難民を支援した難民に感謝

トルコボランティアの胡光中さんとウクライナ人の被災者雇用による
支援活動の参加者は、気持ちが通じ合うようになった。彼らの背景だけでなく、虚弱な子供がいることや病気で高齢の母親がいることもわかってきた。

胡さんは彼らが時折欠席しても思いやり、彼らが夜に配付準備のために率先して残業していることに感謝した。

彼らに自分自身を証明する機会を与え、これは一時的な不幸であり、
他の人に劣っているわけではないことを知ってもらった。

六月二日の七時二十五分、ポーランドのワルシャワにあるサレジオ教会の内外には、二十人以上のウクライナ人ボランティアが、まもなく始まる慈済三十五回目の配付活動に備えて、準備するために集まっていた。百から百十世帯が、プリペイドカードとエコ毛布を取りに来るはずだ。

会場にいるのはほとんど女性ばかりで、そのうちの一人が携帯電話のメッセージを見せてくれた。「ユリア様、あなたのギフト番号はW-35-08156 です。詳細については、次のリンクをクリックしてください https://drive.google.com…」。ギフト番号の「W」とはワルシャワ、「35」は配付活動の回数、「08156」は慈済のワルシャワでの8156番目の配付対象者であることを表している。

「今回の配付方式は『半トルコ式』とも言えます」。四月二十一日にワルシャワに着いた胡光中(フー・グォンツォン)さんは、以前、トルコでシリア難民を支援した時の経験に基づいて、ポーランドでのウクライナ難民の状況に対応するために、多くの変更を加えた。

「シリア難民は家族全員が脱出していましたが、ここにいるのは子供を連れたウクライナ人女性たちで、母親という立場の無力さと勇敢さが同時に一層強く感じられました。また、シリア難民の場合はグループの存在が明確ですが、ウクライナ難民の場合は、様々なエリアに散らばっています。そのため、連絡して身元を確認することがとても難しいのです」。

胡さんの話では、直接、重点、尊重、実用というのが、守らなければならない慈善の原則であり、難民リストの作成は特に重要になってくる。しかし、ヨーロッパでは個人データの収集が非常に難しく、協力パートナーのNPOも内部の情報を提供することはできない。では慈済はどのようにして難民を探し出したらよいのだろう?どのようにリストを作ればよいのか?トルコとオランダで働いているシリア難民ボランティアと三者間で話し合った結果、今回の災害支援配付専用のシステムが開発された。

慈済は5月と6月に続けて、ワルシャワのサレジオ教会で配付活動を行った。ウクライナ人の被災者雇用による支援活動の参加者は、トルコ、イギリスなどの国の慈済ボランティアたちと協力して、任務を完了した。(写真提供・ポーランド慈済ボランティア)

この「08156」という番号のユリアさんは、エレガントな人である。写真を撮るために彼女から借りたスマホで、メッセージにあるリンクをクリックすると、配付活動の時間と場所、必要な身分証明書など多くの情報が表示された。また、「会場はスペースが限られるため、一世帯につき二人を超えないように」と記載されている。そのリンクにより、ユリアさんと慈済もつながることになった。

その後、胡さんとウクライナ人の被災者雇用による支援活動の参加者は大いに気持ちが通じ合うようになり、労資関係ではなく、家族のような関係を築いた。彼はウクライナ人ボランティア一人ひとりの背景を熟知している。例えば、幼稚園の園長、産婦人科の医師、スポーツ用品店のオーナー、番組司会者、会社の経理担当者、運転手等々である。知ったのは彼らの職業だけではなく、虚弱な子供や病気で高齢の母親がいる世帯もあり、時々欠席することを大目に見ている。しかし、配付活動の準備のために、定時で帰らないことには、殊更感謝している。彼らに自分自身を証明する機会を与え、これは一時的な不幸であり、他の人に劣っているのではないことを知ってもらっている。

配付する時に、以前難民たちに話したのと同じ言葉をかけた。「今日以降、あなたと私は二度と会うことはないかも知れませんが、あなたの心には愛があることを信じています。あなたは人を愛することができ、あなたは一人ではないことを知ってください。私たちは地球のあちこちであなたたちを祝福しています。私たちはあなた方が家に帰ることができるまで寄り添います」。

(慈済月刊六六八期より)

  • 夫と私の間には8人の子供がいて、プリペイドカードを受け取った時は、うれしくて涙がこぼれました。それで一家が半年間暮らせるのです。 — ナタリーラ
  • 私たち5人の母親は、12人の子供を連れて9人乗りの車でポーランドに来ました。5人の母親全員が慈済からの支援物資を受け取りました。心が動かされました。そこで、他の同胞を助けるために各世帯から1枚のプリペイドカードを寄付することにしました。 — ジュリア
  • あなたたちがくれたのはお金ではなく、たくさんの愛です。私も神様があなたたちを守ってくれることを願い、祈っています。愛は分かち合うことができます。これも私の今の人生の使命の一つです。 — サーシャ
  • 今まで、人から何かを受け取ると自分は何かを失うと思っていましたが、あなた方は見返りを求めない奉仕を見せてくれました。それでやっと、この世には本当に見返りを求めない愛があることを信じることができました。 — デイジー
  • 私はまだ生きていて、安全な場所にいることをとても嬉しく思います。困難に遭って初めて、この世界には私たちを愛してくれる人がこんなにもたくさんいることを知りました。私たちは孤独ではなく、安心さえしています。きっとすぐ窮地から脱出できて、家に帰ることができると信じています! — ハリナ
    キーワード :