高齢化する台湾・慈善の寄り添い

台南東山区にあるこの家で、隣人同士が世間話をしていた。辺鄙な地域では若者の就職が困難なため、年長者が人口の多くを占める。(撮影・黄筱哲)

二〇二三年一月から十一月までに各方面から慈済に連絡があったケアケースは、一万二千件以上に上った。ボランティアが毎月家庭訪問して長期的に援助しているケア世帯は延べ十一万世帯、在宅ケア世帯は延べ十八万世帯を数える。

慈済の慈善活動は既に五十八年の経験があり、台湾社会の少子高齢化の傾向とニーズに応じて、更に「予防」の概念を重視するようになった。即ち、転倒や障害予防、老化と社会への依存を遅らせる上で、台湾の長期介護社会福祉資源ネットワークにおいて、なくてはならない民間の力なのである。

手を差し伸べて高齢者の生活を安全なものにする

台湾は、二〇二五年には六十五歳以上の人口が総人口の二十%を超え、「超高齢化社会」に突入すると推測されている。慈済は二〇二〇年から台湾全土の町や村で、障害者や一人暮らしの高齢者に合わせた「安全な住まいと優しいコミュニティ」プロジェクトを展開しているが、その中の「住まいの安全性向上」項目では、滑り止めや転倒防止を主体に行い、事故防止に繋がっている。

事前の家庭訪問による調査を経て、二〇二三年二月、ボランティアは台南市東山区の高齢者の家を訪れ、手すりを取り付けた。取り付け工事を見ていたこの高齢者は、完成後に試しに使ってみた。(撮影・黄筱哲)

・対象:六十五歳以上の独居高齢者、高齢夫婦世帯、心身障害者。

・項目:
安全手すり、照明の調整、和式トイレから洋式への改造、滑り止め措置、浴槽の撤去、バリアフリースロープ等の環境改善、及び部屋の中の移動経路における潜在的な危険要因の調査と改善。 

・プロセス:村長や里長の連絡 → ボランティアによる家庭訪問調査 → 修繕工事 → 必要に応じた再訪問とケアの手配。

・統計:二〇二〇年から開始され、二〇二一年には二千世帯以上が恩恵を受けた。二〇二三年一月から十月までで延べ八千七百五十一人のボランティアが動員され、合計二千百三十九世帯で修繕を終えた。

・レベルアップ:各行政区にある慈済の長期ケア拠点とエコ福祉用具プラットフォームが連携することで、住み慣れたコミュニティで老後を送れるように取り計らう。

エコ福祉用具プラットフォームが一臂の力を貸す

現在、台湾の離島の一つである連江県を除き、慈済は台湾全土の各行政区にエコ福祉用具プラットフォームを設置している。ボランティアは福祉用具を回収し、整備した後、それを必要としている家庭に配送することで、介護者の負担を軽減している。

離島や辺鄙な地域では人口の高齢化が深刻で、福祉用具のニーズが潜在化している。金門の古民家前で、ボランティアはトラックから様々な福祉用具を下ろし、配送の準備をしていた。(撮影・蕭耀華)

新竹県尖石郷。いつも杖をついている女性の生活範囲が広がるようにとボランティアはシニアカーの操作方法を教えていた。(撮影・蕭耀華)

・プロセス:福祉用具の回収 → 消毒、整備、洗浄 → 在庫分類 → 申請の受け付け → 衛生点検 → 利用者へ提供。

エコ福祉用具プラットフォームは、二〇一七年三月に設立され、二〇二二年には全ての県や市で提供できるようになった。二〇二三年十一月末の統計によると、過去六年間で七万五百二十九件が発送され、四万六千九十一世帯を支援した。

・社会的投資収益率(SROI):このプロジェクトを換算すると、大衆は四億台湾元以上を節約したことになり、数量化指数は八十一・一八になる。即ち、一台湾元の投資に対して八十一・一八元の社会的影響力を生み出しているわけである。しかも、慈済ボランティアと電気工事専門ボランティアによる奉仕は、これらの数字に含まれていない。

リサイクルステーションは地域のケア拠点

台湾各地のコミュニティにあるリサイクルステーションは、高齢者たちの身近な社交場となっており、資源の分別で体を動かす以外に、ボランティアと交流でき、一部のステーションでは食事も提供している。慈済長期介護促進センターは、慈善と医療が融合する介護拠点を大部分のステーションに設置している。

桃園県蘆竹区長栄環境保全教育センターもコミュニティのケア拠点であり、ボランティアがお年寄りたちと脳トレゲームをしていた。(撮影・楊明忠)

台中市太平区にある長安リサイクルステーションで、ボランティアの許金蘭さんが回収された物質を整理していた(撮影・黄筱哲)。

台湾全土には合計七千百六十四のリサイクルステーションとコミュニティの拠点があり、九万千五百二十六人のリサイクルボランティアがいる(二○二二年の統計)。

台湾全土の十七の県と市には、長期介護Cの拠点が十一カ所あり、十三の県と市にはコミュニティケア拠点が八十八カ所ある。一部の拠点はリサイクルセンターと足並みを揃えている(二○二二年の統計)。

環境保全志業全体の社会的投資収益率(SROI)は、六・三で、一台湾元の投資で六・三元の社会的影響力を生み出している。ボランティアの無償奉仕も計算に入れると、百五十二・七元に達する。この効果は二○二三年四月にイギリスの社会的価値法の認証を得た。

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