それぞれ苦難が異なる衆生に、臨機応変に対応する

問:現代社会の福祉資源は多様化していますが、慈済慈善活動の特色は何ですか?

答:多くのNGOや慈善団体は主に「特定の条件」を持つ対象に限ってケアをしています。それに対して、慈済慈善志業の最大の特色は、ボランティアが訪問ケアチームをつくり、特定の条件を設けることなく、「社会的に立場の弱い境遇」の人たちをケアしています。

ボランティアがケア対象の家に行くと、その対象者だけをケアするのではなく、家族構成やそれぞれ構成員のニーズを考慮に入れて家族全体を評価し、それに基づいて教育、医療、緊急支援などの提供を適切に行います。その後、少なくとも月に一度は訪問して査定し直し、ケアする期間が数週間という短期間のケースもあれば、数年間続く場合もあります。

一人暮らしのお年寄りや一人親、家庭内暴力を受けた女性や病気で経済的に苦しくなった世帯に対しても、ボランティアが実際に訪問した後、ケア対象者とするかどうかを判断し、直ちに支援を開始します。「人としての当事者、家族全員、あらゆる段階」をケアする方法で、全面的にサポートをすることも慈済の特色です。最終的な目標は、ケア対象者世帯が困難を乗り越えて自立できるようになることです。

ケア世帯の中には経済的な理由から学業を中断する子どもを多く見かけます。そこで、慈済は「新芽奨学金」という助成制度を作り、子どもの親孝行や特別なパフォーマンス、皆勤などでもって子どもを奨励しています。単に優秀な成績を求めるよりも、人として認めてもらえることで、子どもが前向きになることを期待しているのです。また、慈済ボランティアは、子どもが学ぶことを諦めなければ、将来「弱者」という悪循環から抜け出すことができると励ましています。社会全体にとっても、慈善と教育を結合させることで、派生的に出てくる社会問題や対策に費やすコストを減らすこともできます。

私は幼い頃から母について慈済の活動を見てきました。そのおかげで人を助けることにとても興味を持ち、大学で関連学部を卒業した後、社会福祉局や慈善団体で働きました。そして十七年前、静思精舎でボランティアをしていた時に、慈善活動には多くの人手を必要とすることを知って、ボランティアから職員になり、今に至っています。

一九九二年、慈済基金会が初めて専門学歴を持つソーシャルワーカーを雇用する前、全ての慈善活動は、ボランティアと静思精舎の常住尼僧たちが行っていました。支援対象が増加すると共に、ケアケースの事情が複雑になってきたことで、ボランティアはケアや寄り添いをするだけでなく、持続的な経過追跡や記録などの事務も日増しに多くなり、専門のソーシャルワーカーが慈善に参加して、ボランティアを助けるようになったのです。

慈済ボランティアは台湾全土のコミュニティーにいます。もし全てのボランティアが繋がるようになれば、非公式の「セーフティーネット」ができあがり、より多くの慈済人がいれば、ネットはより緊密で安全なものになります。政府の進める社会安全ネットワークは、公的機関と民間団体が協力してサービスにあたる連絡業務が主ですが、地域社会に支援を必要とする人がいるなら、福祉の認定や条件を満たしていなくても、地域の慈済ボランティアのネットワークを通すことで、より速く、助けを得ることができ、政府の援助が来る前の生活を補完することができるのです。

彰化の慈済ボランティアがケア世帯を訪問。(撮影・黄筱哲)

近年の「弱者」は、もはや単純に経済的な要因ばかりではなく、対人関係で生じる心身の問題が益々増えており、関連ケアが日増しに重要になって来ています。台湾では、長期的な経済支援を受ける世帯よりも、定期的に寄り添う必要のある「在宅ケア」の案件が多くなっています。

五十五年間、慈済は「慈善で人助けし、弱者を救い貧困者に寄り添う」ことを終始変わらない中心的な理念としてきました。専門的な経歴を持っているかどうかに関係なく、ボランティアは「ニーズを必要としている人を支援しているか」を重視しています。このような無私の精神で奉仕するボランティアのおかげで、慈済の慈善はより多くの家庭が困難に陥るのを予防しているのです。


(慈済月刊六五四期より)

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