新芽奨学金は九千の家庭に希望をもたらした

二〇二四年も台湾全土で三十一回の慈済新芽奨学金の授与式が行われ、約九千人の学生が奨学金を受け取った。彼らは困難な境遇にあっても勉学に励み、自分の将来に向かって約束した。

師姑(スーグー)こんにちは。慈済がこの三年間、私の家族を支援して下さったことにとても感謝しています。父が病気になってから亡くなるまで、慈済はずっと私たちのことを気にかけてくださったので、私たちは温かさを感じました。私はもっと勉強して、物分かりの良い子になって、亡くなった父が天国で安心し、母に心配をかけないようにします」。これは当時、小学生だったイーちゃんが、慈済新芽奨学金の申請書に書いた言葉である。

「去年九月に三年生になりました。毎日、母が勤めを終えた後もアルバイトをして私の学費を作り、物を買ったり、食べさせたりしてくれています。体調が悪い時でも休まない姿を見ると、心が痛みます。だから私は勉強に励み、新芽奨学金を貰うことで、母の苦労を少しでも和らげたいのです。ボランティアの皆さんには大変感謝しています」。これは去年、新芽奨学金の「学習部門賞」を貰った、イーちゃんが申請書に書いた内容である。

イーちゃんの父は、二〇二〇年九月に中風を患い、家計が困難に陥った。その時から慈済は支援を始め、ボランティアたちは、床ずれを緩和するために、介護ベッドを提供した。しかし、翌年の正月に亡くなり、残されたイーちゃんと母親は二人きりになった。優しいイーちゃんは、いつも母親を笑わせ、優秀な学校の成績で母親を安心させた。そして、新芽奨学金を受賞した。

去年の三十一回の新芽奨学金授与式は、十月十九日から十一月十日まで、台湾全土の慈済会所で順次行われ、約九千人の学生が受賞した。半年余り前という早い時期から、各地区の慈済ボランティアは、資格のある子供を励まして、優秀な成績や各種特技の賞状に対する準備をするよう、オンラインで奨学金を申請してもらった。そして、慈済基金会のソーシャルワーカーと各地区のボランティアによる合同審査を経て、合格した学生に受賞の通知を届けた。ボランティアも受賞した学生の学校に招待状を送り、校長先生や先生たちに式典に出席してもらい、子供たちに祝福と励ましの言葉を贈り、式典に花を添えてほしいとお願いした。

苗栗県南庄郷蓬莱小学校の林恩恵(リン・オンフエイ)校長は、学生七人を引率して、新芽奨学金を受け取った。「この奨学金は、単に学業をサポートするだけでなく、大きな励ましです」。林校長は、「蓬莱小学校はへき地にありますが、長年にわたって寄り添ってくれている慈済ボランティアに大変感謝しています。また奨学金を受賞した生徒には期待しており、新芽から苗木に成長し、更に大樹に成って、将来は後輩という多くの苗木を育てる存在になってほしいと思います」と述べた。

嘉義県政府の李美華(リー・メイフヮ)教育処長も、慈済が公的補助では補えない部分をカバーし、子供たちにより多くのサポートとリソースを与えてくれていることに感謝の気持ちを表した。

子供たちの成長を見て

新北市三重区の小学校五年生のヅーちゃんは、四年続けて学習部門賞を受賞した。二〇二〇年に学校から関心を寄せて欲しいとの連絡が入った時のことを、慈済ボランティアの孫美琴(スン・メイチン)さんが回顧した。「祖母と孫の二人は、バス・トイレもない一部屋のアパートに住み、勉強も宿題も寝起きもその一坪余りの部屋でしていました。生活を学校や善意の人による義援金と祖母の年金に頼っている姿を見て、私は心苦しく思いました」。

ヅーちゃんは両親が離婚したため、七十六歳の祖母に育てられていた。コロナ禍の期間、在宅授業になったが、パソコンがないので、祖母の携帯で授業を受けていた。孫さんはそれを知って、直ちに基金会にノートパソコンを申請した。祖母は在宅での授業の様子を思い出し、「孫は授業が始まる前からパソコンの前で正座して待っていました。自律のある良い子です」と言った。

二〇二三年の夏、ボランティアの薛淑蓉(シエ・スゥーロン)さんは、祖母が「孫は夜中に汗だくで寝返りばかり打って、眠れない様子でした……」と言うのを耳にした。三十七、八度という酷暑の中、ヅーちゃんは祖母と一緒に一台のシングルベッドに寝ており、室内には扇風機しかなく、エアコンはなかった。

ボランティアチームが相談した結果、ヅーちゃんの成長に伴い、別の借家を探す必要があるという結論に至った。その後、訪問ケア幹事の張玉環(ヅァン・ユーフヮン)さんの支持の下、長期補助することになり、広めの家に引っ越した。また、家主がダブルベット、机、エアコン等を提供してくれたので、ヅーちゃんはベッドで腹ばいになって宿題を書く必要がなくなった。

ヅーちゃんはどの科目でも優秀な成績を収めたが、英語だけはやや劣っていた。そこで、外国企業の管理職である薛さんが、英語の発音記号や発音を教えることを買って出たことで、少しずつ困難を克服することができ、英語の成績は目に見えて進歩した。祖母は、長年にわたる慈済ボランティアの寄り添いと実質的な援助で、彼女の重荷が軽くなったことに感謝した。

私はあなたを誇りに思う

大学二年生の怡恩(イーオン)さんは、唯一のベッドを母と弟に譲って床に寝ている。勉強好きな彼女は学習部門賞を受賞したが、かつては母に負担をかけないように、参考書を買いたいと思っても、口にしなかった。今年は受賞した奨学金で本を買って、看護師の資格を得ようと思った。

また、三年連続で奨を獲得した羅(ロー)君は、自分と小学三年生の妹を育ててくれた母に感謝し、いつも進んで家事を手伝い、成績のことで心配をかけないようにするばかりか、妹の勉強も見てあげている。母親は、この奨学金を十一月の卒業旅行と娘のデイケアクラスの費用に当てたいと言った。

ボランティアは、長期にわたって新芽奨学生に寄り添い、逆境の中にあっても強く成長している様子を見て、「誇りに思っているよ」と言わずにはおれない気持ちになる。彼らの努力は、自分たちの未来への約束であるだけでなく、社会に対する、心温まるお返しでもあるのだ。

(慈済月刊六九七期より)

慈済新芽奨学金のプロフィール
慈済新芽奨学金のプロフィール
  • 対象:慈済が長期ケアしている世帯の学齢期子女。小学生・中学生・高校生・大学生・専門学校生を含む。

  • 目的:困難な環境の中で、向上心を持って努力し、善の心で強く学習に取り組む子どもたちを表彰するもの。

  • 賞の種類:学習部門賞・進歩賞・孝行賞・特殊表現賞及び皆勤賞。

  • 授与までの流れ:毎年夏休み中から提出された申請書を審査した後、授与式典を開催する。

  • 歴史:2007年から2023年末まで、台湾全土で賞を受け取った人数は延べ10万人以上。

  • 授与金額:2007年から2023年末まで支給された奨学金の総額は日本円で約23億円余り。
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