簡単に食事を済ませ、仏法の香に浸ることに時間を費やす

毎朝六時、花蓮静思精舎の食堂(じきどう)の食卓には、温かくておいしそうなマントウが大きな皿に盛られている。その幸せな味は、マントウチームの愛の奉仕から来たものである。

「ピッ!ピッ!ピッ!」精舎の厨房の二階で、蒸し器のタイマーが鳴った。 ボランティアの李勇徳(リー・ヨンドー)さんと陳秋元(チェン・チユウユェン)さんが分業と協力の下に、一気に蒸し器の扉を開けた。「ポーン!」という大きな音と共に白い蒸気が吹き出し、マントウが出て来ると、甘い小麦粉の香りが鼻を突いた。

「蒸し器の中は百度の高温と高圧ですから、マントウが蒸しあがったら扉を一気に開けないと、中にある三百個のマントウはあっという間に萎んで変形してしまいます」と陳さんが説明した。

精舎には温度調節機能のある発酵機がないので、冬は蒸し器の後ろに扇風機を置き、その熱気を発酵機に向けて送ることで、マントウの発酵を促していたのである。

最も時間のかからないマントウを朝食にするのには理由がある。「上人は、精舎の師父やボランティアが時間を無駄にせず、仏法の教えを聞くことに期待しているのです」と、粗熱のとれたマントウの包装を手伝っていた徳(ドードウ)師父が笑顔で言った。

手作業の生産工程

毎月決まった日にマントウを作る!

作る三日前に徳宛(ドーワン)師父が老麺(前回の生地)を発酵させ、前日に徳椒(ドージャオ)師父が中種生地を発酵させておく。当日の早朝に材料を準備をする。朝食後に二十~三十人のボランティアがやって来るが、どの生地に何の食材を入れるかは既に決まっていて、順序正しく作っていく。

捏ね終わったマントウ生地は、生地プレス機で10数回重複してプレスすることで、表面がスムーズになって弾力性が出る。

季節に合わせて、牛蒡やセロリー、サトイモ、ナッツ、干しリュウガン、カレー粉などを加える。

生地を内側に巻いて細長く伸ばし、等分にカットする。

発酵が終わるのを待てば、蒸す準備ができた生地が出来上がる。

初心者からプロまで

元々、精舎の朝食は、お粥と数種類のおかずだったが、十数年前、證厳法師が、朝の日課や開示の時に全員が参加できるように、と思い、朝食を簡素化し、準備に必要な人数と時間を減らそうと考えた。

「以前、朝食は三十卓ほどでしたが、今は五十〜六十卓以上になっています」。「毎朝四つのおかずとお粥を作っていたら、何百ものお皿と箸、スプーン、それに鍋が必要になり、大量の水を使って、野菜と食器を洗わなければなりません」と、徳椒師父が言った。

初期の頃、厨房担当の師父は朝三時に起床していた。

「当時は竈で薪を焚くため、準備に多くの人手と時間をかけていました。その後、スチームクッカーを使って料理するようにはなりましたが、テーブル数が増えるにつれ、やはりとても大変でした」。

法師が朝食の簡素化を提案すると、徳曉(ドーシャオ)師父は数人の師父たちとマントウの作り方を研究し始めた。当初は、当日に発酵させて生地を作り、機械で切っていた。しかし、そうやってできたマントウは、見た目にも口当たりも良くなかった。ある日、ボランティアの林順発(リン・スンファー)さんと徳宛師父が生地をこねていた時、経験豊富な林さんが、「試しに中種生地を使ってみたらどうでしょうか」と提案した。そして出来上がったマントウが、美味しく出来上がったのだ。

その後、高雄でパン屋を営むボランティアの李少邁(リー・スァオマイ)さんが、徳宛師父に老麺生地を使ったマントウの作り方を教えた。師父たちが研究した結果、中種と老麺を使ったマントウは、風味が良くなるだけでなく、モチモチして美味しく、健康に良いという予想外の結果が得られた。チームの研究が実ると、業務用蒸し器で作ったマントウの品質が安定し、食卓に出すのに十分な量のマントウも作ることができるようになったことで、徐々にマントウが朝食の主食になるようになった。

喜んで衆生を供養する

「初期、地下室でマントウを作っていた頃は十一~十二人ほどでしたが、今は人数が増えました。多くの人が六十代から七十代で、八十代の人もいますが、皆、働けることに大きな喜びを感じています」と、宜蘭のボランティアである陳春桂(チェン・ツゥングェイ)さんが言った。同じく宜蘭のボランティアである蔡素琴(ツァイ・スゥーチン)さんは、嬉しそうにこう語ってくれた。

「精舎に帰ってマントウ作りをするのは、まるでバカンスに来ているようで、心の充電になります。帰るたびに、次の月が待ち遠しくなります」。

マントウ・チームには、劉鐙(リュウ・ドン)さんと宜蘭の十数人、そして彰化の黄志清(ホワン・ヅーチン)さん、葉東壬(イエ・ドンレン)さん、台北、台中、台南、高雄、台東、花蓮などからのボランティアが参加している。皆、「マントウ作りで大衆を供養する」良縁を大切にしている。

休む間もなく緻密な作業工程で、次々と蒸し上がるマントウを仕上げ、二日間かけて約一カ月分のマントウを作って冷凍保存する。毎朝、交代で厨房当番する師父が、朝の日課が終わった師父やボランティアたちの食事のために、それを冷凍庫から取り出して蒸し、食卓に出す。また、師父は、恭しく法師にも出来立てのほかほかのマントウを持っていく。

精舎の師父の真心とボランティアの気持ちがこもったこのマントウは健康的な上に、大衆の慧命を育んでいる。

(慈済月刊六八九期より)

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