耐え難い感染予防の影響 若者が廃棄物削減に乗り出した

コロナ禍が変化する中、テイクアウトやデリバリー、ネットショッピングが日常になったが、使い捨て容器や包装ゴミはどんな道をたどるのだろうか?
年配のリサイクルボランティアはゴミの分別に専念し、若い世代は消費市場で廃棄物削減を主導する。共に地球のために尽力している。

「この一年、紙カップや紙製弁当容器が特に多く、ビニール袋や段ボールなども多くなっており、リサイクルの量が大幅に増えました。もしリサイクルセンターで長年活動していなければ、この深刻さに気づかなかったと思います」。新北市の慈済ボランティア・羅恒源(ルオ・ホンユエン)さんはため息をついた。

二〇二一年、台湾で新型コロナウイルスへの警戒レベル三の期間中、台湾政府は使い捨て容器の使用を緩和し、長年にわたって行われてきた廃棄物削減やプラスチック制限の進展は頓挫してしまった。加えて市民は人込みを避けるため、外出が減り、皆次々とネットショッピングやフードデリバリーの使用を始めたため、生活の中で生まれる廃棄物の量も増加し続けた。

二〇二〇年、台湾におけるネットショッピングでの売上高は二千四百十二億新台湾ドルに達し、ネットショッピングで消費された包装資材は三万五千トンに及んだ。警戒レベル三の期間中、飲食業は店内飲食が禁止となり、デリバリーの大幅な増加に伴って紙製食器の消費量がうなぎのぼりに急増した。環境保護署の統計によると、二〇二一年一月から七月にかけて回収された紙製食器は八万八千トン余りに達し、前年同期比で六・五%増加した。リサイクルされていないものも合わせれば、さらに驚くべき数字となるだろう。

テイクアウトやデリバリーはポストコロナの新たな日常となり、プラスチック包装ゴミの量は激増している。巣篭もり消費で利便性を求める中で、環境保全を考慮し、リユース容器やリユース包装材をうまく利用することが、廃棄物を減らす方法の一つである。

台北市公館の路上にはリユースカップのセルフレンタルステーションがある。消費者は携帯と紐づけし、バーコードにかざすことで、カップを借りたり返却したり、提携している店舗でリユースカップに飲み物を入れてもらうことができる。

コンセプトは質実だが、実践は難しい

台北市公館の商店街で通行人が自動販売機のような機械の前で立ち止まり、携帯を出してスキャンし、リユースカップを借りて飲み物を購入していた。同じような光景が台南市正興街の商店街でも数年前から見られる。観光客は商店街の特約店や二十四時間営業のセルフレンタルスタンドで、無料かつデポジット不要のリユースカップの貸出しと返却ができるのだ。

これは、台湾の社会的企業である「好盒器(goodtogo)」の創設者、宋宜臻(ソン・イージェン)さんと李翊禾(リー・イーホー)さんが、事業を展開して苦節六年の末の結果である。現在、彼女らはすでに台北、台南など七つの県と都市で百五十軒を超える飲食店と一社のフードデリバリープラットフォームと提携して、リユースカップやリユースランチボックスの貸し出しサービスを行っている。

台湾では毎年二十億個の使い捨てカップが消費されており、誰もがそれを削減する必要があることは認めている。しかし、一般的にリユース食器の使用については清潔さに懸念を抱く人が多い。

宋さんは食器の処理過程についてこう説明する。「私たちは学校や企業の食器洗浄を請け負っている大規模洗浄工場に洗浄を委託しており、洗浄後はすべて高温で滅菌処理を行っています」。実際、食べ物をテイクアウトであっても受け取る時は、ソーシャルディスタンスに注意を払ってマスクを着け、食事前には手をしっかり洗い、手で目や口、鼻を触らないように注意をしなければならない。感染対策を講じた後ならば、洗浄された清潔なリユース食器、自分で用意した食器、または使い捨て食器のどれを使っても同じだと言える。

