地面が痛まないようにそっと歩こう

編集者の言葉

四月三日に台湾東部の花蓮県沖で発生した強い地震は、地震に慣れている花蓮の人々を恐怖に陥れ、今も苦しめている。当日、静思精舎に到着したネパールの慈済ボランティア一行は、それでも日程を変えず、直ぐ花蓮ボランティアと一緒に災害支援活動に投入した。ボランティアのユニシュさんは、二〇一五年のネパール地震の後、慈済人が遠くカトマンズまで出向いて支援した諸々のことを思い出した。

「あの地震で、私は家も何もかも無くしました。慈済人が福慧ベッドと毛布を持って来てくれたので、床で寝なくて済みました。被災後四、五年間、一家皆、福慧ベッドで寝ていました。そして九年が経った今も、そのベッドは家にあります。地域の人にとってそのベッドは記憶として留まっています。それは、私たちの最も困難な時に、慈済の援助を受けた記念の品なのです」。

福慧ベッドは片手で持ち上げることができるが、彼の心の中ではずっしりとした存在である。人生で最も困難な時に温めてくれたものだからだ。ユニシュさんは目を潤ませた。それは今回花蓮で恩返しできたことをとても幸せだと思ったからだ。

ネパールボランティアに付き添って台湾に来たマレーシアの慈惟(ツーウェイ)さんによれば、余震が続く中でも逃げ出そうとは思わなかった。心霊の故郷で一緒に天地が揺れ動く経験をし、大地の響きを聴いたことで、「歩く時はそっと、地面が痛まないように」という法師のお言葉を思い出した。一歩一歩傷ついたこの世を労るように慎重に足を運ぶのだ。

この二年間、マレーシアとシンガポールの慈済ボランティアは「仏陀の故郷への恩返し」プロジェクトで先行している。ネパールのルンビニとインドのブッダガヤに交替で長期滞在して、苦難の人々を救済すると同時に、善行して福を作るよう導いている。現地に大乗菩薩法を根付かせ、仏陀の理想を実現するのが目標である。

仏陀は当時の古代インドで衆生に説法をしていた。しかし、「衆生の平等」という生命観を持った仏教思想を説いても、十二、十三世紀にはその土地から消失した。インドのカースト制度は、古代バラモン教のヴェーダ思想に基づくものだが、この制度が早い時期に、インドの憲法の父であり、インド佛教復興者でもあるアンベードカル博士によって廃棄が起草されたが、世襲されるカーストの観念は、未だに現地の人々の日常生活に深く根付いている。

「慈済」月刊誌のチームは、取材でインドに滞在していた一カ月間、伝統的な風土と人情を理解すると共に、今まさに起きている変化も目の当たりにした。シンガポールとマレーシアのボランティアは、仏法の理や慈善活動、人文的な情を取り入れ、身分の差によって区別することなく接することで、少しずつ村民に影響を与えている。少なくとも現地ボランティアは、人と人の交流において、カースト制度に左右されないよう取り計っている。衆生への慈悲こそが、今期号で伝えたい二つの重要な報道の主旨である。

(慈済月刊六九〇期より)

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