【進化した慈善活動】寄り添いボランティアのデビュー

心して行うことが即ちプロ

「苦しみの声を聞いて救いの手を差し伸べる」精神と「誠実な愛」は、慈済ボランティアとしての基本的な条件である。様々な家庭、年齢、背景を持つ彼らは、時代の変化と社会の進歩、そして政策に遅れずついていくことも必要である。

慈済は初めて、「寄り添いボランティア」の養成講座と認定制度を開始した。プロという領域を通じて、慈善活動をより完全なものにするためである。

「突然の災害に対して、私たちは準備ができているのだろうか」、「被災者の家族に最も適切なケアを提供するためにチームの力をどのように使うべきか」という二つの問題について、二〇二一年の「0402台湾鉄道タロコ408号列車事故」の後、慈済基金会慈善開発室のスタッフは考え続けた。悲惨な災害現場では、専門的に訓練されたレスキュー隊員や消防士でさえ耐えられなかったのに、ボランティアは尚更である。

奉仕したい思いでやって来たボランティアの能力を伸ばすにはどうすればよいか?基金会は地方自治体と積極的に協力関係を結び、二〇二〇年から「防災士」の養成講座を開設した。ボランティアは専門的な訓練に合格すると、国から認定される防災士になることができる。更に二〇二二年には、教育部と衛生部、消防署、民間の防災・社会福祉団体と協力して、「寄り添いボランティア」の養成講座を開設した。

慈済の提案によるこの講座は、二〇二二年六月下旬に初めて台湾全土で開催され、すでに千四百人以上が参加した。以前、ボランティアによる「機会があれば参加し、状況に応じてケアし、自分で学ぶ」から「チーム方式、共同作業、認定を伴う訓練」に変わろうとしている。

災害が発生した時、寄り添いボランティアが主に活動する場所は、災害現場、葬儀場、病院、避難所などである。講座では大規模災害状況に対応した模擬質問を通して、どの部署や担当者と連絡して調整を行うべきかを学ぶ。深く参加者の記憶に留まるので、様々なケア作業がスムーズに進むのである。

「今の時代は知識が爆発的に増えています。慈済のロゴは既に国際化しており、外部は私たちに大きな期待を寄せています。ボランティアは愛と情熱だけではなく、災害時に役立つ専門知識を身につけなければなりません」。講座で説明する講師の話を聞き、参加者に提供される情報と照らし合わせながら、シニアボランティアの游美雲(ヨウ・メイユゥン)さんは、授業に集中して、ノートを取りながら、慈善の道がより深く、より広い領域に進むことを期待した。
ボランティア奉仕の倫理と法律、寄り添いボランティアの自己覚知と付き添いスキルなどの基礎課程を含む養成講座は、合計三十時間を要する。特殊課程には、社会福祉と災害管理、心の応急処置、グリーフケア、ケースディスカッション演習などがある。

三十年近く桃園エリアで訪問ボランティアをしている陳玉美(チェン・ユーメイ)さんは、證厳法師の教えの下に行って来た慈済の慈善志業は逸脱していないことが証明されているが、寄り添いボランティア養成講座によって、今後、ケア世帯により柔軟に寄り添っていくことができるようになる、と言った。「『耳を傾ける』というのは、重点を捉え、こちらから急いで口を開かないことです。これは多くの人が学ばなければならない重要な課題です」。

「私たちは、普段持っている心の強さが、災害時に試されるのです」。ある日、重大交通事故の遺族に付き添っていた時、屏東から駆けつけたその母親は泣き続けるだけで何も言葉にならなかった。その時、陳さんは講師が話していたように、まず適当な頃合いを見計らってティッシュペーパーを手渡し、寄り添って相手の言葉を待った。やがてその母親は、二年の間に続けて四人の肉親を失ったことをゆっくりと語り出した。

慈済基金会のCEOである顏博文(イエン・ボーウェン)氏は、災害支援には宗教師、ソーシャルワーカー、寄り添いボランティアの三者が連携して共同ケアする必要があると述べた。「大規模災害現場は状況によって、ボランティアも心の準備ができていないために心に傷を負う時があり、精進する必要があるのです。そうすれば、大災害が発生した時に、より多く準備ができているようになります。訪問ケアも同じで、一層精進して、専門的になることで、慈善活動を更に完璧なものにすることができるのです」。(資料の提供・朱秀蓮、游采潔、彭鳳英、陳秋華、陳美慧、陳素蘭、何錦霞、陳秀貴)

(慈済月刊六七三期より)

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