地球規模の医療で命を守る

インドネシア慈済病院にインドネシア初の骨髄移植センターが設立され、医療スタッフは花蓮慈済病院での研修を終えた。(撮影・アナンド・ヤヒヤ)

「貧困は病に起因し、病は貧困から生じる」状況を見るに忍ばず、慈済は一九七二年、花蓮市仁愛街に「慈済貧困者向け施療所」を開設した。

今では全台湾の八カ所に慈済病院、そして嘉義市に慈済の診療所がある。病院建設の初心をしっかりと守っている他、社会援助、人材育成、研究開発といった医療の使命も果たしている。半世紀にわたって築いてきた模範的医療は、地球規模で慈済医療が発展する上での基本となっている。

インドネシア初の小児骨髄移植

人口が二億七千万のインドネシアは、世界で四番目に多い国だが、千人あたりの病床数は 一・三六床と、世界平均の三・六床よりもはるかに少ない。 二〇〇二年に設立されたインドネシア慈済人医会(TIMA)は、二十一年来、百四十回余りの大規模な施療活動と五百八十回の小規模の施療が行われ、恩恵を受けた人の数は二十九万人余りに上った。そして、慈済インドネシア支部が首都ジャカルタに建設した病院は、慈済が海外で運用を始めた初の大規模な総合病院である。二〇二一年に先ず、防疫センターの運用を開始し、外来診察と入院業務を提供した。そして、運用開始から二周年を迎えた二〇二三年六月十四日に、コロナ禍により延期されていた開業式が行われ、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が招かれた。

二〇二三年十一月二十日、インドネシア慈済病院は、海の向こうから来た花蓮慈済病院チームの支援を受けながら、インドネシア初の小児骨髄移植を成し遂げた。重度のサラセミアを患った少女アッシファは、幸運にも弟のアルファティの白血球抗原(HLA)が一致した。父親がアルファティに付き添って、機器による幹細胞の収集完了を待っていた(写真撮影・メッタ・ウランダリ) 。

アッシファが移植手術を終えると、隔離病室の外から看護士と家族が声援を送った(写真撮影・陳俐媛) 。十二月十二日、移植は無事に成功し、無菌室から出ることができた。

慈済骨髄幹細胞センター設立三十周年

三十年間、慈済骨髄幹細胞センターは六千五百世帯余りに命の再生チャンスを提供した。造血幹細胞の活性化はドナーの年齢に伴って低下するため、ボランティアたちは血液検査の登録活動を続けることで、データベースを最新の状態に保つと同時に、ドナーへの付き添いや経済的に恵まれない患者家庭の支援を行っている。

一九九三年に設立。三十年の間に、三十一の国と地域に骨髄を提供。

二〇二三年十一月三十日の統計によると、六千五百八十二件の移植が完了し、その半数が台湾の患者である。

台湾国内の三十七カ所、海外の一千百四十九カ所の病院に継続してマッチングデータを提供。

ドナー登録者は四十七万三千百七十人に対し、マッチングを求めた患者数は六万八千九百六十八人。

二〇二三年三月、台北市大安区のボランティアが街頭宣伝を行った(上の写真撮影・蔡正勲)。七年ほど前、ベトナム籍のレ・ヴァン・イムさん(下の写真、右)は、仕事で台湾にやって来たが、急性白血病を患った。幸いマッチングに成功した彼は、ボランティアから日常生活の支援を受けながら、移植手術を終えることができた。十月七日、骨髄バンク設立三十周年記念の会場で、彼はドナーと対面して感激のあまり抱擁した(下の写真・花蓮慈済病院提供)。

評価された医療人文の模範

二〇二三年十一月、慈済医療法人は衛生福利部(厚労省相当)の「医療財団法人社会研究卓越賞」を獲得し、林俊龍(リン・ジュンロン)執行長が代表で賞を受け取った(上の写真・花蓮慈済病院提供)。これは慈済病院が長年にわたってへき地の医療に尽くし、社会的弱者を助け、国際支援をして来たことを、審査委員会が評価したものである。

慈済医療志業は、林執行長をはじめ、「台湾における救急医療の父」と呼ばれる花蓮慈済病院顧問の胡聖川(フー・スンツアン)医師らを含む数多くの医師が、厚生基金会主催の「医療貢献賞」を受賞した。そのうち、毎年一名にだけ与えられ、医学界における「終身功績賞」ともいえる「特別貢献賞」の二〇二三年の受賞者は、台中慈済病院の簡守信(ジエン・スォウシン)院長で、慈済医療志業で初の受賞者でもある。

三十五年にわたって慈済病院で奉仕して来た簡院長は、二〇〇一年から大愛テレビ番組「大愛医生館」のMCを務め、難しい医学知識を分かりやすく説明して日常生活と結びつけている。これまで二十年以上にわたって、六千回余りを収録した。また、ケア世帯への往診や海外での施療活動なども、簡院長にとって日常の一環となっている(撮影・荘慧貞)。

・八つの慈済病院における医療費の補助や免除対象者:延べ百四十八万四千九百五十一人。病院内に配置され、患者やその家族をサポートする医療ボランティア:延べ五万八千九百三十人。

・地域健康講座に投入した人数:千四百二十六回で延べ九千八百九十人、参加者‥延べ七万千四百四十五人。台湾全土に、認知症サービス拠点を十九カ所、記憶維持クラスを十一カ所開設し、三千九百十五人の年長者に寄り添った。

病院での治療に行けないへき地の人のために、慈済人医会(TIMA)が拠点を設けて百九回の施療を実施し、延べ四千三百四人に医療サービスを提供した。また、再診困難な人や、辺境の弱者延べ千二十六人に訪問治療を行った。(二〇二二年統計))

二〇二三年の統計データによると、慈済は世界五十八の国と地域で施療活動を行った。

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