時代から置き去りにされないよう、精進し続ける

918池上地震の後、顔執行長(右)とボランティアが花蓮玉里鎮の被災者のもとを訪れた。(撮影・鄭啓聰)

気象災害と人道危機に対して、多くの人が(生活様式の)転換を主張する中、私は、證厳法師の教えの下で、慈済では数多くのことを既に長い間行って来ていることに気づいた。慈済の「人心の浄化、平穏な社会、災害のない世の中」という三つの願いは、国連の十七項目の持続可能な開発目標と密接に関係している。私たちは時代と共に、永続的な影響力を発揮し、「感謝、尊重、愛」を主流にしなければならない。

ここ三年余りの間、世界は新型コロナウイルス感染症だけでなく、気候変動による天災が絶えず発生し、気候難民は増え続けている。ある国際調査によれば、各国のリーダーが今の世界で最も憂慮していることの順位は、インフレと貧富の差の拡大、そして貧困である。また、最近のことでは、政治的衝突から難民となった大勢の人々が路頭に迷っていることを挙げている。

「菩薩は因を畏れ、衆生は果を畏れる」というこの現象が起きた原因は、一体どこにあるのだろうか。それは、過度の経済成長により引き起こされた気候変動や人類の争いの延長にある戦争などに起因する。多くの人が、ネットゼロによるエネルギーと産業、生活様式、そして社会の四大転換を呼びかけている中、私は、證厳法師の指導の下で、慈済は既に数多くのことを長期間行って来たのだと気づいた。

企業の持続可能な経営方針として強調されているのは、ESG、即ち環境保護、社会責任及びガバナンス(Governance) の三つだ。慈済のESGのうち環境面では「環境保全の一体化」を打ち出し、回収資源から精緻なエコ製品を再製造し、得られた利益で人文志業を支えている。そして、より多くの環境に優しい内容を報道することで、そこから二つの循環、「経済の循環」と「精神的な循環」を形成している。

「地球の愛護、介護要らずの健康」の画像にリサイクルボランティアの姿が見られるだけでなく、完備された慈済のリサイクルセンターは環境教育にもなっており、一部では福祉用具の循環使用、保健衛生、長期介護C拠点、食事などを提供するサービスなど多元的な機能を備えている。

社会の持続可能な行動の中でも、慈済の慈善ケアは人生全体やその家庭、あらゆる年齢層にまで及んでいる。コロナウイルスの感染が蔓延する中、生活困窮者へ安全な居住環境を提供する修繕プロジェクトが増え、慈済は防疫物資の支援以外にも「コロナ禍支救プロジェクト」を始動させている。また、気候変動に応じて、とりわけ防災や減災、災害への備え、災害後の対応、復旧、長期的な再建に力を入れている。

慈済は普段から、災害ケアと慈善訪問に取り組み、将来、「三者連携」の実現に取り組んで行く。即ち、緊急災害支援の時、宗教師、ソーシャルワーカー、寄り添いボランティアが一緒になって、ケースに合わせて的確に奉仕することを指す。

防災士の役割は極めて大事であり、将来的にコミュニティーの災害防止と救済活動は、認証を受けた防災士が行うことになり、それ以外は被災現場に入ることができなくなる。慈済基金会は、防災士、寄り添いボランティアの養成講座と認証制度を推進しており、学界、政府各界からも大いに賛同を得ている。

慈済基金会はこの二年間で、既に離島の澎湖を含めた二十一の県と市政府との間に「共善における協力」覚書を交わした。また環保署、水利署、消防署、国家災害防止センター(National Science & Technology Center for Disaster Reduction)、中央気象局、工業技術研究院等十四の専門機関と契約を交わし、各専門部門が今まで以上に社会貢献をしていきたいと考えている。

国際慈善志業の面では、世界二十一のNGO組織、例えば、国連環境計画、国際カリタス基金会、世界宗教信仰機関、世界人道支援機関、国連世界保健機関などと提携して「共善」していくことにしている。互いに協力し合い、宗教や分野を超えて、支援の必要な人をサポートする体制だ。

慈済は、そのガバナンスから短・中・長期計画を制定し、二〇五〇年までにネットゼロが達成できることを期待している。行政院は二〇二一年に「カンパニ―ガバナンス3・0」を打ち出したが、慈済自身も志業の土台を安定させるため、「志業ガバナンス3・0」を推進し、その中で五つの重点を強調している。董事会(取締役会)の役割、情報の透明化、利害関係者を即ち「公益重視者」とみなすこと、受託責任を持つこと、そして持続可能なガバナンス文化である。

慈済は、近年立ち上げた「世界青年オンライン学習伴走サポート」や「世界青年フォーラム」、「青年公益実践プロジェクト」をアジア各地で展開し、「グローバル青年リーダー人材育成」と、台湾で若い世代が着手している「リサイクルステーション2・0」のリニューアルなどと共に、グローバルな視野と公益イノベーションによって人材を育成し、持続可能な力を注いでいる。

證厳法師は、生涯を仏教の為、衆生の為に費やし、毎年「人心の浄化、社会の安寧、災害のない世」という三つの願をかけている。慈済は四大志業を通して世界で力行しているが、それは正に国連十七項目の持続可能な開発目標の意義を実践していると言える。私たちは、生態環境が健康を取り戻し、「感謝、尊重、愛」が主流になるように、精進し、永続的にその影響力を発揮し続けなければならない。

(慈済月刊六七三期より)

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