夏休みや冬休みに海外旅行へ行くのは、今の子どもたちにとって珍しいことではありませんが、家庭の事情によって旅行に行けない子どももいます。新学期が始まった後、子ども同士が比較したり、旅行に行けなかった子が気落ちしたりするのをどう防げばよいのでしょうか?
答:新学期が始まって一週間後、瑩(イン)ちゃん(仮名)は放課後、落ち込んだ様子で担任の先生のところへやってきました。クラスの多くの同級生が海外のお菓子を持ってきて皆に分けたり、旅行の話を話し合っていたりしても、彼女は横で聞いているだけで、会話に加わることができなかった、と言いました。彼女の落ち込んだ様子を見て、先生は瑩ちゃんの肩を抱きながら、いくつかの実話や、休暇を充実させる良い方法を教えてあげました。
或る先輩によると、両親はブルーカラーで、海外旅行に行く余裕がなかったそうです。しかし、その先輩は一生懸命勉強してT大学に合格し、大学の奨学金をもらって、半年間の海外交換留学に応募しました。そして休暇のたびに、近隣の観光地へ列車で出かけ、数日間旅行を楽しんでいたそうです。この半年間は、これまで叶えられなかった「海外へ行く夢」を実現し、忘れられない思い出ができたと言っていました。
「今は様々な事情で海外へ行けないかもしれないけど、それは将来も行けないという意味ではないよ。自分の力で行ける日が来れば、喜びはきっともっと大きくなると思う」と先生は心を込めて瑩ちゃんに言いました。
台湾の自然と人情に恋し
台湾には、美しい山や海など、忘れられない風景がたくさんあります。
「私はいろんな国を訪れましたが、台湾の人情味と美しい風景、おいしい食べ物ほど人を惹きつける場所は他にありません」と、或るおばあさんが言っていました。
先生が、授業中に台湾各地の特色ある観光地の映像を見せて、生徒たちに行ってみたい場所を選ばせ、交通手段、ルート、宿泊場所などを自分で調べて計画させるのも一つの方法です。そして旅行後に感想文を書かせ、学期が始まったら、発表の場を設けたらいいでしょう。きっと良い影響が広がり、生徒たちは自分の住む土地について深く知るようになり、台湾に対する愛着も深まることでしょう。
このような創意工夫にあふれた授業を通じて、生徒たちの学習意欲を引き出すことができれば、それぞれの冬休み・夏休みがより有意義なものになるはずです。
子どもの心に無限の世界を育む
冬休みや夏休みが近づくと、確かに多くの家庭では海外旅行を計画します。しかし、共働きのために長期間の旅行が難しかったり、一家全員の旅費を負担できなかったりする家庭もあります。ここで保護者の皆さんに言いたいのは、「周りがそうだから」と、無理して旅行をする必要はないということです。一旦「みんなと同じように」となると、どうしても比較したり、見栄を張ったりする心理が生まれてしまいます。
或る親子教育の専門家で双子の母親は、次のように述べたことがあります。「何事もできる範囲内で精一杯やればいいのです。実は、子どもは親が海外に連れて行ってくれるかどうかよりも、心から愛情と時間を使って一緒に過ごしてくれることを望んでいるのです。意味のない旅行に参加させるよりも、日常生活を通じて観察力や考える力を育む方が、ずっと価値があります。感受性を持った子どもは、どんなに平凡な草木でも美しいと感じ、一杯のご飯にもありがたみを感じるのです。これこそが、旅の本当の意義だと思います」。
先生は、冬休みや夏休み前に、子どもと一緒に数日の地元旅行の計画を立てることを、保護者に勧めてもいいでしょう。心を込めて子どもと一緒に、台湾の自然を満喫することで、きっと家族全員が充実を感じ、意義のある休暇になるはずです。
「心の中に無数の世界を持っている子どもこそ、遠くへ旅立つ力を持っています」と或る教育者が言いました。教師と保護者が子どもに与えることができる最も素晴らしい贈り物は、生命の素晴らしさと情熱を心から感じてもらうことです。周囲に流されず、自分の世界を豊かに広げることです。これこそ、親と教師と子供の三者が共に目指す目標にしていいのではないでしょうか。
(慈済月刊七〇三期より)


