問:台湾の医療はこれほど普及しているのに、施療はまだ必要なのでしょうか?
答:「慈済」だからこそ、他の団体よりも深く仔細にできるのだと信じています。
政府は既に「在宅医療ケア統合計画」と「訪問医療サービス」を進めていますが、民間の施療に使う医療器具も益々進歩して、持ち運びに便利になっているのですが、診療所まで来られない人は減っていません。今でも最終電車に間に合わないために治療を諦めた患者もいます。以前、金門で施療した時、特殊な病気の患者が長年外に出なかったため、口腔の状態がとても悪かった人がいました。
近年各地の病院や機関の施療団体が増えており、同じ辺境のコミュニティに二つ以上の施療団体が前後して訪ねることもあります。民衆から「もう来なくてもいい」と言われましたが、私は、施療は止めてはいけないと思います。社会の高齢化という状況の中、将来的に在宅医療と介護はもっと必要性に迫られ、施療は「違う形態」で患者に奉仕し続けるでしょう。
二十数年前に、初めて精神科病院に施療に行った時、多くの患者は外出して病院に行くことができなかったため、口腔の状態は極めて悪く、虫歯だらけでした。そこで私は、「この人生で自分の力を尽くして弱者患者を助けよう」と決めました。
台北慈済病院特殊需要歯科に来る患者は、ほとんどが精神障害や身体障害、筋萎縮性側索硬化症や認知症の患者です。休日は施療を通して、交通の不便な独居老人や障害のある人、外国人労働者や社会福祉機構がケアしている人を支援しています。会場では医療奉仕のほか、ボランティアと一緒にテントを張り、素手で患者の汚物を取り除くこともしました。
慈済人医会に参加して二十年経ちますが、一年に少なくとも二十回、多い時には五、六十回の施療が行われるのが普通です。休日に診療所から出て、辺境に行ったり、国際災害時に海外で施療に行ったりする時は、報酬がないばかりか、自費と自分の休暇を使うのですが、喜んで参加しています。
慈済人医会は施療を続けているほか、コミュニティで健康と衛生教育の講座を催し、病気予防と正しい考え方を民衆に伝え、病気の発生率を低くしようと努めています。また、ボランティアと連携することで、患者の家庭状況をよりよく理解し、身体的にも精神的にもより全面的な支援ができるので、医療と慈善が結びついた全人的ケアを実践しています。
最も理想的な方法は、医療スタッフが患者の家や弱者団体に出向く頻度をもっと上げることだと思います。毎回、施療の時間が限られているので、全ての患者の診察を終えるとは限りませんが、外出が不便な弱者患者のことを考えることで、より深くケアすることはできると思います。
新北市平渓区での施療活動。慈済人医会の医師が山間のお年寄りを診察していた。(撮影・王賢煌)
最も重要なのは「伝承」することだと思います。自分の施療経験は二十年になりますが、毎回出遭う困難も、一緒に仕事するボランティアや医療メンバーも異なります。不便な環境で患者を安心させ、治療を進め、新しい医療メンバーを受け入れ、実際に実践してもらうのは、とても大切なことです。また、その過程で、ボランティアにも患者との安全を確保して話し合ってもらいました。自分で自分の身を守ることも、とても重要なのです。
毎回、施療の機会を逃さず、患者の表情が痛みを訴えるものから笑顔に変われば、どんなに疲れていても、価値があると思うものです。
(慈済月刊六五四期より)