編集者の言葉
昨年、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の警戒レベルが3に引き上げられていた間、台湾全土の慈済リサイクルセンターは、安全を考慮して一時的に閉鎖された。しかし、以前から回収物を届ける習慣のある人たちは、引き続き慈済のリサイクルステーションに持って行った。それで、リサイクルボランティアは長年の暗黙の了解の下に、自然に集まり、防疫規制を順守しながら作業を行なった。コロナ禍が緩和に向かった頃にやっと基本的な日常業務を再開したが、リサイクル作業は倍増した。コロナ禍で、人々は食事のデリバリーやネットでのショッピングへの依存度が高まり、家庭ごみ、特に使い捨て食器と宅配のための梱包資材の量が増えたのである。
政府は早くから梱包資材とプラスチックの削減を実施する政策を打ち出していた。しかも、使い捨て食器にはウイルスが付着しているリスクがあるので、適切に洗浄することで最善の保障になると説明していたが、一般の人々にとって使い捨て食器は衛生面と利便性の象徴であり、感染が拡大するにつれ、消費者の食器洗浄に対する疑問を解消するためにも、多くの店が全面的に使い捨て食器に切り替えたのである。民衆にはある程度の環境保護意識はあったが、その時、他の国と同様に、経済と環境保護との綱引きというジレンマに陥っていた。
台湾は、以前から国際メディアに「回収王国」と称賛されていた。しかし、「回収と再生」は、二百年以上にわたる資本主義の発展を経て、採掘から製造、廃棄という繰り返される直線型の経済モデルにおいて、最後の防衛線だと言える。リサイクルは往々にしてより多くの資源を消耗するが、再生の回数は限られる。そして、回収されないごみに比べて、回収される部分はまだ少ない。依然としてごみの処理に多くの費用が費やされており、ごみと資源の価値が正確に理解されていないことは明らかである。
そしてこの五年間は、循環型経済の概念が徐々に注目を集め始めた。「廃棄物の回収と再利用」だけに焦点を当てるのとは異なり、生産者は、川上に当たる製品設計、そして材料選択や物流システム及び販売に至るまで再設計をし直し、資源の恣意的な廃棄を減らしてゴミの発生を避けるというモデルである。人々が反省しなければならないのは、必要なのは「消費と所有」か、或いは単なる「使用」であるのかという点であり、そこから「購入に代わる賃貸」というビジネスモデルが開発されたのである。
今期の内容は、貸し出し可能な食器を循環的に使うことを進める「好盒器」という会社や、オンラインショッピングでパッケージを再利用できる「配客嘉」といった実例が紹介されている。これらの運営をしているのは、慈済の「青年公益実践プロジェクト」で選ばれた、社会的企業チームの一部である。
「好盒器」は、宅配プラットフォーム業者と協力して約二万件のアンケート調査を実施したことがある。その結果、九割近い消費者が環境に配慮した店舗を支持していることが分かり、約七割の人は循環使用の容器に賛同し、追加料金も喜んで払う、という結果が出た。民衆が環境保全にかなり賛同していることは分かるが、それに対応する消費の形は、まだ選択肢が不足している。
資源を回収して物の寿命を延ばすよう努力は、私たちが慣れ親しんできたことである。今、差し迫っているのは、消費と生産を根本から改めることであり、これこそが真に「物を最後まで使い切る」ことになるのである。
(慈済月刊六六四期より)