編集者の言葉
秋に発生した九一八池上地震から一カ月余りが過ぎた頃、慈済基金会は緊急支援と訪問ケアを終了し、台湾全土から専門家を集め、ボランティアチームを結成して住宅を修繕すると共に、四校の校舎の修繕を引き受けた。十一月中旬には住宅百六十戸余りが竣工し、台湾全土において建設工事の人手不足の中、被災地の人々の差し迫った状況を緩和することができた。
被災地は断層が交差する地点にあって、頻繁に地震が起きている農村地帯であるため、警戒しなければいけない現状が浮かび上がった。一九八○年代以降、台湾はグローバル資本主義の波の下に経済変革を遂げ、農村人口の流出によって伝統産業が衰退し、公共建設の遅れも影響して都市と農村の格差が拡大すると共に、農村の人的ネットワークの弱さがますます顕著になってきた。
労働人口不足と農産物の商品化という消費傾向に対応するため、大量の化学肥料や農薬が使われ、作物の種類が集中するようになった。また観光業を発展させるために、自然環境に大きな負担を課している。休耕農地が増加し、高齢化による農業従事者が減少していることからも、食糧自給率不足が懸念される。これらの要因は、災害が訪れた時、都市の防御壁として機能するはずの農村地帯をより脆弱にさせており、それは経済の発展を優先する時に多くの国が抱えるジレンマでもある。
頻繁に起きる天災と人口の高齢化は、都市部と農村部の双方が直面している共通問題である。突然起こる様々な災害に対しては、災害後のコミュニティの迅速な復元力を培う必要がある。復元力は、住民がお互いに密接に連携し合い、相互信頼による「共生」コンセンサスを持って、全面的な社会のセーフティネットを構築し、最も底辺に生きる社会的に立場の弱い人々に手を差し伸べることで成り立つ。防災だけでなく、長期介護サービスなどの地域課題も含まれ、中でも「復元力」が持続可能な地域作りを促す一大キーポイントなのである。
今回の震源地である台東県池上郷は、参考に値する例である。池上郷も同様にアンバランスな人口構成というジレンマに直面していると共に、一九九○年代に台湾がWTOに加盟した後、農産物の輸入による衝撃を受けており、一部の農家は有機稲作に転換して、収穫量よりも高品質を目標に「池上米」の認証を得て、収入を増やし、地元農家としての栄誉感を高めている。
さながら資本主義社会の中のユートピアのように、池上郷の住民は積極的に公共事務に参加し、過去に何度も外来の経済開発を阻止し、良好な自然環境を守り、更に観光を促進して来た。農家は土地に対する情熱でもって、土地は次の世代から借りて使用しているものであり、土地資源とエネルギーを消耗してはならない、と固く信じている。
普段、住んでいるコミュニティで慈善ケアに取り組み、慈済基金会は引き続き防災士の養成を行っている。今年は一歩踏み込んで、寄り添いボランティアの養成と認証を行ってきた。
人助けや災害支援などの基礎的な専門訓練は、慈済ボランティアに一歩踏み込んだケアサービスを根付かせるだけでなく、コミュニティの復元力に支援の力を注入している。
(慈済月刊六七三期より)