リユースカップの容量は二種類の規格があり、すべて食品用ポリプロピレンから作られている。プラスチックラミネートの紙カップは熱い飲み物を入れた際に可塑剤などの化学物質が溶け出してしまう可能性があることに比べれば、リユースカップは環境にも良く、安全なのである。

このシステムを使用する消費者は、大多数がゆっくりと商店街でショッピングをしながら飲み物を飲み、カップを返却している点に宋さんは気づいた。反対に、急いで買い物をしてすぐ帰るような人は、たいてい紙カップを使っている。リユース食器をお店に使ってもらい、消費者に楽に返却してもらうには、いくつもの関門があった。

「私たちは当初、清潔な容器をドリンクスタンドで使用してもらい、消費者が返却した後、洗浄と消毒に出してからお店に戻すだけの簡単なことなのに、なぜ誰も始めていないのかと思っていました」。六年前、創業の難しさを知らなかった門外漢の二人が、多忙な飲食業界に足を踏み入れた時、はっと気づいたのである。難しくは思えないのに、なぜ誰もやらないのだろう。

「リユースカップと一般的な紙カップの使い方には違いがありました。ドリンクスタンドでは紙カップに飲み物を入れ、カップシール機で封をすることで、短時間で何杯も作ることができます。しかし、リユースカップはひとつずつ蓋をする必要があり、紙カップと比べ時間がかかります」。宋さんはさらに説明を進めた。ドリンクスタンドチェーン店ではスタッフの入れ替わりが激しいため、常に新しいスタッフにリユースカップの使用方法を教える必要があり、さらに初めて使用する消費者からは質問も多く、店舗側は運営効率への影響を懸念するのだ。これらはすべて考慮しなければならない「問題点」であった。

「消費者の容器持参だけに頼っていたら、店は存続が難しくなります。消費者が容器を持参できない場合や忘れてしまった場合、やはり店は紙カップを使うことになります」。宋さんは店舗側とのやり取りの中で、飲食業者が環境保護に無関心なのではなく、ただ他に良い代替案が無かっただけなのだと気づいた。その為、二人が使い捨てカップの代わりに、リユースカップのプロジェクトを提案したところ、正興街の商店の多くが目を輝かせて次々と参加の意思を表明した。

「好盒器(goodtogo)」(容器貸出サービス)の共同創設者である宋宜臻さん(左圖写真右)が子どもたちにリユースカップを紹介していた。初期のガラス製コップから現在のPP製リユースカップまで、シェアサイクルのように、ある場所で借りて、他の場所で返却することができる。大規模イベントを開催する際、この貸出リユース容器(右圖の写真)を使用することで、使い捨て食器の廃棄問題は避けられる。(写真提供・宋宜臻さん)

慈済が青年公益環境保護活動を支援

リユースカップが軌道に乗ると、「好盒器」は続いてランチボックスに取り掛かった。会員は提携店で料理をテイクアウトし、提携するデリバリーサービスのプラットフォームを介して注文する際にリユース容器を指定でき、食事が終わった後はセルフ返却ステーションに戻すか、直接そのお店に返却するシステムだ。

現在、「好盒器」のセルフ貸出スタンドや提携店は発祥地である台南市が最も多いが、昨年の後半からは台北市の台北駅前や公館商店街でリユースカップの貸出サービスを始めた。今後、全体的な普及率を上げていく必要はあるが、それでもすでに一万五千人が会員になり、創業から現在に至るまで十四万五千個以上の使い捨て食器の使用を削減した。

「私たちはテイクアウト容器版のYouBike(シェアサイクル)を作りたいのです。借りる・使う・返す・洗うという四ステップで、消費者が必要な時に借りることができ、返却したい時に簡単に返却もできるのです」と宋さんが説明した。

これまでつまずいて来たことを思い返すと、若い彼女ははにかみながら、慈済基金会が紹介してくれた専門家の陳珮甄(チェン・ペイジェン)先生に感謝した。陳先生は経営陣が余計な回り道をしないよう、熱心に導いてくれた。「私たちは社会的に意義のある事業をする際、往々にしてビジネスの本質を忘れがちで、どうすれば良い事をしながら社会で生き残っていくか、珮甄先生は常に私たちに注意を促してくれました」。

