熱帯雨林は 誰のために燃えているのか?

肉食を減らすことと、肉を食べないことは、環境破壊や異常気象の現象とどのような関係にあるのだろう?

消えゆくアマゾンの熱帯雨林が、その答えを教えてくれている。

二〇一九年、アマゾンの熱帯雨林は数か月にわたって国境を超えた大火に見舞われ、国際的な関心を集めた。そして二〇二〇年の今日、火の勢いは昨年より更に激しくなっている。ブラジル国立宇宙研究所のデータによれば、アマゾンの熱帯雨林では、今年八月までに七万件を越える火災の発生が記録された。一部自然発生であるものを除いて、出火原因の多くは人為的なものである。伐採後の湿った木材を一定時間乾燥させた後に燃やし、その土地を牛の牧畜や経済作物の栽培のために開発している。ブラジルは牛肉の輸出大国である。NGO団体「トレース(Trase)」のデータによれば、肉類加工業のうちの一社だけでも、毎年二・八万から三・二万ヘクタールの熱帯雨林を破壊していることになるという。

「多くの人が『地球の肺を守ろう』と訴えていますが、それは誤解です。実はアマゾンの熱帯雨林が生み出す酸素と排出される二酸化炭素は、ほぼ同量で相殺されているため、世界の肺と呼ぶのは不適切なのです」。熱帯雨林の重要性を人々に理解してもらうため、国際環境団体グリーンピースでアマゾンの森林保護を提唱するアドリアナ・シャルーさんは、昨年慈済アメリカ総支部のチームが訪問して取材した際に、「アマゾンの熱帯雨林は『地球のエアコン』と呼ばれるべきです」と説明している。

2019年アマゾン熱帯雨林における大火の航空写真。(撮影・Victor Moriyama、グリーンピース提供)

イェール大学林学・環境学大学院によれば、樹木は根や枝を通して地中の水分を大気中に放出し、大気の温度を下げてくれる。一本の樹木による冷却効果は、二台のクーラーを二十四時間休みなく稼働させた時に等しいという。

三千九百億本余りの樹木を擁するアマゾン熱帯雨林が空気中に送り出す水分は、風に乗って壮大な大気の川となって他の地域へ運ばれ、冷却されて再び大地に降り注ぐ。「樹木がなければ水はなく、水がなければ雨はなく、雨がなければ食糧はありません」。アドリアナさんは、大気の川がラテンアメリカ諸国にとっていかに重要であるかを語った。「ラテンアメリカ諸国は今まで水不足を経験したことがないため、人々は雨水を当然のものと考えていました。それが今では雨季が短くなり乾季が長くなっていることに、農家はみんな気がついています」。

熱帯雨林のもう一つの重要な機能は、温室効果ガスを貯蔵することである。

科学者の統計によれば、地中に含まれる炭素の四~五割は世界の森林に存在しているという。アマゾンの熱帯雨林は八百~一千二百億トンの二酸化炭素を貯蔵しており、これは化石燃料業界の十三年分の総排出量に相当する。森林の伐採や焼却により、貯蔵されていた炭素が短時間で大気中に放出されるだけでなく、土地の炭素吸収効果自体が低下し、気候変動を加速させている。

熱帯雨林を救うためには、今すぐ行動しなければならない。政府が長い時間をかけて政策を変更するのを待たずとも、自分がまず牛肉を食べる量を減らすことならできるはずだ。

アドリアナさんによれば、アマゾンの熱帯雨林で活動するグリーンピースのメンバーたちも初めはベジタリアンではなかったが、熱帯雨林の破壊について知るにつれ、誰もがベジタリアンになったという。「私たちの食習慣を変え、動物性たんぱく質の摂取を減らし、植物性たんぱく質を多く選ぶようにすれば、熱帯雨林を助けるだけでなく、私たち自身の健康にとっても良いのです」。

熱帯雨林の大火は地球環境崩壊の一端に過ぎない。肉食のかわりに植物性の食事を好む人が増えれば、環境にやさしい農作物への需要が増え、企業や農家もそれらの生産に力を尽くすようになる。それは、地球の命である森林の永続を共に守ることにつながるのだ。


(慈済月刊六四七期より)

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