良い縁を結んで、煩悩を断ち切る

自分を利する前に他者を利しましょう。
良い縁を結ばなければ、煩悩は永遠に消えません。

戒律を守れば、仏門入りを後悔することはない

九月十五日、受戒する直前の弟子十一名が受戒会場に向かうため挨拶に訪れた時、上人は次のように開示しました。「その場所は懺悔の場とも言います。何故懺悔が必要なのでしようか。皆さんはいつの世に生まれ変わっても、非常に多くの習気を蓄積し、多くの業を作ってきました。しかし、発心立願して出家してから、自己浄化を始めました。そして、既に仏道を歩む心は揺らぐことがなくなり、受戒に行くことを決意しました。これは出家して仏門に入るという方向を自ら正しいと認識し、永遠に後悔しないことを表しています」。

「受戒するには戒律を守る決意が必要です。出家した当初のように、菩薩道に励む目的は、仏の教えを学んで悟りを開くことです。仏法を学ぶことが私たちの初心であり、修行する時間がその過程です。ですから、受戒したら、永遠に後悔しないことです。仏門に入るなら、戒律を守り、仏法とは何か、何をしたら戒律を犯すのかを理解する必要があります。戒律を守るのですから、仏法に反することはできないはずです。その決意がなくてはなりません」。

「その会場にはあらゆる方面から集まった修行者がおり、各自が修行理念を持っています。静思道場は世間から離れていても、再び世に出て衆生を悟りに導き、他者を利してから自分を利するのです。というのは、この一生で修行が完成するわけではないため、この人生では『人と良い縁を結ぶ』しかなく、同時に煩悩を断つのです。良い縁を結ばなければ、永遠に煩悩を断つことはできません」と上人は指摘しました。

「生まれ変わる中で、私たちは衆生と縁を結んできましたが、良い縁もあれば、悪縁もあります。良い縁を結んだ人たちはその出会いを悦び、悪縁による出会いであれば、人は心に無明が生じ、無明は益々膨れ上がります。この道理を理解すれば、先ず耐えることを学び、他人からもたらされる逆縁に耐えるのです。『縁に従って古い業を消し、新たな苦しみを作るなかれ』と言われます。過去に結んだ悪縁や逆縁に遭遇した時、心をしっかり守って、悪を善に転じさせなければなりません」。

「受戒した後は、正式な出家人となります。私たちには慈済の宗旨と法門があり、自分に対しては世に出ることを課し、人間(じんかん)という実社会に溶け込んで活動するのです」。

先日、精舎の師父と清修士(有髪の出家人)が世界宗教会議での「證厳法師の思想と実践」セミナーに参加するため、アメリカに向かいました。上人は、「清修士が私たちの修行の主旨を説明すると、会場にいた参加者は、慈済が立宗したことと慈済の宗旨に対してとても好感を持ってくれました。これこそが私たちの社会に対する影響だと言えます」と語りました。

また上人は、静思法脈の修行道場は静思精舎にあり、静思家風は「自力更生」である、と言いました。「私たちは世間と争いませんが、慈済宗門は人間(じんかん)に対して開いたものであり、世の出来事に関心を寄せています。『仏教の為、衆生の為』が永遠に私たちの歩む方向であることを忘れてはいけません。即ち、『静思法脈勤行道,慈済宗門人間路』です。静思法脈は仏教の為に法脈を伝承し、慈済は衆生の為に誠意のある奉仕をしている世に溶け込んだ宗門なのです。現代人は教育程度が高く、世の出来事に対してとても多くの知識を持っています。私たちの法門に入り、知識を智慧に変え、自分を守って、衆生を利してもらうのです」。

慈済志業の為に人材を留める

病院と学校の懇親会の会議が九月二十八日に精舎で開かれました。その日は「教師の日」でしたので、教授や教師、医師たちが上人の前で謹んで教師の日を祝いました。「慈済の四大志業はこの数十年来、安定して発展してきました。医療と教育は初期の頃、大変苦労しましたが、私はその二つの志業でとても良い縁があって恩人に恵まれ、慈済を続けて正しい方向を進むことができました。誰もが心を一つにし、生命を守る医療と慧命に関する教育を行い、台湾でその良能を大いに発揮して模範となることができたことに感謝しています」。

「慈済は教育志業を始めて三十四年になります。慈済看護専門学校は二年制で学生の募集を始め、その後、五年制の看護科と四年制の医療技術科を開設し、数多くの優れた看護人員を育ててきました。花東地方に看護の人材を増やしただけでなく、西部の病院や海外にまで出て奉仕をしている卒業生もいます」。

「私たちは人材を育成すると同時に、慈済の志業にも人材を留めていかなければならず、『情(人情)』を以て定着させる必要があります。慈済の学校の教師たちは誠意を込めて心から学生たちをケアしており、教師と学生の関係は、親が子供を導くように心を通わせているため、教師が学生に慈済に残るよう促すのです。卒業後も慈済志業で奉仕できれば、その情は永く続きます。各地の慈済病院の看護部が時間を作って学校に出向き、学生と交流することもしています。私たちが自分たちの子供を育てるように真心で接することで、人材が定着していくことを期待しています」。上人は、学校と病院、四大志業が心を一つにし、共に慈済学校の人材を大切に育てていくようにと期待を込めました。

近頃、頻繁に慈済学校や慈済病院が賞を獲得していることを聞き、上人はこう言いました。

「地域性のものであれ、世界的なものであれ、賞を獲得するということは認められたことなのです。そして、病院の『査察評価』は自分を振り返る良い機会ですから、皆が心を合わせて協力し、普段からの奉仕の質や誠意で患者をケアする心構えと行動を示せばよいのです。慈済病院のレベルはとても高くなりました。私はいつも皆さんを信頼していますし、本当に認められる価値があると思っています。皆、四大志業一体を心がけていますから、その精神を維持し、心を合わせて協力すれば、様々な困難や挑戦を乗り越えることができるのです」。

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