「テイクアウトやネットショッピングは大量のゴミを作り出します。もし包装資材が再利用でき、リサイクル素材で容器が作れたら、とても素晴らしいことではないでしょうか。将来彼女たちのプロジェクトが台湾全土に広がり、持続していくことを願っています」と、「青年公益実践プロジェクト」審議委員を務める慈済基金会の顏博文(イエン・ボーウェン)執行長は、期待を込めて語った。

慈済基金会が主催する「青年公益実践プロジェクト」は、「使い捨てをリサイクルに置き換える」多くのチームに補助金を出し、サポートしている。「好盒器」チーム、そしてリユース包装資材をネットショッピング業者や消費者に提供する「配客嘉(PackAge)」(包装資材貸出サービス)チームは二〇二〇年十二月、第四回「青年公益実践プロジェクト」で選出され、慈済による補助金と専門家派遣の支援が決まった。

「私はネットショッピング事業を起業したので、ダンボール箱や宅配ポリ袋を沢山使ってきました。それで、事業を行うのは『贖罪』なのだ、と常々言っていました」と「配客嘉」創設者の葉德偉(イエ・ドーウェイ)さんは、率直に言った。

コロナ禍で巣篭もり需要による経済効果が現れてきたが、人々は家で過ごす時間が増えて、ネットショッピングの成長は更に著しくなった。「配客嘉」チームはネットショッピング経済の中において、廃棄物削減をより実現可能に、より便利にするよう努めている。

ネットショッピング台頭下で様々な梱包資材の使用量が増える中、いかにして資源の消耗と環境汚染を減らすか。これは青年環境保護団体が挑戦する目標の1つである。

未来の自分に後悔させないように

環境保護署の推計によると、二〇二〇年に台湾で消費されたネットショッピングによる包装資材は、一億二千万個を超えた。葉さんは、段ボール箱はプラスチック製の宅配ポリ袋より環境に良さそうに見えるが、一度の使用でリサイクルや焼却をすれば、その過程で消耗される資源の比率はかえって高くなると説明した。「宅配ポリ袋はその焼却でおよそ一・二キロのカーボンフットプリントを作り出しますが、ダンボールは一・九二キロにもなるのです」と説明した。

リユース可能な包装資材は、一般の発送包装資材に取って代わることはできるが、消費者が返却しなかった場合、店舗はまた新しいものを使用することになり、使用済みのリユース包装資材はゴミになりかねない。ネットショッピングが人気なのはその利便性からだが、どうすれば消費者に返却・再利用を習慣づけてもらえるようになるか?

「多くの人がコンビニで受け取るため、私たちは包装材をより便利に返却できるようにと考えました。例えば、コンビニで本を受け取った際に、その場で包装に使っていたリユースバッグをコンビニの返却ボックスに入れることができれば、ゴミの処分やリサイクルの問題は無くなります」。葉さんはさらに説明を続けた。「台湾のネットショッピングの市場規模は世界で七番目に大きく、コンビニ密度は世界二位、周囲を海に囲まれた島であるため、返却ルートも密集しています」。

葉さんは若いながらも、循環型経済と密接に関係する物流や連絡網にかなり精通している。二〇一八年に「配客嘉」を創設する前は、五年間、3C商品(携帯電話・パソコン・家電)のアクセサリー販売に従事していたからだ。

当時の葉さんは、他の同業者と同様、ためらうことなく使い捨て梱包材を使っていたが、ある日、思いもよらないクレームを受けた。「環境に配慮した素材でできたイヤホンを買ったのに、こんなに多くのゴミを排出するなんて、本末転倒じゃないか、というクレームが来たのです」。

当時、商品を保護するために、葉さんは意識して大きめの段ボール箱を使っており、多くの気泡緩衝材を詰めていた。このことで逆に顧客に反感を買われるとは思いもよらず、このような道を歩み続けるべきか、考えさせられた。

