「合心」パワー【鯤鯓リサイクルステーション】

台湾全土に7千カ所余りの慈済リサイクル拠点があり、それぞれが大家族のようである。ボランティアたちは心して資源回収を行い、互いに関心を寄せ合い、協力していた。さらに、リサイクルステーションを自分の家だと思って、日々の出来事を記録に残している。実際に訪れて写真を撮り、リサイクルステーションの皆の思い出を残すために「ファミリーアルバム」を制作した。

鯤鯓リサイクルステーションのボランティア集合写真

前列左から、蔡張真娥、李月里。後列左から、蔡玉梅、呉秋燕、曹陳愛貞。

台南市中心部から南西方向にある海辺に向かうと四鯤鯓(スークンシェン)という村に着く。鯤鯓リサイクルステーションは、その村の路地裏にある。そこには都会と違った風情があり、車による騒音は少ない代わりに、少し塩気を帯びた海からの風が吹いてくる。何より人情味のある純朴さは、訪れる人に忘れ難い印象を与える。

そこのボランティアは、人数は多くないが、皆暗黙の了解の下に、一種類の分別作業だけをするのではなく、空いているポジションを補い合い、ステーションの大なり小なりのあらゆる事を自発的に行い、しかもそれらを全く気に止めないのだ。当日、集合写真を撮った時、ステーション代表者である阿燕(呉秋燕 ウー・チウイエン)さんは、年配ボランティアたちに取り囲まれると、ふっと笑顔になったので、私も阿燕さんの喜びを感じ取ることができた。このリサイクルステーションは何もないところからスタートしたのだと、彼女は振り返った。最初は四本の柱と黒いネットの下で行われ、電気も水もなく、雨風が強い日はとても大変だったそうだ。その後二回ほど移転してから今の場所に落ち着いたのだという。

彼女は、ハードウェアにしろ、マンパワーにしろ、家族のようにボランティアたちが二十数年間、協力し合って投入してくれたことに感謝している。皆が団結して、この道のりを賑やかなものにしているのだ。

リサイクルステーションに足を踏み入れて顔を上げると、ボランティアたちが心して建てた切妻屋根が見え、前方に「卍」の文字があった。

物を大切にする心は皆同じ

同じスペースにはもう一人、回収された古新聞紙を整理するボランティアの曹陳愛貞(ツァオ・チェンアイジェン)さんがいて、その動きを、私は暫く側で観察していた。彼女が新聞紙を整理する時の眼差しと動作は格別に真剣で、乱雑に山積されてあった古新聞を一枚ずつ折り畳んで重ね、丁寧に揃えるのだ。最後は束の周りをチェックし、干豆腐のようにきれいに揃うまで両手で整えると、縄できつく縛った。これでその作業は一段落である。

廃棄された電線から銅線を取り出して回収し、再生に送る。整理された古新聞紙は、果物や花束などさまざまな物の包装に使われる。リサイクルボランティアが物を大切にする心は同じだから、皆時間を惜しみなく使い、廃棄された資源を再生させ、無用のものを役に立つものに変えている。そこに善「法」が発揮され、同時に大地を浄化しているのだ。

マイホームのような光景

当時の写真を見ると、まるでその現場に戻ったかのように、感動がはっきりと湧き上がってきた。あの朝、カメラを背負って、目の前の全てに対して邪魔してはいけないという思いで、ゆっくりと軽い足取りで、静かにペットボトル分別エリアに近付いたのを覚えている。ボランティアは皆、分別作業に専念し、お互いにしゃべることもなく、そこにあるのは真剣な動作とその姿だけで、周りに「静寂」な雰囲気を醸し出していた。外から木の上の鳥のさえずりが聴こえ、ペットボトルのぶつかり合う音が響きわたった。そこには人文を伴った自然の風景があり、隅々に陽が当たる物語があった。

ボランティアたちは周囲に気を配りながら説明した。「春になると、マダガスカル・アーモンドの木は萌葱色の葉をいっぱい付けます。十六、七年前に植えた小さな木が今や既に三、四メートルの高さまで成長しました。以前ここで分別作業をした時は傘を差しましたが、今は大木の日陰になっています。また、阿裕(アユー)さんがアルミ素材で作った日除けを提供してくれたので、今ではお年寄りたちも日焼けの心配がなくなりました」。思いがけず私の目に映ったのは、「我が家」のために心を一つにしたことで生まれた美しい光景だった。全てが賞賛に値して、とても感動した。

撮影当日、二人のシニアボランティアがそれぞれ辰年と寅年だと知って、「道理でチームワークが完璧なわけだ」 と二人は思わず笑った。

ガラス瓶分別エリアのボランティアたち、左から:蔡張真娥、李月里

切っても切れない絆

二〇二二年の春に何度目かの訪問をした時、ステーション代表の阿燕さんから突然、「このリサイクルステーションの特色は何だと思いますか」と聞かれた。考えていた私の返事を待たず、彼女は「『合心』(心を一つにする)ですよ」と言った。思った通り、この「草の根」菩薩たちは、證厳法師の弟子たちに対する期待である「合心」という理念をしっかりと受け継ぎ、志のある人たちが寄り合って、環境のために尽力しているのである。

ここでは、阿燕さんが時折、自分の得意な煮込み干豆腐とスライスした果物やスナックなどを差し入れして、ボランティアたちに体力補給をしてもらっている。年配ボランティアは毎日、少しでも余分に尽力するために、早朝から夕方まで作業を行い、昼の弁当も持参している。また、皆で血圧の測定を忘れないようにとお互いに声をかけ合っては健康を気遣っている。

中でも一番羨ましいのは、十数人の男性ボランティアが毎日、リサイクル専用車で回収資源を運び、午前三時過ぎに来て、正午や夜間まで作業をしてくれることだ。休日でも責任を持ってやってくれるのだそうだ。自分の仕事や家業があるのに、時間を裂いて積極的に奉仕しているのである。「彼らのことを誇りに思っています」。阿燕さんは、彼らのボランティア精神にとても感謝している。

鯤鯓リサイクルステーションを取材していて、ボランティアたちの間に切っても切れない絆を感じ取ることができた。また、そこには「合心」パワーの証であり、家族としか言いようのない場所だからこそ得られる、幸せと温かさがあった。

鯤鯓リサイクルステーションでのボランティア集合写真

前列の女性、左から: 薛月珠、曹陳愛貞、阿美(仮名)
後列の男性、左から: 葉揚名、羅朝榮、蔡金木

(慈済月刊六七一期より)

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