(絵・陳九熹)
愛の心は日々途切れてはいけません。普段から小さなお金を節約して貯めるのです。
生活に影響せず、少しずつでも貯めればかなりの額になり、世の苦難を救う力になります。
毎日、どのお寺でも、夕方のお勤めでは必ず、〈普賢菩薩警策文〉を唱えます。「一日が過ぎ去れば、命は水が少なくなった魚のように、一日分縮む。こう考えると人生は楽しいことがない」と。そうです、人の世で何が楽しいのでしょうか。異常気象や脆い大地、長い間、貧しい生活をしている人々など、悲しみや苦しみは尽きません。また、人の心に起きる争いや国同士の残酷な戦争によって、多くの人が住む場所を失っています。
生きていると、出会いと悲しい別れを繰り返し、多くの無常を経験します。シリアの国境に近いトルコ南部で、二月六日の早朝に強い地震が発生し、三十四万棟の建物が損壊し、四万人が亡くなりました。さっきの一秒と次の一秒の間で、様子が全く変わってしまいました。凍てつくような寒さの中で、家々は破壊され、絶え間ない余震に怯え、一日が一年のように感じられます。「悲しい」時間をやり過ごすのが困難なだけでなく、ショックと恐怖、苦しみ、被災等々、耐えられないほど辛いのです。
地震が発生する前は、安らかに眠り、楽しい夢を見て、明日を迎える準備をして将来の人生を夢見ていたかもしれません。しかし、人生は夢の如し、と言われるように、その夢は覚めないうちに破れてしまい、所有していた一切が無に帰してしまいました。最愛の人との生死の離別を経験し、この世は煉獄になってしまいました。口では言い表せない苦しみ、声に出すこともできない悲しみを形容する言葉として、「心が粉々になった」と言うしかありません。
慈済人がいるイスタンブールは、被災地から千キロ以上も離れているため、大量の物資を輸送するのは、口先で言うほど容易ではありません。しかし、慈悲心は願力を啓発し、摂氏零度という低い気温の中、慈済は直ちに行動を起こし、冬物を送ろう、と心力を尽くしました。凍てつく寒さにある人たちが最も必要とするのは、温かさであり、それは世界で苦難にある人たちが慈済のエコ毛布を受け取った時に感じるのと同じ温かさなのです。
今の極端な異常気象により、寒冷地方はさらに寒くなっています。去年から私は毛布をさらに厚くするよう提案しました。地震が発生してから先ず、八千枚余りがトルコに空輸されました。私はいつも言っていますが、慈済人が力を合わせていることに感謝しています。リサイクルボランティアがペットボトルを回収して分別し、紡績工場で再生し、ボランティアがそれを裁断して縁を縫い、包装します。長年、皆さんが奉仕し続けているため、普段でも十分な量が備蓄でき、いつ、どこで苦難や災害で必要になっても、途切れることなく供給できるのです。
駐台北トルコ貿易事務所は物資を募る計画を立ち上げ、慈済内湖連絡所で物資を集荷して欲しいという要請がありました。台湾には愛の心を持つ人が実に多く、愛が泉のように湧き出し、被災者の苦しみを和らげたいとの思いで、次々と物資を購入しては送って来ました。ボランティアが受け取りと分類、箱詰めを行いました。北部の香積(調理)チームは毎日、数千人分の弁当を作って、彼らに体力をつけました。
慈済の災害調査団は既にトルコに到着し、現地で物資を調達して配付することで運送費を節約すると共に、被災地に商機をもたらしながら、評価を続けました。慈済は緊急支援すると同時に、被災者に安心して住める場所と生活を提供できるよう、中長期的な再建も検討しています。誰もが大きく発心して、トルコ慈済ボランティアの後ろ盾になってくれることに期待しています。愛は広く世間に行き渡らなければならず、人と人が互いの力で協力し合い、その力が長い情となって、両手を広げて大愛を広めていくのです。
毎日、心配事は尽きません。その憂いとは、世の中の困難、貧困、災難、人心の不調和などです。衆生は煩悩が起きると、無明が長期にわたって蓄積し、環境破壊で災難をもたらします。私は、どうすれば人間(じんかん)が平安になるかを絶えず考え続けています。それらは衆生の共業であるとは言っても、衆生は共に福を造ることもできるのですから、これ以上、禍を起こさず、人間(じんかん)に福を作れば良いのです。
毎日、少しでも多くの福を作れば、愛の心も日増しに大きくなります。「私は今日善いことをした。明日はもっとたくさんして、幸福と智慧が増すようにしよう」と、毎日自分を励ましましょう。普段から小銭を貯めても生活には影響しません。それが貯まれば、かなりの額になり、緊急の時に役立ちます。自分のために福の種を蒔いて、福の縁をつなぎましょう。奉仕する人が多い程、幸福は大きくなり、その福が集まって世の中を護り、平穏にするのです。
自分の人生を点検しましょう。どれだけ人間(じんかん)を利したか、そしてそれを未来に続けるのです。また、毎日善念と間違った悪念のどちらが多かったか、常に自分の心を確かめましょう。一時の失念は、一滴の墨が清水の盆に落ちるようなもので、瞬く間に水を染めてしまいます。過去に過ちがあれば、直ちに懺悔して改め、人生を汚染しないようにしましょう。心の中で綱引きが起きた時、善の方に引っ張らなければいけません。
四大元素(地、水、火、風、)の不調和で、国土は危険にさらされ、瞬時に無常が発生するというのが仏法の真理であり、これが「大いなる教育」なのです。人々に覚悟と警戒心を高めるよう訴えています。片時も無駄に過ごさず、苦しみの声に手を差し伸べ、すかさず支援しなければなりません。一人だけで善行するのは寂しく、広く人間(じんかん)菩薩を募って、一緒に行うことで、愛に満ちた平和な社会ができます。私たちの慈悲の船が世界に通じ、広く衆生を済度して、心の苦しみと生命の危機から解放してあげられることを願っています。皆さん、心して精進してください。
(慈済月刊六七六期より)