陶器の洗面台では体重を支えられないため、修繕ボランティアはその周りに、W字型の手すりを取り付けて高齢者がしっかりと掴むことができるようにした。(撮影・蕭耀華)
一人暮らし高齢者、老老世帯、障がい者に安全な居住空間を提供するためには、地域ケア拠点を開設して高齢者の社会参加を促し、認知症や機能の衰えを遅らせることや、さらに、エコ福祉用具プラットフォームを立ち上げ、介護資源を提供するなどの方法がある。
これらは全て、慈済が高齢化社会に対応して取り組んでいる重要な施策である。
高齢者の安全な住まいへの改善プロジェクト
一人暮らし高齢者、老老世帯、障がい者及び恵まれない家庭のための安全な住まいへの改善。
改善の焦点:安全手すりの設置、バリアフリースロープの設置、床に滑り止め措置、和式トイレから洋式トイレへの改築、照明の改善。
2024年は、台湾全土で改善が必要な世帯が4,646戸報告され、ボランティアは4,578戸を調査し、4,088戸を改善した。
人口の高齢化は、台湾だけのことでなく、世界的な趨勢である。超高齢社会においては、如何に地域ケアを推進していけばよいだろうか?
高齢者の体が健康であれば、家族の負担は少なくなるが、万一転倒して寝たきりになれば、家族全体の心配事になる。證厳法師は、台湾の社会問題と高齢者問題に関心を寄せているので、慈済は二〇一二年から高齢者の住まいの安全性改善に取り組んできた。一人暮らしの高齢者や老老世帯及び障がい者に対して、安全な住まいを提供しているのだ。二〇一四年になると地域ケア拠点を開設し、高齢者の社会参加を促して認知症や機能の衰えを遅らせるプロジェクトを始めた。二〇一七年には、一歩踏み込んで、エコ福祉用具プラットフォームを立ち上げ、福祉用具を必要とする家庭に提供している。これらは高齢化社会に応じた重要な施策である。
政府の「介護2・0計画」の中で、高齢者と障がい者助成項目に、室内バリアフリー空間への改善は入っているが、申請や審査の手続きを待てない人や、一人暮らしなので申請方法が分からない人も多い。そこで、慈済は二〇一二年に花蓮県秀林郷と新城郷の高齢者住宅の安全性向上で改善作業を始めた。私たちは秀林郷にある九つの村を全部回り、次に万栄郷、卓渓郷の村の全域でそれを実行した。
安全な住まいへの改善の焦点は、安全手すりの取り付け、滑り止め措置、バリアフリースロープの設置、洋式トイレへの改造で、この四つが基本である。村長と町内会長に住居の安全の重要性を説明し、認識を得た後、彼らの手を借りて宣伝、調査、登録をしてもらい、村全体の改善工事を実行に移した。
花蓮で一定期間推進した後、二〇一六年に他の県や市にも拡大し、二〇二〇年には「安美プロジェクト」として、台湾全域で進める施策の一つになった。「安」とは、すべての慈済のケアと救済の対象者が安全に暮らせるようにすることであり、「美」は、「善美を尽くした社会」から取った。慈済は多くのコミュニティ型慈善プロジェクトを推進しているが、その焦点は「隣人同士の助け合い」であり、「仁のある場所に住むことが良い」のである。
安全な住まいへの改善だけでなく、適切な福祉用具も障がい者と高齢者の生活の質を向上させる。例えば、長期間寝たきりの人は、往々にして排尿が不完全で、尿路感染症に罹りやすい。もし角度調整機能付きの電動ベッドで起き上がることができれば、排尿がスムーズになり、健康にも良い影響をもたらす。
エコ福祉用具プラットフォームは、二〇一七年に花蓮から始まった。しかし、それ以前から台北市と新北市では、すでに多くの慈済ボランティアが、回収した福祉用具を修理し、必要とする人々に提供していた。その後、東部、北部に広がり、中南部もその後を追い、今では台湾の全ての県と市で提供できるようになっている。
多くの県と市の福祉用具資源センターでは、賃貸または無償で中古のものを貸し出すサービスはあるが、地元に戸籍がある住民だけが申請でき、県や市を跨いで貸し出すことはできない。慈済エコ福祉用具プラットフォームの最大の特徴は、県や市をまたぎ、さらには海を越えてサービスを提供できることである。
例えば、台湾北部にやって来た南部高雄の若者が、故郷の高齢者が車椅子を必要としていることを知った時、慈済エコ福祉用具プラットフォームのHPの申請ボックスにチェックを入れ、連絡先の住所と電話番号を入力するだけで済むのだ。情報システムから高雄の福祉用具チームに連絡が届くと、在庫から車椅子一台が調達されて、ボランティアが申請者の指定住所に届けるのである。離島の澎湖や金門の人もサービスを利用できる。
高齢者にとって安全な住まいへの改善、地域ケア拠点、エコ福祉用具プラットフォームの他、慈済の愛あふれるお弁当の配達や近隣の高齢者同士が交流する計画、集会所でのAED(自動体外式除細動器)設置、防災士の配備などがある。全体的な寄り添いプログラムに一つ一つ丁寧に取り組み、高齢者の生活環境や移動の面で、より安全になるようにと願っている。高齢者の転倒予防こそが、老後の生活が豊かにするのだ。
(慈済月刊七〇三期より)
たった1本の手すりを付けることで、住まいの安全性が改善される。隣近所への思いやりが社会参加を促し、エコ福祉用具が直ちにニーズを満たしてくれる。慈済は多様な施策で高齢者を大切にしている。(撮影・蕭智嘉)


