慈済基金会は各県や市政府の防疫政策に合わせて、新型コロナウイルスのワクチン接種会場を提供してきた。
一年余りにわたるボランティアと区役所、医療機関との協力体制で、暗黙の了解が出来上がっていた。
今年の夏は気温が格別高く、ワクチン接種率も前より高くなり、ごく普通の接種作業でさまざまな課題に直面した……
台中静思堂に2日間で4000人近くの人々がワクチン接種に詰めかけた。初日の早朝、列は入り口の外側まで延々と連なった。移動経路と人員を増やしてからは、作業がだいぶスムーズになった。(撮影・林育廷)
「本当に挑戦の連続です!突然、波のように千人以上の人がやってきたので、湯を沸かしたり、お茶や感染予防ハーブティーをオイルドラムの大きさのドリンクサーバーで供給し、氷をいっぱい足しても、人々の喉の渇きを癒すのに間に合いませんでした」。
「天気が暑すぎて、出したお茶や水は足りなく、冷凍庫の氷まで出しました…」と、台中市潭子区の慈済心田連絡所では、ボランティアはお茶を入れるのに大わらわだった。
そして、文心南路にある台中静思堂には、朝七時過ぎから人々がやってきて列を作った。MRT豊楽公園駅から見下ろすと、曲がりくねった龍のような長い列が左側にある交差点にまで続いていた。ボランティアは忙しく、人々が一休みできるように椅子を並べた。民権連絡所も同じような状況で、ボランティアは人々のためにありったけの日傘を運び出して日除けサービスをした。
六月二十二と二十三日、台中静思堂、民権連絡所、大里静思堂、心田連絡所、清水静思堂、沙鹿連絡所、大甲連絡所がそれぞれ提供して設置したワクチン接種会場では、現地の慈済人による防疫チームがワクチン接種を受けに来た市民に奉仕した。
夏に入って連日高温の日が続いた。大里静思堂の正面入口には元々沢山のテントが設置されていたが、ボランティアは水冷扇風機を取り付け、人々がテントの下で涼しく移動できるようにした。そのほかの連絡所でも、現地の状況に合わせながら大型扇風機の設置やテントの増設、進行経路の変更などで、炎天下での人々の不快さを解決した。
心田連絡所には接種を受けに来る人が波のように途切れることなくやってきた。ボランティアたちは、多くの人が未だ受付を済ませてなく、接種を終える時は昼過ぎになってしまうと察して、人々の空腹を満たすために、急いで大型鍋で麺料理を作って提供した。(撮影・何佳玶)
無制限にお茶を提供
この二年余り、台湾はウィズコロナの防疫ライフスタイルを続けて来た。昨年後半にワクチンが順次輸入されると、慈済基金会は県や市政府の接種計画に沿って、各地の慈済センターや静思堂をワクチン接種会場として提供した。普段は地域ケアをしているボランティアたちも、会場での感染予防に関する手伝いをした。
今年の四月以降、台湾の市中感染がピークを迎え、毎日数万人を超える感染者が確認されるようになった。この一波から免疫力の弱い高齢者を守って、乗り越えさせるために、各県と市政府は六十五歳以上の高齢者を対象に四回目のワクチン接種計画を始動した。台中市政府は六月二十二と二十三日に合計四十七カ所のワクチン接種会場を開設し、十万人余りが接種を完了した。
夏至が過ぎたばかりの六月二十二日の早朝、台中の気温は摂氏三十二〜三度に達していた。台湾中部地域の感染状況はピークから少し落ち着いて来てはいたが、各接種会場には以前よりも多くの人が押し寄せた。
「感染者数がこんなにも多いと、やはり追加の四回目接種をした方がいいと思います。それに商品券や簡易検査キットまでもらえますから」とある人が言った。今年初めの経験からすれば、毎回の接種率は三割未満だったが、この二日間の接種率は五割を超え、公的部門も予想外だったそうだ。
