誰のために席を譲るのか

問:

社会では公共交通機関で席を譲るかどうかに対して、世代によって考え方が違います。教師として、このテーマをどのように子どもたちと話し合えばよいでしょうか?

答:近年、学生や若者が高齢者に席を譲らず、トラブルや不快感が生じたというニュースをよく聞きますが、社会でも論議を呼んでいます。

では、個人主義が重視される現代において、教育従事者はどのようなことができるのでしょうか。

現代の道具をうまく利用する

新世代の子どもたちはデジタル機器と共に育ちました。もし、ショートムービーの力を活かせば、「事半功倍」の効果を上げることができます。

「冷淡な人」というタイトルの短編映画の内容は、とても意味深く、私はそれを生命教育の教材としてよく使っています。「或る上流階級の青年はいつも顎を上げ、鼻を上に向けて傲慢な態度を取り、近所の人とも交流せず、お年寄りが転んでも助け起こすことはありませんでした。ある日、彼が道路を渡ろうとした時、一人の老婦人が彼の腕をぎゅっとつかみました。その後、老婦人はにっこり笑って「ありがとう」と言いました。その瞬間、青年の心に触れるものがありました。その日から青年は進んで人助けするようになり、多くの人から「ありがとう」と言われるようになりました。やがて地域の人にも好かれ、誰からも愛される隣人へと変わったのです」。

この映画を見終わった後、私は生徒を二組に分けて演じてもらっています。一組は「傲慢な青年」、もう一組は「人助けする青年」を演じます。その後にディスカッションをすると、ほとんどの生徒が「人助けする青年」の方が好きだと答えます。「だって、そういう人の方が人気者だから」、「笑顔のある人のほうがいいよ、冷たい人はいやだ」。

子どもたちの反応を聞いて、教育の目的を少しは達成できたと感じました。しかし、人格教育はすぐに身につくものではなく、先生たちの忍耐が必要です。映画の場面を通じて生徒たちに考えて、意見を共有してもらうことで、きっとかなりの効果が出ると思います。

さまざまな意見に耳を傾ける

教師は、クラスで「席を譲るべきか」というテーマを取り上げ、生徒それぞれの意見を聞いてみるのもいいでしょう。

私のクラスで生徒たちに、この話題をディスカッションしてもらったことがあります。ある生徒は、「〝博愛座(優先席)〟をなくすべきだと思います。どの席でも、本当に必要としている人に譲ればいいからです」と言いました。別の生徒はこう考えました。「台湾では席を譲るという文化が浸透しているけど、時にはそれが〝差別〟のように感じられます。〝博愛座〟という名称を〝優先席〟に変えた方がいいと思います」。

また別の生徒は、次の例をシェアしました。「韓国・釜山の地下鉄を見習ったらどうでしょう。彼らは〝ピンクライト〟という優しい措置を考えました。妊婦さんが専用のマークを身につけ、手すりの感知器に近づくと音が出て、周囲の人に席を譲るよう知らせるのです」。さらにこんな意見もありました。「体調が悪い時も優先席に座っていいと思います」。

また、今の社会を懸念する声もありました。「今の子どもたちは、他人や生命を尊重する気持ちが薄れており、人の苦痛を理解できないのではないか」。その時授業で出た意見は様々でしたが、最終的な結論は、大多数の人が「〝席を譲る〟ことに賛成。なぜなら、席を譲るのは〝思いやり〟だから」というものでした。

これからの人生が幸福になるかどうかは、決して今の学業成績で決まるものではありません。神経科学者の研究によると、人を助けた時、脳内には〝プロラクチン〟というホルモンが分泌され、さらに〝ドーパミン〟や〝エンドルフィン〟の分泌も促します。このドーパミンとエンドルフィンこそが、私たちに「幸福感」をもたらす源なのです。

證厳法師の静思語をご覧ください。「奉仕することは最大の収穫です。なぜなら、与えることができる人は、与えられる人よりも幸福だからです」。この言葉は、奉仕することのみがより多くの喜びと幸せを得ることができる、ということを意味しています。

(慈済月刊七〇七期より)

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