持続可能な教育の新たな道のり

編集者の言葉

今年の八月、慈済慈善事業基金会の顔博文(イェン・ボーウェン)執行長が、「2024 SDG Asia」の「最優秀持続可能性のチーフ・オフィサー賞」を受賞した。これは、大林慈済病院の林名男(リン・ミンナン)副院長が昨年同じ賞を受賞したのに続く栄誉である上、医療と慈善志業についても、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から慈済が持続可能な発展を目指して活動し、力を合わせて成果を上げていることが高く評価された証しだと言える。

この賞は、台湾持続可能エネルギー研究基金会(TAISE)が主催し、各組織が革新的な戦略と実践的取り組みを通じて、国連が推進する持続可能な開発のための十七の目標(SDGs)に対応している事を評価したものである。国連は、「地球は沸騰の時代に入った」と指摘した。最近の異常高温は非常に実感できることであり、SDGsで定められた二〇三〇年まで僅か六年しか残っていない。

慈済では、慈善志業と医療志業の活動が人類と地球の持続可能性に積極的に取り組んでいるだけでなく、八月には慈済教育志業が新たな道のりへと踏み出した。慈済大学と慈済科技大学の統合が完了し、高等教育の最適化だけでなく、持続可能性に関連する課題を担う人材の育成にも重点を置いている。

今期の月刊誌『慈済』には「今月の特集」として、慈済大学各学院の特色やビジョンについて、統合後の初代学長となった劉怡均(リュウ・イージュン)氏への独占インタビューが掲載されている。その他、記者は、二十八年間にわたって原住民籍を有する学生向けの公費看護クラスについても詳細に取材し、社会環境と教育ニーズの観点から慈済高等教育の発展を振り返っている。特に、東部の子供たちのためにより多くの進学ルートを提供し、慈済医療システムに必要な看護人材を育成していることに触れている。

国連のSDGs4「質の高い教育をみんなに」のターゲットを見ると、多くは前述した慈済の原住民籍を持つ学生向け看護クラスと密接な関係がある。例えば、「すべての人が男女の区別なく、無理なく払える費用で、技術や職業に関する教育や、大学を含めた高等教育を受けられるようにする」、「技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる」ことなどが挙げられる。

慈済大学統合の除幕式は、当初八月一日に開催される予定だったが、七月下旬に発生した強い台風三号(ケーミー)により東部の交通に影響が出たため、九月に延期された。台風発生から半月経っても、台湾南部での慈済の災害支援活動は続けられ、雲林、嘉義、台南、高雄、屏東の一部で深刻な浸水に見舞われた地域では、万人単位のボランティアが緊急支援活動に投入した。炊き出しだけでも二万六千食以上が提供され、その後の被災者への復興支援は、今も綿密な地域ケアネットワークの中で進められている。

過去二十年を振り返ると二〇二一年台風十六号(ミンドゥル)、二〇一九年台風二十六号(カルマエギ)、二〇〇九年台風八号(モーラコット)、そして、二〇一八年八月二十三日に起きた台湾南部の洪水被害が思い出される。「殷鑑遠からず」、その被害の様子は今でも鮮明な記憶として残っている。今回の台風三号の降雨量は、改めて異常気象による災害が予想を超えることを警告した。如何にして治水と洪水防止対策を効果的に改善するか、そしてどうすれば人々は自分の消費習慣を変えようと目覚めるのか、それらが災害後の一人ひとりの課題となっている。

(慈済月刊六九四期より)

㊟学院は慈済大学の表記を尊重した。日本の大学における学部と一致するとは限らない。

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