編集者の言葉
EUは来年度に世界初の「国境炭素税」計画を推し進める予定である。それにより、「ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」は単なる環境保全のテーマに留まらず、関税の徴収によって経済競争力に関わってくるようになる。台湾も避けるわけにはいかなくなり、今年三月既に「台湾2050ネットゼロ・エミッションへの青写真」を提出し、二〇五〇年に達成を目指す国際的共通認識に対応した。
台湾は国際メディアから資源回収の模範生と言われているものの、国際エネルギー署の統計によれば、二〇一九年の温室効果ガスの排出量は世界で二十二番目になっており、一人当たりの排出量は十九番目となっている。以前から加工産業の発展で、台湾は九割以上のエネルギーを輸入に依存しており、特に化石燃料への依存が著しい。国内の半分近くの排出量は輸出のためである。台湾は二十数年前から電力源の転換を開始したが、経済発展を優先してきたため、排出量削減には限度があった。これは多くの国の転換過程で遭遇している問題でもある。
例えば、電力源を転換して生態環境へ配慮するために、経済的弱者を犠牲にしてはならない。国内外の多くのケースが示しているように、再生可能エネルギーの設備は野生動物の生息地に影響を与えたり、原住民文化領域と重なったり、または地元住民の生計を脅かすことになる場合もある。地元住民との参加や話し合いが足りない状況下では、抗争が引き起こされ、効果が現れて来なかった。また、台湾の電気代は相対的に安価ではあるが、中低所得者層や社会福祉機構は省エネの電気製品を買う余裕がない。寄付された中古電気製品は電気代の負担が増えるだけでなく、より多くのエネルギーを消耗している。
地球公民基金会の統計分析によると、日常生活と商業活動による炭素の排出量は、製造、交通、エネルギーなど四大部門の中で二番目に多くなっており、大衆の日常的な習慣の改善も炭素排出削減のカギになることが分かる。大衆の環境保全に対する認識が深まれば、「資源の再生、廃棄物の減少」という循環経済を推し進めることがより可能になり、過剰浪費する線型経済(リニアエコノミー)に取って変わることができる。
今期の主題報道では、慈済ボランティアと組織が生活のあらゆる局面で二酸化炭素削減の知恵を発揮している話や、長年にわたって環境問題に関する講師を担当している人たちが、より多くの人を募ってエコライフによる脱炭素の実行を促したいと願っていることを紹介している。
慈済リサイクル拠点は資源の回収を進めて三十年余りになり、回収量が全台湾の三十五パーセントに達しことがあるが、今ではより多くの大衆がリサイクル活動に参加しているため、二パーセントにも満たなくなっている。しかし、余り利益にならないビニール袋の回収については、慈済がその七十七パーセントを回収している。その他、慈済は工業研究院と協力して「Qwater浄水システム」を開発し、災害時に被災者に水を供給すると同時に、ペットボトルゴミの削減にもつなげている。この五年間、青年公益実践計画を通じて循環経済をテーマに掲げた創業団体を支持して来た。
非営利慈善団体としての慈済は三十年来、環境保全理念と行動を推進し続け、より多くの人が持続可能なグリーン目標を実践し、幾世代にも亘って生存の拠り所である地球を保護していくことを願っている。
(慈済月刊六六九期より)