払う金額は増加し、コストが上昇すれば、業者は考え直さなければならなくなる。「コストが上れば、彼らは方法を考えて調整します。政府は政策を使って、業者が使用するプラスチックの量を削減するのです」、と連主任は補足した。

マイ容器を持参し、量り売りを選ぶ

国際環境NGO「グリーンピース」などの団体は、台湾でモニタリングを行い、小売業におけるプラスチックの削減を後押ししている。

「以前、私は台中に住んでいましたが、毎週土曜日の朝、よく母と一緒に慈済のリサイクルステーションに行って、資源の回収作業をしていました。それからというもの、プラスチックの問題は本当に深刻だと感じています」。台湾グリーンピース台北事務所プラスチックプロジェクト主任の張凱婷(チャン・カイティン)さんは、いくつかの驚くべき数値を教えてくれた。世界のプラスチック産業の規模が、過去五十年間で二十倍に成長した主な原因は、人々の使い捨てプラスチック製容器・包装への依存にあったのである。

二〇二一年、世界のプラスチック生産量は三・五億トンを超え、そのうちの四十%がプラスチック製容器・包装であり、食品業界のそれを占める割合が最も高い。また、台湾のコンビニエンスストア、スーパーマーケット、量販店は少なくとも年間三十六億個のプラスチック廃棄物を作り出している!

スーパーマーケットや量販店に入ると、ほぼ全ての果物、野菜、食品がプラスチックで「覆われ」ている。ビニール袋に詰められた物やフルーツネットで覆われた物もあり、その上に透明のプラトレーで包装されている物もある。消費者は、店で果物や野菜を数個買うだけかもしれないが、そこに使われているビニール袋やプラトレーの包装は十幾つにもなるだろう。

国際環境NGOグリーンピースは、コンビニエンスストアチェーンや有名スーパーマーケット、量販店など規模の大きい業者に、「プラスチックの削減」を呼びかけている。

張さんが、改善呼びかけの成果を語ってくれた。「昨年、彼らとのコミュニケーションを強化し、包装されていない野菜や果物の『量り売り』を始めるよう提案しました。昨年末から台湾全土の店舗が、量り売りの売り場を設けるようになりました。少なくとも第一歩を踏み出したのです」。そのチェーンストアに入ると、大部分の野菜や果物には未だにプラスチック製容器・包装が成されているが、量り売りコーナーには、オレンジ、レモン、リンゴなど数種類の硬めの果物や野菜が置いてあった。消費者はマイバッグを持参するだけで「プラスチックフリー」の買い物ができるのだ。

住宅街にある個別包装無しの店。顧客に自前の容器や買い物袋の持参を呼びかける他、「必要な分だけ買う」という理念も分かち合っている。

必要な分だけ買う

ベジタリアン及び環境保護のコンセプトパビリオンである「植境」は、台鉄松山駅とMRT松山駅に隣接している慈済台北東区支部の地下一階にある。若い慈済職員と熱心な店主が共同で作り上げた持続可能な生活空間であり、静思書軒、料理教室、キュレーション展示スペース、ベジタリアンレストランとスーパーマーケットがある。中でも、スーパーマーケットに設置された量り売りコーナーでは、乾物類や豆類、各種ショートパスタ、液体天然洗剤などが販売されている。「量り売りコーナー設置は、彼ら自身が決めたことです」。「植境」の管理職である湯逸凡(ヤン・イーファン)さんは、スーパーマーケット運営担当者の配慮と創意工夫を称賛した。

消費者は物を買う時、繰り返し使うビニール袋を開けて、食品の入った容器のファンネル状の口に持っていき、軽くハンドルを引くと、購入したいドライフーズが落ちて来るので、買いたい量だけ入れて、レジに持っていけばいいのだ。または、事前に容器の重さを測り、レジで容器の重量を差し引けばよい。液体クリーナーを購入する時も同じようにマイ容器を持参するが、漏れを防ぐために容器が良好な状態であることを確認しておく必要がある。

台北MRT北投駅脇にある別の個別包装無しの店は、マンション一階の一角にあって、隠れた感じだが、コミュニティに隣接している関係で、住民に密着している。

「私たちの消費者は学生から家庭主婦、年配の方までいますが、女性がメインです。年配の方は、私たちの店は新しいのに、彼らの子供時代とも通じていると言っています」。経営者の蔡旻杰(ツァイ・ミンジエ)さんによると、彼の奥さんが大学時代に交換留学生としてフランスとドイツに滞在した時に、ヨーロッパでは個別包装無しの店が流行していて、そのコンセプトがとてもいいと感じたそうだ。そこで、結婚してから、住んでいる北投エリアにそういう店を出してみたのだった。

資金に限度があったため、夫婦が借りた店は七坪の広さしかなかった。蔡さんは自らそれを整理、改装し、簡潔で爽やかな北欧風の店に仕上げた。穀物、茶葉、香辛料、キャンディー、コーヒー豆などが、整然と中小の透明の容器に入れてある。

なぜドイツやフランスの店を真似て、大きい容器に入れないのか?台湾の気候はヨーロッパよりはるかに湿度が高く、食品やドライフーズが湿気で変質しやすいため、小さい容器に入れて、少量で並べる方法を採用した。大量に長期間置かないようにすることで、食品の安全性を確保している。顧客は、スペースが狭くても、自在に買い物をしている。

「売れて欲しいと思っていますが、一度に買いすぎて欲しくはありません。私たちのセールスコンセプトは、必要な分だけ買えるように、なのです」。普通の量販店なら、安い値段で大量を一つに包装するという策略で消費者を引きつける。価格上小さな包装よりは少し安くなるが、無駄にもなりやすい。「三分の一食べ残したら、三割高くなったことと同じです。でも、食べ飽きた時に無駄にしないためにと無理やり食べるのも、よくありません。個人のニーズに立ち戻り、必要な分だけ買うのがいいでしょう」。蔡さんが言った。

路地の中にある蔡さんの個別包装無しの店は小さすぎて、人々はその存在に気付かないほどである。しかし、苦労して三年間経営してきた今、やっと一握りのリピーターができた。エコのために、常連客は自前の容器を用意して来るが、保証金を払って容器をレンタルし、次回店に来た時に容器を返して、保証金を返してもらうこともできる。

「プラスチック製品は以前から存在しており、繰り返し使用することで、新たに生産するのを減らすことができます」。蔡さんは「プラスチックの削減」を経営における重要ポイントの一つに掲げ、自分の店が、エコという観点からプラスチックを削減する実験的なプラットフォームになることを望んでいる。消費者にこの店を使って、環境に優しいエシカル消費の習慣を身につける練習をして欲しいと思っている。「私たちは、個別包装をしないだけでなく、この理念をより多くの人に理解してもらえるかどうかを重視しています」。

プラスチックの削減と小まめなリサイクル活動は、地球の負荷を減らすと同時に、人々の生活の質を向上させて、より素晴らしく且つ快適な生き方をもたらしてくれるだろう。

(慈済月刊六七九期より)

この店舗では台湾の湿気の多い環境に対応して、ほとんどの食品を小さい密封容器やファンネル状の取り出し口を備えた容器に入れて陳列、販売している。鮮度と安全性を確保するために、大量の食材を長期間陳列することは避けている。

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