台中慈済病院の近くにある心田連絡所は、元々三、四百人しか収容能力がないが、潭子区の十の市町村から約二千人のお年寄りがやって来た。受付から接種、商品券と検査キットの受け取りなどの手順は速くすることもできず、民衆から不満が噴出した。そこでボランティアたちは、急いで彼らを日陰の涼しい場所に誘導し、お茶を勧めた。また正午を過ぎていて、人々がお腹を空かしているといけないので、直ぐ香ばしい麺線(ソーメンに似たもの)を炊いて、人々に提供した。
ボランティアたちはその後も猛暑の中でずっとお湯を沸かしたり、氷やお茶の補給、お茶の提供など、我を忘れるほど忙しく働いた。午後一時にワクチン接種が一段落した時にやっと腰を下ろして昼食をとることができた。あるボランティアは、腰が痛くてまっ直ぐに伸ばせず、両足はだるくてどうにもならない、と言った。
翌日は潭子区役所から応援に増員してくれた上に、ボランティアの人数も増えたので、椅子を多く並べ、会場を三区域に分けて接種を行った。看護師の李慧美(リー・フェイメイ)さんは五分間に一列というスピードで接種作業をこなしていたが、お年寄りに、注射したところをこすらないこと、水を多めに摂取すること、ここで十五分間座って様子を見てから離れてくださいと優しく説明していた。しかし、彼女自身は休むこともなく、水を飲む時間さえ惜しんでいた。このように誰もが文句を言うこともなく奉仕したため、十一時過ぎには千人以上の接種を終えた。人々はボランティアとスタッフの苦労に感謝した。
心田連絡所の慈済ボランティアは、医療スタッフをサポートして、名簿のチェックなどの事務作業を手伝って、一緒に接種任務を完了した。 (撮影・何佳玶)
協力して、変化球をしっかりキャッチする
その二日間は通常の出勤日だったが、家族のお年寄りのために仕事を休んで予防接種に同伴して来る人もいた。台中静思堂と民権連絡所、大里静思堂の三カ所は、初日の朝から長い列ができた。気温の上昇と共に、来場者も増えた。ボランティアはテントを張り増ししたり、日除け用の傘を用意してさしたりする他、大型扇風機や水冷式扇風機などを使って、暑さを凌ぐことができる物は殆ど全て使用した。自分たちが着ていた防護服の中はびしょ濡れの状態だったが、顧みることはなかった。
慈済ボランティアには、大規模イベントを行って来た経験がある。変化球への対応は手馴れたものである。例えば、民権連絡所の会場では初日、来場者はコンピューターによる受付で流れが悪くなっていた。区長との連絡窓口だったボランティアの陳彩招(チェン・ツァイヅァオ)さんは、区長と話し合った結果、人手を増やして、体の不自由な人のワクチン接種を優先させることにした。
翌日、増員されたボランティアと役所スタッフは、早く着いた人たちを案内して、体温測定と消毒の仕事をした。公的部門も四チームの受付人員を増員し、二本の移動経路を四本にすると共に、医師の数も増やすことで、人々が長く待たなくても良いようにした。
感染防止のために、台中静思堂では接種会場への出入りは入口と出口の二つに制限していた。しかし、ボランティアの黄元杰(ホワン・ユエンジイエ)さんは、炎天下で列に並んでゆっくりとしか進まない人々を見て、その苦労を思った。そこで、公的部門と相談し、一刻でも早く皆さんが会場に入れるよう、静思堂右側のドアをもう一つ開けることにした。また、簡易検査キットや商品券を受け取る経路を調節したところ、九時半頃になって、大勢の人の流れが滞るようなことはなくなった。
今回の試練を乗り越えた南屯区役所民政課長の杜秀貞(ドゥ・シュウツン)さんは、やっと一息ついて安心することができた。予防接種初日の朝七時半前に大勢の人が一気に詰めかけるのを見た時は、役所も医療スタッフもびっくりした。二日間に約四千人が予防接種したのは、前例のないことだった。
そして彼女は、次のように述べた。「慈済ボランティアの素早い対応に大変感謝しています。直ちに高齢者のために椅子を用意してくれ、彼らは汗だくになりながら、人々の不満を聞いたり、優しく寄り添って宥めたりしていました。今回の大変な作業に慈済ボランティアと協力できて、とても良かったと思います」。
(慈済月刊六六九期より)