問:民間団体の力で国際基準を満たした骨髄バンクを永続的に運営することは可能なのでしょうか?
答:海外の骨髄バンクは登録されている人種が異なるため、台湾の血液疾患患者がマッチング相手を見つける可能性は非常に低いのです。一九九三年、台湾で「人体臓器移植条例」の改正案が可決されて、非血縁者間での骨髄提供ができるようになってから、衛生署は各大病院を招いて、骨髄バンクプロジェクト会議を開きました。骨髄バンクを立ち上げるには、長期的に莫大な人力と物的資源、資金が持続的に投入されなければならないため、多方面の考慮と推薦の下に、慈済が計画を任せられ、慈済基金会骨髄寄贈データセンターが設立され、今は「慈済骨髄幹細胞センター」と改名されました。
非血縁者間の造血幹細胞移植でのマッチング過程は、先ず、移植手術をする主治医からの申請、骨髄センターからのマッチング報告、移植担当病院によるドナー候補者の選定、センターからドナーへの通知、寄贈意欲の有無の確認、ヒト白血球抗原(HLA)の再検査などを経て、確定したドナーに対して、センターによって健康診断と造血幹細胞採取が行われます。そして、細胞が移植病院に渡され、患者に移植されます。
「なぜ慈済基金会は患者に料金を請求するのか?」
慈済骨髄幹細胞センターに入社したばかりの頃、よくこういう疑問の電話を受け取ったことを覚えています。大衆からすれば、当然、慈済は患者から料金を請求すべきではないと思っています。しかし、殆どの人は、台湾のマッチングと骨髄採取の費用が既に世界のどの国よりも遥かに低いことを知ろうとしません。そして、骨髄バンクというものを維持することが如何に大変かということも。
各国の基準は異なりますが、例えば台湾の患者がアメリカの骨髄バンクに申請した場合、マッチング成功後の費用は約九十五万台湾元、日本の骨髄バンクは約五十二万元で、その上に寄贈者の諸々の検査費用と患者の移植前後の関連医療費を加えると、通常百万元を超えます。
海外と比べて、台湾の骨髄提供費用は世界で最も安いのです。そのコストは二十八万元で、患者は健康保険では賄えない部分の合計十一万三千七百三十五元を支払うだけで済みます。その他の経費は骨髄センターが負担します。
国内の患者をケアし、マッチングの成功率を高めるために、慈済骨髄幹細胞センターは自力でコストを負担し、国内の患者に初期的なマッチングで五人のドナー候補者を見つけます。そして、主治医が将来的に生存率の最も高いドナー候補を選定し、骨髄ケアチームのボランティアがその情報を基にその人の住所を探します。台湾で適切なドナーが見つからない場合は、海外の骨髄バンクに申請する必要があり、一人の登録者とマッチング検査をするだけで、患者は三~五万元の費用がかかるのです。
「慈済骨髄幹細胞センター」は設立されて二十八年目になりますが、自力で運営を維持するのは非常に困難です。このセンターは、政府の資金で支えられている多くの海外骨髄バンクとは異なり、設立当初からお金も人も資金も技術もありませんでした。しかし今では、国際的なハイレベルの骨髄バンクと言われるまでになり、一部の民間の寄付を除いて、主に海外の患者が支払う費用で維持されています。また、ボランティアは、国内の患者とその家族にインタビューを行います。もしも経済的に困難があって、移植代を負担できない場合は、必要に応じてセンターに全額補助を申請します。さらに一歩踏み込んで、慈済基金会の慈善訪問ケアが引き継いで、生活補助や緊急支援などを行います。例えば、二〇二〇年にはセンターが七十五人の患者とその家族の世話し、合計七百万元余りを補助しました。
自給自足は容易なことではなく、これまで、慈済骨髄幹細胞センターが運営を続けて来られたのは、台湾全土の専門的な訓練を受けた骨髄ケアチームのボランティアの努力があったからです。感謝を申し上げます。それによって、人件費が抑えられ、患者さん家族の負担も軽減できたのです。
台南の造血幹細胞寄贈血液検査登録活動。 (撮影・黄筱哲)
何年にもわたって、私はあまりにも多くの苦痛を伴った治療を目にしてきましたが、幸いに回復した患者と生まれ変わった奇跡を一緒に喜ぶ場面もありました。精一杯寄り添うだけでなく、あらゆる寄付金を最も必要なところに使うこと目指しています。大衆に造血幹細胞寄贈に対する認識が広まり、将来、造血幹細胞寄贈が献血と同じくらい普及し、より多くの患者さんに貢献できることを願っています!
(慈済月刊六五四期より)