「私たちが何もしなければ、十年後には選択の余地さえなくなってしまいます」。気候変動を探求したビデオを見た時、葉さんは地球の温度が上昇し続けていることに驚き、はっとしたのだそうだ。環境保護活動や省エネ、炭素削減に取り組まなければ手遅れになるだろう。しかし環境保護に対する多くの人は、面倒で多くのコストが掛かるという印象を持っている。ネットで商売をしていた彼は、環境保護をシンプルなものにしようという考えが浮かんだ。
「私は物事を単純化し、デジタル化するため、このモデルを提案しました。将来、十年前になぜ新しい可能性を提案しなかったのかと後悔したくなかったのです」。

「配客嘉(PackAge)」の創設者である葉德偉さん(左側写真の右)は、積極的にネットショッピング業者やチェーンのコンビニと提携し、消費者がネットショッピングで購入した後、簡単に包装資材を返却できるようにしている。リサイクル原料で作られた包装箱やバッグは何度も再利用できる。(右側写真 提供・葉德偉さん)

葉さんはまず、ネットショッピング業者に、環境保護に配慮したリユースボックスやリユースバッグを使ってもらえるよう説得した。初期コストは段ボールの二十数倍にもなるが、三十回以上繰り返し使用すれば、段ボールのコストよりも低くなる。

次に、オプションを設定した。消費者がネットショッピングで注文する際、リユース包装を選択すると、割引クーポンなどの優遇が受けられるよう設定した。実際、包装資材をリユースボックスやリユースバッグに限定しても返却率は一割にも満たなかったが、それでも選べるようにしたことで返却率は八割に達した。「意識的にリユースを選択してこそ、返却するようになるのです」と葉さんはこう分析した。

リユース包装は持続できるのか。その最も大きな鍵は「返却」である。消費者が使用後すぐ返却できるように、できるだけ返却場所を設置するほか、優遇措置も打ち出している。例えばコンビニで受け取る際、その場でリユース包装材を返却すると優遇があるとか、提携ドリンクスタンドで返却すると、飲み物と交換することができる、などである。

「各拠点から回収されたリユース包装資材は倉庫に戻り、洗浄消毒した後、またネットショッピング業者に送って再使用されます」。葉さんは、洗浄消毒やリユース梱包材の整理の仕事を、社会的弱者や身心障害者に提供し、彼らが収入を得られるようにしている。そして、使用回数が限界に達し、使えなくなってしまったリユースボックスやリユースバッグはこの段階で選別され、リサイクルしてまた新しいリユース包装材に製造される、と説明した。

二〇二一年十二月十一日、慈済主催の「青年公益実践プロジェクト」第四回入選者の成果発表会が開かれた。「配客嘉」は、四百七十九カ所に返却場所を設置し、ネットショッピング業者や消費者に十四万個のリユース包装資材を貸し出し、四十二万キログラムの炭素排出削減したという素晴らしい成果を発表した。

「現在、返却率は八十五%です。アプリで返却場所を探せますが、今のところ桃園より北に密集しており、台湾中部や南部にはそれほど多くはありません。この点は私たちが努力しなければならない点です」。

去年2月、慈済大学の構内において、有名な菜食推進グループによる「ミートレスマーケット」が開かれた。主催者は事前に食器やエコバッグを持参するよう呼びかけ、環境保護に配慮したゼロ廃棄が着実に実施された。(撮影・廖文聰)

不可能を可能に

環境問題はリサイクルや再製造だけでは解決できない。究極の方法は、廃棄物を減らすことである。清浄は源からと言われる所以だ。台湾には環境保護の意識が浸透しており、環境のために力を尽くすことのできる人々や消費者が、想像以上に多い。十年、二十年前には困難とされてきたリユース食器や包装資材の流通管理といった環境保護活動は、人々の意識の高まりや、科学技術の進歩など様々な善の縁の支えを得た今では、難しいことでは無くなった。

科学技術を上手に駆使して循環型経済を推進する社会的企業の青年や、環境保護を意識して自ら実践する消費者などが、変わりたいと考える限り、感染対策と環境保護を両立できる自分に合った消費方法を見つけることができるだろう。そして、自ら実践することで、未来はさらに安心できるものになるはずだ。

(慈済月刊六六四期より)

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